物凄く遠回りした感
「ハッハァッ!? 誰かと思えばクラウディア様ではありませんか!」
「ええ……」
こんなところに何でクラウディアさんが居るのかは分からないが、そのクラウディアさんにフッ飛ばされたおっさんがばねでも仕込んでるみたいな勢いで起き上がり、変なテンションで話し始めたので普通にひいた。
それどういう感情だよ。
なんかこのおっさん何考えてるかとか以前に、人間として真っ当な感情あるのかすら分かんなくて恐いよ。
「そういう貴方はゴッタ殿ではありませんか。何やら街中で人さらいがと聞き駆け付けたのですが、まさかさらわれたのが『私の身内』で、よりによってさらったのが融和派の中でも急先鋒とされる貴方だとは」
「え?」
なんか突然身内扱いされて驚いたが、顔だけ半分振り向いたクラウディアさんがにこりと微笑んだので黙っておくことにした。
というか今の笑顔「しばらく黙ってろ」ってことですよね。
あのおっさん――ゴッタとやらと知り合いみたいだし、何か駆け引きでも始まってんだろう。多分。
「ほっほう!? そちらの少年はアルムスター家ゆかりの者だと思っていましたが?」
「既に本家との縁は切れていますよ。神父様に頼まれて、私の従騎士を務めてもらっています」
わあ。クラウディアさんってそんなさらりと嘘つける人なんだ。
もっとこう腹芸なんてできない実直過ぎる人なのかと。
というか従騎士って何!? 何かこれほっといたらヤバい既成事実できあがっていってない!?
「なんとなんと!? あのカール殿の末裔が白騎士の末裔の従騎士となるとは! これもまた運命……ですかな?」
「さて。神父様が何を考えているか私などには到底理解はできませんが。それよりもさらったことは否定しないのですか?」
「もちろん! さらったなどというのは誤解ですとも! ちょっとお話がしたかっただけです!」
「えー」
無理があるだろその言い訳は。
いや確かに話がしたかったのは本当だろうけど、その後どっかに拉致するつもりだっただろ。
「なるほど。つまり今回のコレは不幸な誤解……ということですね?」
「そうですそうですとも! 私がピザン王国に弓引くような真似をするわけがないではありませんか!」
おおっと、これは何か俺がさらわれそうになったのは無かったことになりそうな展開だぞ。
でもここで口を挟んだらもっと厄介なことになりそうなので何も言えない。
「では……」
「え?」
話しはついたとばかりにクラウディアさんが地面に剣を突き立てた瞬間、世界が壊れたみたいにひび割れて、でもそれは一瞬の幻だったみたいに辺りは普通の景色に戻っていた。
「少年!? 無事だったか!?」
いや、なんか突然カムナが現れたし、なんなら通行人たちも居てこちらを何事かと足を止めて見てきている。
え? 今の剣突き立てる動作だけで結界的なもの消したの?
やはりクラウディアさんも神父様の同類では?
「オノレ魔術も使えぬ半端者が私の結界を片手間に」
「地が出ていますよゴッタ殿」
「おおっと失礼! では『今回は』これにて。またお会いしましょうぞ!」
「嫌です」
何か再会の約束をして去っていくおっさんだが、普通に嫌だったので思わず拒否の言葉が出た。
笑顔で去っていくおっさんは全く気にした様子がないが。
「ええっと。ありがとうございますクラウディアさん。…でも何でここに?」
「カンタバイレ王国への旅路の最中といったところでしょうか。何でも白騎士所縁の少年が現れ、魔物に占拠された街を解放したなどという噂が流れていたので」
うん。それ俺だな!
いや何で噂になってんだよ。
俺を白騎士の縁者と誤解してたのアルフ爺さんの副官だったらしいおっさんだけど、そんな噂流して何がしたかったんだよ。
「しかしまさか貴方と会うとは。村の皆が心配していましたよ。ヴィオラ様も自分のせいだとひどく落ち込んでいて、見つけたら殴るとおっしゃっていました」
「何で!?」
それ本当に落ち込んでんのか元気じゃねえか。
しかも自分のせいだと思ってんのに何で俺を殴るの。
「まあカラ元気の冗談のようでしたが。しかしこの街に居るはずですので、何故連絡しなかったのかと本当に殴られるのでは?」
「え?」
何でこの街にヴィオラが。
いやそれっぽい情報カムナから聞いてたわ。
じゃあもしかしなくてもマジで。
「あのー。俺神父様に言われて魔法ギルドの党首に会いに来たんですけどもしかして……」
「ヴィオラ様のお母上ですね」
もしかして知らなかったのかと首を傾げるクラウディアさん。
そっかーマジかー。
高嶺の花だと思っていた娘っ子が思っていた以上に高嶺に居ることが確定した。




