世界政府転覆
警察の実況検分は終わった。もう朝だ。ゆうこはパーツ交換をして帰ってきた。お巡りさんが言うには、カミユは“圏外”に逃げたとの事。圏外とは放射線汚染された、元原子力発電所の近くだ。中部にある圏外は浜岡だ。静岡県の半分が立ち入り禁止となっている。
俺は午前中寝て、昼に中部警察署にタクシーで行く。100メートル、寿命2分だ。
『お客さん、セレブですね〜、お仕事は?』
『俺はフリーのプロゲーマーだよ。運ちゃんはこの仕事して何年?』テキトーに世間話をする。コイツまで鉄砲玉になられたら、堪ったもんじゃない。
『相当強いんですね〜。私は20年くらいこの仕事をやってますけどね。お客さんみたいに“3桁”のセレブは年に1回乗るかどうかですよ』
『それは良かったね』
赤信号でタクシーが停まった時に『ほら』と運ちゃんが手のひらを見せてきた。
『寿命22年!? 儲けてるな〜』
『GLで増やしたんですよ』
『プロのギャンブラーか。凄いな。……近くだ、ここで下ろしてくれ』
『毎度。寿命45分のお支払です』
左手を読み取り機にかざし、ピッと支払う。
『じゃあな』
『お客さん、警察署の駐車場で待ってましょうか?』
『いや、いい。いつ帰られるか判らないから』
俺は歩いて数十秒で警察署に着く。ジャックが入口で待っていた。
『よう、ジャック』
『スカイ、昨日は大変だったね。無事か?』
『怪我はない。ロボットは刺されちゃったけどね』
『そうか。では早速、備品室に行こう。チップメモリーを見せてくれ』
『分かった』
俺達は警察署地下の備品室へ行く。
備品室のデスクに1人の男が椅子にもたれて寝ていた。
『ゴンゾウさん! ゴンゾウさん! 昨日言ってた世界政府転覆の時間ですよ』ジャックが揺すり起こす。
『…………あっ? もう昼飯の時間か?』顔に乗せてた雑誌が落ちる。
『ジャック、この人は大丈夫か?』俺は心配になった。
『大丈夫だよ、多分。……白木さん、例のチップメモリーですよ』
『んあ!? 世界政府転覆は私の責務であります』ゴンゾウはフラッと立ち上がり、敬礼をする。明後日の方向に。二日酔いかな?
『本当に大丈夫かよ!?』




