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スライムを倒したい

 村の西にある森にて。

 森と言っても普段から村人たちによって管理され木が生えすぎるなんてこともなく、太陽が出てる内は明るい歩きやすい森だ。


「……おお。スライムだ」


 そんな森にぐにぐにと蠢きながら移動するちょっと紫がかった透明の物体が一つ。

 どう見てもスライムだ。

 神父様のところにある図鑑で見た。

 何気に生まれて初めて見た魔物なのでちょっとした感動を覚えている。


「スライム見て感動するとか頭大丈夫?」

「おまえのせいで心が大丈夫じゃない」


 いつの間にか追いついて来て俺が隠れてる藪の影にいたヴィオラから辛辣な一撃。

 これだからロマンの分からない女子は。


「さて。やるか」

「まさかとは思うけどその棒っ切れでやるつもりじゃないでしょうね」

「棍棒だよ! れっきとした武器だよ!」


 俺が構えたものを見て呆れたような視線を向けてくるヴィオラ。

 仕方ないだろ。ただの村人の俺が剣とか持ってるわけないだろ。

 それに素人は下手に刃物使うより打撃武器の方がいいって神父様が言ってた!


「確かに一理あるけどそれは相手によって……」

「よっしゃこらあ行くぞー!」

「聞きなさいよ! あと相手が気付いてないのに大声出してアピールすんな!」


 ヴィオラのつっこみは無視して突撃。

 大丈夫。スライムは雑魚の代名詞だけあって動きも鈍い。

 案の定こちらには気付いたらしいが攻撃が来る様子もない。そのため一気に距離をつめて棍棒を全力で振り下ろしたのだが――。


 ――ぶにょん。


 勢いよくスライムにめり込んだ棍棒は、とても弾力のある手応えと共にゴムでも殴ったみたいに弾き返された。


「……ホワッツ!?」

「馬鹿! 足元!」

「え? おわあ!?」


 予想外の手応えに呆然としていると、ヴィオラから警告され地面を這うようにスライムの体が細く伸びてきていることに気付く。


「この! スライムのくせに!」


 それから逃げながらもとにかく攻撃だとばかりに棍棒を何度も振り下ろすが、そのたびにスライムはぐにょぐにょと変形しつつも棍棒を弾き返してきてダメージがあるようには見えない。

 ……ん? もしかしてこれつんでる?


「……戦略的撤退!」

「良かった。逃げる程度の知能はあったのね」


 ヴィオラが何か言ってるが断じてこれは逃げではない。

 勝利するための明日への前進だ!


「何だよアレ本当に雑魚かよ!?」

「アンタも雑魚だっただけでしょ」

「うぐっ!?」


 村まで逃げ帰り愚痴ったところでヴィオラに呆れたように言われる。

 反論できない。俺はやはり人間の雑魚だった……?


「それにスライムが打撃に強いのなんて常識でしょう。図鑑の絵だけ眺めて解説流し読んでるからそんなことになるのよ」

「もうやめて!?」


 ぐうの音も出ない正論で俺を追い詰めないで。

 明日からちゃんと勉強にも力を入れるから!


「ん? じゃあ剣とかなら普通に倒せるのか?」

「剣使っても切れ味が悪かったり腕が悪かったりしたら刃が通らないわよ。新兵なら二、三人で囲んで袋叩きにするような相手よ」

「スライムすげえ!?」


 雑魚とは何だったのか。

 いや仮に新兵が雑魚と同等だとすれば俺は雑魚以下だった……?


「正規の訓練潜り抜けてようやく一人前になった新兵にアンタ勝てると思うの?」

「思いません」


 神父様から剣を習ってはいるが、それこそ手習い程度というか日々の勉強のついで程度でしかない。

 やはり俺は雑魚以下だった。むしろ雑魚と評価していたヴィオラは優しかった……?


「これに懲りたら危ないことはやめて真っ当に生きなさい。いいじゃない畑を耕して一生を終えるのも」

「いや、よくねえよ」


 まだ十四歳の少年に何て現実的な未来を提示するんだ。

 まだまだ夢に溢れた年頃ですよ俺は。


「打撃はきかない……。あ、スライムって火に弱いって聞いたけど?」

「確かにスライムを倒すなら火の魔術と相場は決まってるけど。アンタ魔術使えないでしょうが」


 確かに俺は魔法は使えない。

 魔力自体は誰にでもあるものだが、それを魔法という力にまで昇華できる人間は一握りだ。

 一応努力すれば誰でも使えるらしいが、俺みたいな一般人が努力しても十年かけて火種くらいは出せるかなー程度。

 まことに不公平な力である。


 それはともかく。


「魔法なんかなくても火は使える。やってやるぜ!」

「子供が火遊びするんじゃありませんって神父様に言われたでしょ!?」


 ヴィオラが何か言ってるけど知らない。

 これは遊びじゃない。戦いだ。

 待ってろよスライム。

 今度こそ俺がおまえを倒しに行くぞ!

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