表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/98

何か来た

 神父様が出ていった次の日。


「……暇」


 まだ一日しか経ってないというのに、俺はいつもなら神父様に勉強を見てもらっている教会の一室で暇を持て余していた。


 いやだって神父様がいざという時にすぐ駆け付けられないからと、危険な訓練の類は禁止されてるし、西の森の持久走もできない。

 かといって勉強をしようにも神父様がいないから効率が悪いしと、できることが殆どない。


 改めてこの村の田舎っぷりを思い知らされた。

 まさか神父様が居なくなるだけでここまでやることがなくなるとは。


「それ見張る人がいないからサボってるだけじゃない」

「うぐぅっ!?」


 そんな愚痴をもらしたら、隣で何かの本を読んでいたヴィオラに思いっきり正論を叩き込まれた。

 いやだって実際分からないとこあっても聞く人いないから全然勉強進まないし。


「聞かなくてもある程度分かる分野やればいいでしょう。アンタ冒険者になりたいのに地理とか歴史さっぱりじゃない。覚えとかないと痛い目見るわよ」

「なんでおまえ俺の不得意分野把握してんだよ」


 確かに俺は暗記系の勉強はさっぱりだ。

 じゃあ何が得意かって?


 ……やっぱり冒険者なら体を動かせるようになっとかないとな!


「あーそういや神父様が東大陸とか南大陸とか言ってたけど、ここって何大陸なんだ?」

「……」

「そんな未確認生物発見したみたいな目で見んなよ」


 いやマジで何その目。

 ヴィオラに呆れた目を向けられることには慣れてるが、そんな不可解そうな目をされたの初めてだぞ。


「……それって田舎なら当たり前の認識なのか、アンタが桁外れに世間知らずなのかどっちなのかと思って」

「ゴメン。俺が世間知らずなだけだと思う」


 なるほど。そういう反応か。

 そこで俺が世間知らずだと断定しないあたり案外優しいなヴィオラ。

 実際俺が世間知らずなだけだからその優しさを俺自身が無意味にしてしまっているわけだが。


「はあ。ここは南大陸よ。その中でもこの村は大陸のほぼ中央にあるわね」

「へー。……あれ? じゃあ神父様がわざわざ南大陸出身って言ってたの何でだ?」

「先生みたいな黒髪に黒い肌の人間は北大陸に居るのよ。でも先生はそこの出身じゃなくてこの大陸の生まれってこと」

「あんな目立つ人が沢山いるのかよ北大陸」


 逆に北大陸には沢山いるから目立たないのか?

 いや、そもそもその人たちも神父様みたいに服まで黒尽くめではないだろうけど。


「ちなみに先生が出かけていった教会の本部はこの大陸の西の端にあるから、本来ならそんなに短時間で行って帰って来れるような距離じゃないの。途中に険しい山脈があるからそこで力尽きる旅人も多いし」

「ひえー恐いな」

「だからそういう地理を分かってないのにふらついたら死ぬって言ってるのよ」

「……なるほど!」


 地理を覚える事の大切さがよく分かった。

 せめて次の目的地までどれくらいかかるかくらい把握してないと、それこそ迷うか食料尽きて死ぬな。


「ヴィオラ! 居るか!」

「はい?」


 そんなことを話していたら、突然部屋の扉が開いて大きな影……ロイスさんが駆け込んでくる。

 何事だ。

 というか走り込んできたのにドア開けるまでめっちゃ静かだったぞ。

 森の中での擬態といい本当にただの元傭兵かこの人。


「どうしたんですか」

「魔物の群れが出た。結界があるからわざわざ神父様を呼び戻すほどじゃないが、居座られても面倒だ。殲滅するの手伝ってくれ」

「分かりました」

「ロイスさーん。俺は?」


 ロイスさんの言葉にあっさりと頷いて立ち上がるヴィオラだが、隣にいる俺が居ないかのように扱われてるのは何でなんですかね。


「おまえはいらん」

「マジかよ」


 情け容赦なくぶった切られた。

 いやちょっと待って。俺だって何かの役に立つだろ。

 接近戦させるのが不安だっていうのならクロスボウだって使えるし。


「あーいや待てよ。確かに一度戦わせるのもありか?」

「もうその言葉の時点で負けるのが目に見えてるわね」

「ええ……」


 駄目もとでけしかけられるとか何が来たんだよ。

 神父様曰くクロスボウは甲冑や場合によっては分厚い盾も貫通するらしいから、大抵の魔物には効くだろうに。


「いや上手く当たれば効くだろうが……まあ見りゃ分かるだろう。さっさとクロスボウ持ってこい」

「了かーい」


 そんなわけでクロスボウすら歯が立たないらしい何かと戦うことになった。

 マジで何が来たんだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました
日本の神々の長である天照大神は思いました。最近日本人異世界に拉致られすぎじゃね?
そうだ! 異世界に日本人が召喚されたら、異世界人を日本に召喚し返せばいいのよ!
そんなへっぽこ女神様のせいで巻き起こるほのぼの異世界交流コメディー
― 新着の感想 ―
[一言] わざわざヴィオラ呼んで殲滅しないといけない… スライムとかの軟体系か、そもそも一匹殺した程度じゃ焼け石に水の群体系?
[良い点] クロスボウが効かなくて魔法使いのヴィオラを呼ぶ… これはタイトル再回収の強いスライムか、ゴーレム系か、ゴースト系か…
[一言] マジで何が来たんだよw 神父様がいたらどおってことない相手なんでしょうけど。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ