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ランライミア

 ジレントの首都までの旅は順調に進んだ。

 というか、順調すぎてまったくわくわく感がない。

 魔物に襲われるようなアクシデントがないのはいいことなんだろうが、移動中は馬車についてる小さな窓に切り取られた限られた景色しか見えないときた。


 ひまつぶしにカムナに話をねだろうにも、向こうの気が乗らないとすげなく断られて終わりだ。

 おまえそれでも吟遊詩人かと言いたいが、それ言ったら間違いなく「なら金を払いな」と返されるに違いない。

 そして俺に無駄に払える金なんぞない。

 やはり世の中は金なのか。


「そんなに暇なら窓の外でも見てなよ。そろそろ首都が見えてくるよ」

「そう言われてもなあ」


 窓は座席の後ろについている。要するに見てたら首が痛い。

 体ごと窓の方に向けばいいのだろうが、それだと子供みたいじゃないか。

 だから長時間見る気はなかったのだが。


「……なんだアレ」


 窓から見えたその風景に目を奪われた。

 日が高い山の向こうに隠れ薄暗くなり始めた空。その下に広がる大きな湖と、その中心に灯のように浮かぶ光。

 街だ。

 湖のど真ん中に円柱状の岩のような巨大な足場が浮かび、その岩の上に大小様々な建物が立ち並んでいる。

 その建物から漏れる光が重なり混ざりあい、湖の上で巨大な炎のように揺れている。


「アレがこの国の首都のランライミアさ。その名は湖に浮かぶ灯を意味して由来は……まあ見ての通りだよ」

「すげー! 何だあの岩? どんだけでかいんだよ」


 湖の上の街を支える大きな岩。

 いやマジででかいぞあれ。建物の数からして今まで見て来たどの街よりも広いはず。

 なんであんなものが湖のど真ん中にあるんだ。


「何でも昔昔にこのジレントを建国した魔術師たちが、ノリで作ったらしいよ」

「ちょっと待って」


 お伽噺みたいな話が始まったと思ったらノリで終わった。

 いやそれマジで言ってんのか。もっとこう偉大な魔術師が奇跡を起こして的なバックボーンないの。


「成したことだけ見れば奇跡なんだけどね。本当に特に理由はなく、やれそうだからやってみただけらしい」

「んな山があるから登ってみたみたいな」


 いや確かにあんな街一つ乗せられるだけの広さの足場作ったのは凄いよ。凄いけども。


「まあ作ったのはノリでも防衛という観点では中々優秀らしいよ。何せ見ての通りの円柱型だから、船で近付いても登るのは無理だ。入るには一つしか架かっていない橋を使うしかない」

「あー。じゃあ橋さえ塞げば侵入は拒めるのか。……それ包囲もされやすくね?」

「仮に包囲しても兵が直接ぶつかり合わない遠距離戦なら魔術師の方が有利だと思うよ。それに一流の魔術師は少年も見たように飛べるからね」

「なるほど」


 まあそもそも首都まで攻め込めるやつがいるのかという話だが。

 それに入口が一本の橋だけねえ。


「なんか入る条件厳しそうだな。大丈夫なのか?」

「うん。恐らく入れないね」

「はい?」


 人の危惧をあっさり肯定しやがるこの女。

 じゃあ何のためにここまで来たんだよ。


「よく見なよ。湖の周りにも街はあるだろう。一般人が入れるのはそちらの街」

「あー確かに」


 湖の上の光に目を奪われて気付かなかったが、湖の周りにもちゃんと街はあった。

 中心の方の街と比べると随分と背が低く古そうな建物ばかりだが。


「逆に湖の上の街には魔法ギルドの党員や議員、いわゆる上流階級の人間しか入れないのさ」

「ちょっと待て」


 上流階級の人間は湖の上。つまり魔法ギルドの党首も恐らくはそちらに住んでいるという事で。


「会える可能性低くね?」

「ゼロではないさ。とりあえず党首のスケジュールをなんとか把握して、外に出てくるか、出てくるならいつかを調べないとね」

「うわあ……」


 行ってみればなんとかなると思ってたが、予想以上に手を尽くしてもなお難しそうだった。

 大丈夫かコレ。

 不安に包まれながらの首都入りとなった。

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