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火攻め再び

 さて。

 どうにかしてスケルトンを倒せという課題をもらったわけだが、今の俺ではスライム相手の時と同じでまったく有効なダメージを与えられる気がしない。


 だが少し考えて気付く。

 スライムへの火攻めは予想外に燃え盛ったから中断したけれど有効ではあったのだと!(多分)


「というわけでロイスさんからまた火酒貰って来た」

「アンタは懲りるということを知らないの?」


 高々と酒瓶を掲げる俺に胡乱な目を向けてくるヴィオラ。

 だが待ってほしい。俺だって何も考えずに再び火攻めをしようなんて思ってない。

 神父様によく考えろと言われたばっかりだし。


 スライムの時の問題点は森の中という今思えば狂気としか思えない場所で火攻めを行ったことだ。

 しかし今回は平野。しかも相手は生きてる人間を見れば向かってくるという行動予測もしやすい相手。


 なら掘るしかない。

 落とし穴を!


 幸い神父様パンチをくらったスケルトンはしばらく動かないらしいし時間的余裕はそれなりにある。


 落とし穴を作る

 酒を注ぐ。

 スケルトン落とす。

 着火。


 よし。

 我ながら完璧な作戦だ。

 落とし穴を掘るついでに周りから燃えそうなものを撤去しておけば延焼も防げて、燃やし終わった後はスケルトンごと埋めてとアフターケアも万全だ。


「アンタが自信満々だと嫌な予感しかしないのよね」

「失敬な」


 穴を掘る俺を座って眺めながら言うヴィオラに文句を返しておく。

 結構掘りやすいな。簡単に出られないよう深めにほっておくか。


「それにアンデッドと言ったら火に弱いもんだろ?」

「ああ。それ正にイメージが先行して一般人に広まってる誤解よ」

「はい?」


 人がもう予定の半分ほど穴を掘り終わっているというのに作戦の根幹を覆す情報を出すヴィオラ。

 おまえ何で先にそれを言わなかった(二回目)。


「別にまったく効果ないってわけじゃないもの。ただ火には浄化のイメージがあるからアンデッドによく効くと思われがちだし、凪の時代に書かれた本は実際に検証しようがないからそう断言されちゃってるのもあるのよね」

「え? じゃあ魔法使いがどっかんと火の魔法でアンデッド駆逐するのもイメージだけ?」

「それは半分本当。アンデッドは霊的な力で動いているから同じく霊的な干渉が可能な魔術で攻撃すればその根源を断ち切れるのよ。だから別に火じゃなくて風やら水でも魔術ならアンデッドには効くわよ」

「マジかよ」


 それで神父様殴る時に魔力込めたとか言ってたのか。

 というか魔法というだけで問答無用でアンデッド倒せるって何なの。

 やっぱり魔法使いってズルい。


「まあ別に普通の火でも物理的なダメージはあるでしょ。灰になるまでは無理でも少しは骨がもろくなって戦いやすくなるんじゃない?」

「んな投げやりな」

「大体魔術抜きでアンデッド倒そうって言うのが無茶なのよ。銀製の武器でもあれば破邪の効果があるから普通の武器よりは効くと思うけど」

「おまえこんな田舎に銀製の武器とかあるわけないだろ」


 そう言った俺だが、実は騎士だった曾爺さんが残した武器の中に銀製の短剣があることを知ったのはしばらく後の話。

 がっでむ。



 ともあれ落とし穴も掘り終わり、スケルトンがやってくるのを待ち受ける。

 スケルトンに穴を避けるほどの知能が残っているのかどうかは分からないが、一応穴は枝などを使って偽装してある。


 まあ最悪気付かれても蹴り落とせばいいし。

 スライムの時もそうだったけど、相手の攻撃は楽に避けられるのに俺の方にも決定打になる攻撃がないのが問題なんだよなあ。


「お、キタキタ」


 神父様の魔力パンチから立ち直ったらしいスケルトンがのそのそと森の方からやってくる。

 というか何故か斬り飛ばしたはずの腕が生えている。

 やはりトカゲのしっぽだった……?


「よーし。こいこい」


 考えても仕方ないのでスケルトンを穴へと誘導する。

 やはり大した知能は残っていないらしくスケルトンはあっさりと穴へと落下していき――。


「よっしゃくらえやあ!」


 穴の中へと即座に火種を投げ入れる。

 大雑把にもほどがあるが蓋に使っていた枝にも火酒を染み込ませているからすぐに燃えるはずだ。

 実際穴の中から火の手があがり、俺は作戦の成功を確信したのだが……。


※豆知識

 焚火の際に穴を掘ることはありますが、あくまで焚火の下に掘るものであり穴の底で焚火をすることはあまりありません。

 穴の中というのは空気が循環し辛く火が燃えるための酸素が入ってき辛い上に、二酸化炭素や一酸化炭素は酸素より重く穴の底にたまりやすいためです。

 要するに深い穴の中で火を燃やしても割とすぐ消えます。


「アンタ神様に嫌われるようなことでもしたの?」

「毎日教会のお掃除頑張ってます」


 あっという間に火が消えてスケルトンが這い上がってきたので結界の中に撤退。

 どうやら大したダメージはなかったらしく、スケルトンはまたしても結界にはりつきゴンゴン殴り続けている。


「だあ! もうどうしろってんだ!?」

「アンタちょっと勘違いしてるみたいだから助言いる?」


 またしても不発に終わった火攻めに苛立ち俺が頭をかきむしっていると、何やら呆れた様子のヴィオラがそんなことを言って来る。

 勘違いって何ですか。

 というかその勘違いとやらを正さずに今まで放置してたのかよ。


「嫌なら別にいいけど」

「教えてくださいお願いします」


 そんな不満を漏らしたらプイっとそっぽを向かれたので慌てて土下座する。

 年下の女の子に土下座する今の俺は間違いなくカッコ悪いが、スケルトンを倒すためには手段を選んではいられない。


「はあ。その倒すっていうのが勘違いなのよ。神父様は『効率よく戦闘力を奪え』って言ったの」

「効率よく戦闘力を奪う?」


 なんのこっちゃ。

 まさか破壊するのではなく人間相手みたいに拘束でもしろと?


「それもありだと思うわよ。というかアンタ時間はかかったけど腕一本は斬り落とせたんだから、時間かければ剣だけでも関節全部分解して無力化は可能なのよ」

「何その根気のいる作業」


 戦闘力を奪うということは、腕も斬り飛ばすだけじゃなく何かを握ったりできないように指まで斬り落とす必要があるだろう。

 どんだけ時間がかかるんだ。


「だから『効率よく』なんでしょう。つまり短時間でスケルトン分解しなさいって言われてるのよ」

「さっきから分解て」


 この娘っ子死体相手だというのに躊躇いとか気遣いというものがまったく無ぇ。

 これだから学者肌な魔法使いは。

 しかし方向性は分かった。


「よし。ちょっと準備してくる」

「大丈夫でしょうね」


 上手くいくかは分からないが、一つ方法は思いついたので装備の調達へと走る。

 待ってろよスケルトン!

 今度こそ無力化してやるからな!

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