婆ちゃんがちょっと怖い
妙な白い女の子に絡まれた。
そうレイン婆ちゃんに相談した結果、なんか盛大に眉をしかめられた上にしばらく無言が続き「あれ? もしかして予想以上にやばかった?」と冷や汗を流すことに。
何だこの反応。
まさか心当たりあるのかレイン婆ちゃん。
というか本当に神父様の姉の魔女だったりしないだろうな。
見た目が少女だったのは幻術の類とかで。
「あの人は人間嫌いだから違うと思うわよ」
「え? 神父様の姉なのに?」
「クロエもあれで人間嫌いな所はあるわよ。特にお馬鹿で想像力がないくせに、自分に都合のいい妄想だけは得意な連中はね」
「……それ俺では?」
「あら。そんな心配ができてるうちは大丈夫よ。まあもう少し勉強は頑張った方がいいと思うけれど」
そう言って笑うレイン婆ちゃんはいつもの婆ちゃんに戻っていた。
結局なんだったんださっきの反応は。
「心当たりはあるのよ。でも『ありえない』はずなの」
「ありえない?」
どういうこっちゃ。
あの女の子の正体に心当たりはあるけど、正体を考えたらここにいるのはありえない的なことか。
また実はどっかのお偉いさんの子供ですとかじゃないだろうな。
「そうね。私たちが揃いも揃ってうっかりしていた可能性もなくはないけれど、万が一があるから明日は私と図書館でお勉強しましょうか」
「うわあ。さも必要なことだと言わんばかりの流れで勉強させられるのが決定した」
「アッハッハ。勉強は冗談よ。それにヴィオラたちに色々言われているみたいだけど、あの子はあの子で自分が世間一般より物知りだということを分かってないみたいね。そういう意味ではヴィオラも世間知らずよ。カムナという子は貴方の知識がアンバランスで計りかねているというところかしら」
「あー」
そういえばカムナたまに「一般人なら知らなくても仕方ない」的なフォローいれてきてたなあ。
その代わりにというか俺の立場なら分かってるべきことが分かってない時はめっちゃいじってくるが。
「でもそれ結局神父様のせいでは?」
「それはそうね。あいつも子供の頃から知識は多いのに常識はズレてたから」
「子供の頃からだったのかよ」
神父様の常識がズレてるのって不老不死なせいかと思ったら、元からかよ。
むしろどんな子供だったんだよ神父様。
「年下のくせに慇懃無礼で生意気なガキだったわね」
「レイン婆ちゃんの方が年上なの!?」
「あら言ってなかったかしら?」
神父様が生意気だったというのよりそっちに驚いたわ。
え? じゃあ姉さん女房?
いや結婚はしてないらしいけれども。
「あらあら。それなら明日はクロエの子供の頃の話でもしてあげようかしら。後であいつに話した時の反応が面白そうだし」
「それ俺の身は安全なやつですか?」
大丈夫? 後で神父様に「知ってしまいましたかレオン」と笑顔のまま処されたりしない?
「本当にヤバいことは言わないから大丈夫よ」
「マジでヤバいこと知ってるんだ……」
まあ子供の頃からの付き合いなら弱みの一つや二つ知っててもおかしくないのか?
というか神父様とレイン婆ちゃんが普段どんな会話してんのかあんまり想像できないなあ。
ともあれ明日はレイン婆ちゃんによる昔話が決定した。
これカムナも呼んだら喜びそうだな。
そんな呑気なことを考えていた俺は、このときレイン婆ちゃんがどれだけ覚悟を決めていたのかなんて知らなかった。
そう。俺は知らない事ばかりだったんだ。




