うちの一族が酷い
「何で神父様あんな怒ったんだろうなあ」
神父様によるユニコーン殺害未遂事件から少しして。
とりあえずユニコーンは置いといて家に帰って飯食ってるわけだが、後から考えても神父様のキレっぷりが異常だったのが忘れられない。
ちなみに怪我については神父様の魔法で治してもらった。
聖職者と言えば回復魔法だからそこはいいにしても、あの地面引き裂いてた衝撃波は一体何だったのか。
やっぱりあの人神父の皮をかぶった別の何かでは?
「何だ神父様が怒ったのか。珍しいな」
俺の呟きを聞いて、正面でもっくもくとパンをスープにつけて食う作業を繰り返していた親父が反応する。
そういや親父なら分かるかな神父様が怒った理由。
そう思い今日あったことを話したのだが。
「そりゃ温和な神父様でも孫娘がセクハラされたら怒るだろう」
「なんて?」
なんかさらりと衝撃の事実を告げられたんだが。
誰が誰の孫だって?
「ヴィオラちゃんが。神父様の」
「あの人何歳だよ!?」
あの二人が血縁だったのも衝撃だけど、それ以前に神父様が祖父だというのがおかしいだろ。
やっぱ不老不死かあの人。
「多分なあ。俺が子供の頃から見た目が変わってないぞあの人」
「多分て」
誰か確かめないのかそこ。
いや確かめようとしてもはぐらかすだろうけどあの神父様なら。
「神父様のとこにはヴィオラちゃんの一族が代々弟子に来ていてなあ。ちなみに親父……爺ちゃんはヴィオラちゃんのお婆ちゃんに惚れて告白したが、見事にフラれたらしい」
「いらねえからその情報!?」
何が悲しくて今は亡き祖父の失恋話聞かにゃならんのだ。
確かに元騎士だったらしい曾爺ちゃんと違って、爺ちゃんはちゃらんぽらんな人だったが。
「で、俺が子供の頃にもヴィオラちゃんのお母さんが神父に弟子入りに来ててな。その時に『実は神父様って私のお爺ちゃんなんだ』と言ってたわけだ」
「それならヴィオラひ孫じゃん」
いや、本当はもっと代が離れてるけど面倒だからお爺ちゃんだと言った可能性も?
それならますます神父様何歳だという話になるが。
「ちなみに俺はそのヴィオラちゃんのお母さんに一目惚れしたが、告白できずに帰っていく彼女を見送ることしかできなかった」
「いや知らねえよ」
昔を懐かしみ哀愁を漂わせながら何か言ってる親父。
祖父に続いて親父までヴィオラの一族に失恋していた。
あれ? これ俺もいつかヴィオラにフラれるのか?
いや別に好きなわけではないけど。
「でもおまえヴィオラちゃん逃したらこの村に歳の近い結婚相手いないぞ」
「だからってヴィオラはないだろ。俺とは住む世界違うって」
何せ代々魔法使いな名門一族だ。
俺みたいな村人Aとどうこうなるわけがない。
「それに俺は冒険者になるって言ってるだろ。都会に行けば俺と同年代の女の子なんていっぱいいるって」
「うーん。結構いい線いってると思うんだがなあ」
そう残念そうに言う親父だが、何をどうみれば脈があると思ったんだか。
まあ神父様とヴィオラのことは置いといて、ユニコーン対策も考えないとなあ。
「なんだ。ユニコーン退治なら有名な話があるのに知らないのか?」
「……教えてくださいお父様」
「あー神父様は自分で考えさせたいんだろうが、まあ今回はいいか。課題自体が神父様の八つ当たりのついでみたいだしなあ」
そう言いながら、物置になっている屋根裏部屋から一冊の本を持ってくる親父。
やっぱ親父から見てもただの八つ当たりなのか今回の課題。
ともあれユニコーン対策の参考になりそうなものは手に入った。
後は俺がそれを実行できるかどうかだなあ。