1.はじまり
見切り発車ですが、頑張って続けたいと思います。
ナイトレイ男爵家の使用人たちは、朝から目ぐるましく動き回っていた。当主であるアルバートの一人娘、アリスの五歳の誕生日だからだ。
身内だけの小規模なパーティーとはいえ、アルバートと使用人が溺愛する姫のためとあらば気合も入る。執事のモーリスを筆頭に、使用人達は巧みな協力プレイで着々と準備を進めていた。
「アリス様。今日は目一杯おめかししましょうね!」
本人よりも浮き立っているのは、侍女のキャシー。
主にアリスの身の回りの世話を担当している。彼女もアリスを溺愛する一人だ。
アリスのさらさらとした髪を梳かし、サイドを丁寧に編み込む。
ふわふわなレースとパステルカラーの花柄が散った水色のドレスに合わせ、髪飾りも花の形。今は亡きアリスの母クラリスの形見である。手の込んだ細工が施されており、とても美しい一品だ。
「なんて可愛らしいのでしょう! 天使? 妖精? はああ尊い!!」
ベージュベースのピンク色の髪色。
くりくりとした大きい瞳は、きらきらと宝石のように不思議な色合いをした若葉色。反射する角度によっては、青や黄、銀色にも見える。
バサバサと目のふちを囲む長い睫は髪と同じ色。
肌は程よく白く、柔らかそうな頬は可愛らしく桃色に色づいている。
バランスの良い高さの鼻。血色のいいぷっくりした唇。
アリスはたいそう美少女だった。
キャシーが仕立ての出来に興奮している一方で、当のアリスは鏡の前で固まっていた。映り込む自分の姿を凝視している。
「……? アリス様? どうなさいました?」
微動だにしないアリスに気付いたキャシーが、心配そうに尋ねる。
「……でしょ」
「え?」
アリスはキャシーの声が聞こえていないのか、顔を真っ青にして震える。
「また!? またヒロイン!? もう勘弁してよ!!」
「アリス様ぁぁ!?」
アリスは悲鳴のような声を上げ、ぶっ倒れた。