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スライムが燃えた

 燃えやすいのは何も油だけじゃない。

 酒だ。特に火酒なんて火がつくからそんな名前がついてるわけだから菜種油みたいに不発で終わることはないだろう。


 しかしいつもやんちゃしてる俺が酒を売ってくれと言ってもよろず屋のおっさんも了承しないに違いない。

 なので別口から酒を調達する必要がある。


「というわけでロイスさんから酒貰って来た」

「あの傭兵崩れ……」


 高々と戦利品を掲げる俺に何故か頭を抱えるヴィオラ。

 ロイスさんというのはヴィオラも言っているように元傭兵で、様々なところにコネがあるらしく珍しい酒を多数所蔵していてよく村の男衆に振る舞っている。

 そのため俺が「火酒くれー!」と言ったら「おお。おまえもそんな年頃か!」と快く酒を譲ってくれた。

 たかっといて何だが気前が良すぎて大丈夫なのかと心配になってくる。


「でもそれ本当に火酒なの? 普通のお酒はそんなに燃えないって聞くけど」

「火酒くれっていってくれたんだから大丈夫じゃね?」


 いやでも言い方からして俺が飲むと思ってたみたいだしなあ。

 気を使って度数の低いのを渡してきた可能性もあるか。


「まあ試してみれば分かるだろ」

「アンタのその無駄なポジティブさは凄いと思うわ」


 折角なので少し残っていた菜種油で火種を作りいざスライムのもとへ。

 相変わらず蠢いているスライムも学習したのか俺が近付くとビクッとしていた。

「またきやがったよこのガキ」とか思っているかどうかは定かではないが、貴様もついに年貢の納め時だ!


「くらえやあ!」

「掛け声の割にやってることは地味ね」


 コップに入れていた菜種油と違い今回の火酒は瓶入りで一気にかけることもできないため、スライムの周りをぐるぐる回り攻撃を避けながらぶっかけていく。

 ヴィオラのつっこみは無視だ無視。


「よっしゃあ! これで終わりだあ!」


 そして火酒を全部かけ終わり火種を手にスライムに近づこうとしたのだが――。


 ※豆知識

 アルコール度数の高い蒸留酒は火気厳禁と注意書きがされるほど引火しやすく危険です。

 飲みながら一服しようと煙草に火をつけたら気化していたアルコールに火がつくという事故も起きており、周囲での火の取り扱いには細心の注意が必要となります。

 要するに酒自体に着火しなくても近くに火があるだけで燃え広がる可能性があるくらい燃えやすいです。


「アンタ……本当にもう少し慎重に生きなさいよ」

「ごめんなさい」


 肩でぜぇはぁと荒い息をつくヴィオラに思わず正座で謝る俺。


 酒は予想通りにというか予想以上に燃えた。

 俺が火種を近付けただけで一気に炎上しスライムどころか周囲に飛び火。

 突然上がった火の手の勢いに思わず呆然としている俺を尻目に、慌てて吹雪みたいな魔法を発動させたヴィオラによって鎮火された。


 おかげで炎は一気に凍り付き俺もちょっと凍ったが文句も言えない。

 ヴィオラがいなかったら森にまで火が広がって大惨事になるところだった。

 というかやらかした事実は消えないので素直に神父様に自首して何らかの罰をもらって来ようと思う。

 自分で言うのもなんだが村八分にされてもおかしくないほど今回のやらかしは酷い。


「ううん。今回は私も悪かったわ。呑気に見てないでちゃんとお酒がどれくらい燃えやすいのか確認しておくべきだった」


 そう言って俺を責めるのをやめ反省を始めるヴィオラ。

 やめて。そんな真摯に反省されると元凶の俺がいたたまれない。

 ヴィオラは悪くないから。むしろ功労者だから。


「ともかく神父様に報告に行きましょう。大丈夫よ。未遂なんだからそんなにきついことは言われないわ」

「……うん」


 そうして年下の女の子に手を引かれて歩き出す俺は間違いなくカッコ悪い。

 でも色々ショックすぎて素直に従っちゃう。


 ちなみにスライムは炎上したあとすぐに冷却されたせいか弱ってはいるが普通に生きていた。

 生命力強いなこいつ本当に雑魚かよ。


 そして事の次第を神父様に説明したのだが俺への罰は教会の掃除というゆるいものだけ。

 しかし「では小細工なしでスライムを倒せるくらい強くなりましょうか」という神父様の方針変更により剣の稽古がいじめかと言いたくなるほど厳しくなった。

 チクショウ。次は正攻法で勝ってやるからなスライム!

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