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スライムを燃やしたい

 古来から火攻めと言えば油だ。

 特に菜種油みたいな植物性の油は照明用に使われるくらい一般人でも手に入れやすい。

 ただし高い。蝋燭よりはマシだけどお子様のお小遣いには普通に痛い。

 それでもへそくりでなんとか村のよろず屋から菜種油をコップ一杯分だけだが購入することに成功した!


「それ仮にスライム倒せてもアンタの冒険者生活赤字続きになるんじゃない?」

「言うな」


 ヴィオラのつっこみについては深く考えない。

 そうこれは最早損得ではなく男の尊厳をかけた問題なのだ。

 ここでスライムを倒せないと俺の夢が終わってしまう。


「別に魔物はスライムだけじゃないんだから、パーティ組んでスライムは魔術師みたいな他の向いてる仲間に任せればいいでしょう」

「おまえ魔法使いなんて絶滅危惧種そんな簡単に仲間にできるわけないだろ」


 何せ魔法使いの人口は少ない。

 火種出せて便利ですよレベルならともかく戦闘用の魔法を使えるレベルとなると国に百人もいるか怪しい。

 そんな希少な人材の中に冒険なんてするもの好きが早々居るわけがない。


「……」


 そう正論を返したのに呆れた目で見られた。

 何故だ。


「もうここまで来たら意地なんだよ言わせんな」

「はあ。まあやるだけやってみたらいいんじゃない」

「言われなくても!」


 菜種油にこよりをひたしそれに火をつけて火種にする。

 あとはスライムにぶっかけた後に着火して終了。勝利。

 今度こそ勝ったぞスライム!


「というわけでくらえやあ!」


 火種が消えないように気をつけつつ西の森に向かい、相変わらずのそのそと蠢いていたスライムに菜種油をぶっかける。

 少し驚いたようなしぐさを見せたスライムだが相変わらずノロい。

 あとはスライムに火種を近付けて発火させれば――。


「……あれ?」


※豆知識

 菜種油やサラダ油といった照明用にも使われていた油は揮発性が低く着火点も高いため単体ではそれほど燃えません。

 火の付いたこよりが万が一油の中に落ちても火がつかずに消えたりと、照明としては比較的安全に使える油です。

 つまりスライムみたいな不燃性の物体にぶっかけてもそう簡単には燃えません。


「……戦略的撤退!」

「その判断の早さだけは冒険者向きね」


 火が燃え移ったと思ったらくすぶるようにすぐに消え、一向に延焼しない上にちょっとスライムが怒ってるような気がしたので即座に逃げる。

 負けじゃない。ちょっと体勢を立て直すだけだ!


「俺の小遣いが!」

「無駄遣いだったわね」


 再び村まで逃げてきたがショックは前回の比ではない。

 スライムを倒せると思ったからこその出費だったのにまさかの不発。

 無駄遣いというヴィオラの言葉に反論できない。


「まさか菜種油があんなに燃えづらいなんて」

「燃えやすかったらそこら中で火事になってるわよ」


 ヴィオラからのごもっともすぎるお言葉。

 おまえそれに気付いてたなら何で先に言わなかった。


「言う前に買って来てたし、アンタ私が言っても『実際にやってみないと分からない!』とか言うでしょ」

「はい」


 その通り過ぎて素直に返事をするしかない。

 いやほら、百聞は一見にしかずって言うし。


「アンタの場合百どころか十も聞かずにつっこむでしょうが」

「ごめんなさい」


 再びごもっともすぎるお言葉にもう謝るしかない。

 俺明日からちゃんと勉強する(本日二回目の決意)。


「いやでも燃やすというアイデア自体はいいと思うんだよなあ」

「直接火をつけようとしたから失敗したのよ。松明にして近付ければいいじゃない」

「え、やだ地味じゃんそれ」


 松明を近付けてスライムをあぶる図。

 なんだその魔物退治の常識を覆す地味な絵面は。


「アンタ勝ち方をえり好みできる立場じゃないでしょうが」

「でもなあ……そうだ!」


 ひらめいた。

 要は菜種油よりも燃えやすいものがあればいいんだ。


「よし! ちょっと行って来る!」

「何処に!?」


 菜種油よりも燃えやすいものに心当たりがあり、俺は村のある場所へ向けて走り出す。

 待ってろよスライム。

 今度こそ俺がおまえを倒してやるぞ!

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