今更な新事実
カムナのマナアレルギーとやらがどの程度深刻なのかまでは教えてもらえなかったが、とりあえず目が覚めた翌日には病院から出ることができていた。
そして酒場……というにはやけに洒落た店で食事をとっているわけだが。
「なんか落ち着かねえ……」
何というか、上品すぎるというか。
料理の盛られた陶器の皿は何か花とか草っぽい柄が描かれてるし、テーブルにひかれた布は見たことがないくらい真っ白だ。床にはゴミどころか埃すら見当たらない。
なんか自分が凄く場違いな気がする。
これ支払い大丈夫か。貴族が来る店とかじゃないのか。
「それなりに良い店ではあるけれど、ジレントではこれくらいの店はよくあるよ。客質もいいから私としてはこちらの方が好きだけどね。酔っぱらい共が喧嘩を始めることもないし」
「そりゃこんなとこに喧嘩するような客は来なさそうだけど」
これが平均レベルって凄いなジレント。
なんか今までいたカンタバイレと違い過ぎてあの国大丈夫かとさらに心配になってくるんだが。
それにしても……。
「もっと食べた方がよくないか?」
「私は普段からこれくらいしか食べてなかっただろう。育ち盛りな少年と一緒にするな」
「えー?」
とは言っても、それなりに肉とか野菜が入ってるとは言えスープだけで足りるのか。それにヴィオラは女子なのに結構食べてたような。
いやあの娘っ子は神父様の方針で魔術師のくせに結構な武闘派でもあるからそのせいか。
今思えば森での持久走に魔力で身体能力上げてたとはいえ付いて来てたの、元の運動能力が良くないとあんなスムーズに障害物だらけの中を走れないよな。
「あ、そうだ。魔法ギルドの党首に伝言頼まれてるんだけど、どこに行けば会えるんだ」
「少年はそれなりに教養はあるのに何でそう常識がチーズなんだ」
「チーズ!?」
何だそれ。ああ、穴だらけって事か。
チーズって何で穴できるんだろうなってそうじゃなくて。
「党首なんて教会で言えば教皇だよ。魔法ギルドがこの国を実質的に支配していることを考えれば、他国の王とほぼ同格と言ってもいい。そんな相手に気軽に会えるわけがないだろう」
「え、そんな影響力あるのか魔法ギルド」
確かに議員の大半を魔法ギルドの党員が占めてるとは言ってたが。
というか魔法ギルドという組織とその党員がどれくらい結束力があるのかよく分からないんだよなあ。
「でも神父様が自分の名前を出せば党首には伝わるって……」
「党首にはだろう。分かるとしても側近か。とにかく正攻法で会いたいと言っても、肝心の党首に伝わる前に子供の悪戯だと判断されるよ」
「マジかよ」
いやでも確かに「王様に会いたーい」とか子供の戯言だよな。
あれ? もしかして俺とんでもなく難易度の高いおつかい頼まれた?
「神父の使いだと証明できれば話は早いんだけどね。何せ魔法ギルドの党首の一族は代々神父に弟子入りしているそうだし」
「ちょっと待って」
今いきなり聞き捨てならない情報が出て来た。
いや待て。まだヴィオラのことだと決まったわけでは。
親父が代々ヴィオラの一族が弟子入りに来てると言ってたし、他に神父様の弟子入りに来る人間とか聞いたことないな!
「ダメもとで首都に行ってみるかい? 党首だってずっと部屋にこもってるわけじゃないだろうし、アポは取れなくても上手くいけば直接会えるかもしれない」
「あ、うん。その方向で」
カムナの提案を混乱しながらも受け入れる。
あれ? もしかしてこれからヴィオラのお母さんに会いに行こうとしてるのか?
そんな風に考えてますます混乱する俺だった。




