扱いが雑だった
「何なんだよあいつらは!?」
「まあ一理あるじゃろ」
納得いかなくて叫ぶ俺に、アルフ爺さんが相変わらずの好好爺然とした顔で言う。
現在地はジレント共和国の国境近くにある町の宿。
そう。あの後俺たちは無事にジレント共和国に入国することができた。
というか、魔法ギルドがあのカムナが使ったド派手な魔法を観測したらしく「何があった!?」と十人くらいの魔術師が文字通り飛んできた。
流石魔術師飛ぶのくらいお手のものかと思ったが、空飛べるような魔術師は選ばれた一流の者だけで滅多に居ないらしい。
滅多に居ないはずのもんが十人も即座に飛んでくるって何それ恐い。
「まあそんだけ嬢ちゃんの使った魔術が凄かったという事じゃな。そこらに居る並みの魔術師では、火やら石のつぶてを飛ばすのが精一杯じゃからなあ」
「えーそんなもんなのか?」
それもう火矢撃ったり石投げた方が早いのでは。
いや魔術である以上は物理的な干渉力以外もあるんだろうけど。
そしてやはりヴィオラは神父に弟子入りするだけあり、あの歳で既に規格外な魔術師だったのでは。
規模だけならカムナ以上のもん発動させてもけろっとしてたし。
まあともかく。俺たちがジレントへ向かっていることを話し、事情聴取も兼ねてそのまま国境沿いの森を抜けたところにある町まで連れて来てもらったわけだが、その後の扱いがちょっと酷かった。
もう思いっきり見下されてる。特に俺が。
気絶したカムナはめっちゃ丁寧に扱われ入院までさせてくれたのに、俺は「あれおまえ居たの?」みたいに後回し。
下手すりゃ宿にも案内されずほったらかされてた。
流石に見かねたのかアルフ爺さんが口を出したら慌てたように対応してたが、何で俺だけこんな扱い悪いんだよ。
いやアルフ爺さんは一応大公だからまだ分かるけど、俺とカムナの扱いの差は一体。
「まあ一種の差別じゃなあ。この国には貴族はおらんが、魔法ギルドの党員が議員の大半を占めているのもあり、魔術師が一種の特権階級であるかのように扱われておってな」
「え? もしかして魔術師じゃなかったら人じゃない的な?」
「そこまではいかんが、まあ他の国の貴族が平民に対するそれとほぼ同じじゃな」
「俺の知ってる貴族と違う」
いや俺が知ってる貴族って、元平民な白騎士の孫であるクラウディアさんという特殊事例だけだけど。
「おまえさんらを牢屋に入れたあやつも貴族じゃぞ。まあわしの副官だったわけじゃが」
「え? あのおっさんが裏切ったっていう副官だったのか? いいのかほったらかしにしてたけど」
「まあわしの名を借りんと何もできん小物じゃ。それにもうこの世にはおらんからな」
「え?」
「あの森でな。恐らくはあのイノシシにやられて肉片になってたそうじゃ」
「あー」
もしかして俺たちが襲われる前に交戦してた集団って。
じゃああの巨大イノシシが出なかったら待ち伏せされてたのか。
良かったのか悪かったのか。
あのおっさんたちからすれば最悪の結果だろうが。
「というか俺が怒ってんのはそこもだけどそこじゃなくて!?」
問題はカムナのことだ。
魔術師たちはカムナの今の状態に心当たりがあるみたいだった。
なので何が起こっているのか聞こうとしたのだが……。
「君に聞く権利はない」
もうその一言でシャットアウトだ。
その後はいくら俺が喚こうが騒ごうが完全無視。
いや視線だけで「なんだこの躾のなってないガキは」的なこと言ってた。
何だよ権利がないって。
「いやそのまんまじゃろ。カムナ嬢ちゃんに何があったのかわしも分からんが、もしかすれば嬢ちゃんの秘密や弱みに繋がるものかもしれん。親兄弟でもない坊主に聞く権利は確かにないじゃろうなあ」
「ぐっ……」
言われてみれば確かに。
俺はたまたまカムナと出会い旅の道連れになっただけの赤の他人だ。
付き合いの長い友人でも、ましてや家族でもない。
「まあそんなに気になるならカムナの嬢ちゃんが目覚めたら聞けばいいじゃろ。いつもの顔でごまかされるじゃろうが」
「何その予言」
「坊主が嬢ちゃんより口がたつとは思えんのでなあ」
「うんそれはまあ」
言葉巧みに誘導されて途中で何聞いてたのか忘れそうだな。
まあカムナが言いたくないなら無理して聞き出す必要もないし。
「そういう坊主の甘さを見て嬢ちゃんも無茶したんじゃろうなあ」
「えー?」
これ褒められてんの? 貶されてんの?
そんな風にアルフ爺さんと話しながら、ジレント共和国での初日の夜は更けていった。




