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最弱職のイレギュラー  作者: 華藤丸也近
第2章 俺以外の“転生者”
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第31話 魔法の特訓

「はぁ!」

「ふん……」


 モニカが放った魔法を、アルさんは涼しい顔をしながら素手で消し飛ばす。

 ライムに抱きかかえられた俺は屋敷の地下へと連れてこられた。

 大体テニスコートよりも少し大きめのその室内にモニカとアルさんが向かい合うように立っている。

 部屋のいたるところに甲冑や様々な種類の武器が置かれており、武器はどれも木製のようだ。

 

「アル! どうでしたか?」


 長い時間特訓をしていたようで、モニカは汗だくになりながら息を荒げているようだった。

 それに引き替えアルさんは全くと言って良いほど疲れた様子を見せていない。息も切らしていないようだ。

 

「失礼を承知で申し上げると、まだまだ威力が弱いかと」


 アルさんはモニカを魔法を受けた方の手を眺めながら控えめに答える。

 アルさんの手は僅かに焦げたような黒い煤が付着しているようだが、それ以外はほとんど無傷だった。


「そうですか……」


 汗を手で拭いながら眉を寄せて呟くモニカ。

 モニカの放った魔法は火属性の魔法で、ニルの魔法をこの目で見ているせいか俺でも威力に関してはお世辞でも良いとは言えないものだった。

 ただ、アルさんが魔法を素手で消し飛ばしたのは正直驚いたけど……威力は弱いとは言っても、速度はそれなりに早かったし。


「魔法発動には集中力とイメージ力が必須です。では、もう一度」

「……分かりました」


 アルさんは毅然とした態度でモニカに指導する。

 モニカ様とは言っているけれど、特訓中は主従関係とかそう言ったしがらみは取っ払っているようにも感じる。

 アルさんは本気でモニカの戦闘力を上げようと熱心に指導しているし、モニカもそれに対して文句ひとつ言わずに取り組んでいる。

 あれから一体どれくらい、特訓の回数を重ねて来たんだろうか?


「まあ、1日1回っていうところだからな。ただ、モニカ自身も焦っているんだろうよ。ジジィの特訓が終わってからも、自主的に魔法の勉強をしたり、特訓したりしているみたいだぜ」

「モニカが今、習得している魔法ってどれくらいあるんだ?」

「まあ、多くて3つってところだな。後は、今のファイアボールみたいな初級魔法でも威力が弱くて戦闘向きでないものばかりだ。あんまりやり過ぎないようにはいってるんだけどよ……聞いちゃくれなくて、何度魔力切れを起こしたか」


 そんなになるまで魔法の特訓を……あの時の約束、必死に守ろうとしているのか。

 それに引き替え、俺はほとんど何もしていないじゃないか。あれだけいきがっておきながら情けない。


「炎よ集え、蒼き炎玉、その身を以て爆ぜよ! ファイアボール!」


 かすれた声で魔法を唱えるモニカ。

 手のひらを広げて、胸の前で構えると、その手の中に青い炎が集結し一つの大きな火球を創り出した。

 それに至るまでほんの数秒ほど……でも、初級魔法とは言え、詠唱が長いようにも感じる。


「はっ!!」


 モニカはその火球を押しのけるようにアルさんの方に突き出した。

 すると、その火球は瞬時に弾丸のように放たれ、アルさんに襲い掛かる。


「ふんっ」


 だが、アルさんはまたしてもモニカの魔法を涼しい顔で消し飛ばした。

 風船の割れるような軽い音を立てて火球は跡形もなく爆ぜる。

 魔法としては完成しているようには見えるけれど、やっぱり威力が足りないらしい。


「やっぱ威力が足りねぇな」


 離れたところで見ているライムも納得は言っていないようだ。

 単純に、ニルの魔法が凄すぎたってところか。あいつは独学でしかも自己流で魔法を編み出している訳だし。

 俺には魔法なんて全く使えないけど、覚えるだけじゃダメみたいだな。


「なあ、魔法の威力を上げるにはどうしたら良いんだ?」

「あ? そんなの、イメージする事に決まっているだろ。まあ、自分の魔力量にもかかわってくるんだけどな。モニカの場合は魔力量は悪くないんだけど、なんせ今まで一切魔法を使うような場面はなかったう上に、学習も曖昧なままだったからな。魔法を形作るイメージが薄いんだよ。だから今のみたいに極端に弱いを形成してしまう。ファイアボールは確かに初級魔法だが、モニカのあれはさすがに弱すぎる。ジジィを相手にして遠慮している様にもみえるけどな」


 確かに、特訓とは言っても相手は自分の従者だ。小さい頃から知っている訳だし、家族とまではいわないけれどそれくらいの関係であってもおかしくはない。そんな相手に魔法を放つのを躊躇うのも分かる気がする。


「はぁ、仕方ない。モニカもかなりギリギリみたいだし、ここは私が魔法が何たるかを教えてやろうか」


 そう言って何かを企んでいるような悪党も真っ青の笑みを浮かべたライムは、俺をそっと床に下ろしてモニカの元に歩み寄った。

 あ、あいつ、アルさんをマジで殺すつもり……じゃないよな? さすがにそこまではしないよな?


「おい、脳みそ消費期限切れの廃物クソジジィ。そんな眠くなるような特訓続けたところで意味ねぇって事、そろそろ気付けよな」

「……貴様は口を出すな」


 相変わらず口悪いなー。動じないアルさんももっと凄いけどさ。

 ほら……モニカもポカンとした顔してるじゃないか。

「魔しないで! 私はまだ……」

「バーカ。そんなゼェゼェ息荒げている奴がまだやれる訳ねぇだろ。少し休憩しな、魔法の使い方教えてやるからよ」

「……!?」


 モニカの前に立ち、アルさんと対峙するライム。

 ライムの発言にアルさんの表情が一気に険しいものになる。腰に差した剣に手を添えて、いつでも反応できるよう臨戦態勢に入った。

 アルさんをここまで警戒させるライムってどんだけ凄いんだよ。


「……分かりました。少し休憩します」


 渋々と言った感じではあったが、自分の限界を悟ったのかモニカは表情を曇らせながらこちらへと向かって来た。

 俺から見ても、正直やつれたように感じる。かなり無理して特訓を続けていたんだろう。

 モニカは俺を抱きかかえてその場に体操座りすると、俺の背中に口元を埋めながらアルさんやライムの様子をじっと見つめていた。


「さて、よく聞いとけよモニカ。魔法ってのは確かに自分の魔力量によって左右されるから威力が弱くなってしまうのも無理はねぇ。ましてや最初の頃は初級魔法がまともに使えてやっとなところだからな。モニカの魔力量もたいして長けている訳じゃねぇから威力が弱いのも仕方ないが、今のモニカの魔法はそれよりもはるかに弱い。その上このクソジジィに遠慮して無意識に制御しているから、簡単に消し飛ばされてしまう」


 ライムは意気揚々とアルさんの方に目を向けながらモニカに向かって説明する。 

 モニカはそれを喰いるように見つめていた。

 俺も魔法は使えないけれど、魔法の知識は持っていた方がいいよな。もし、もし万が一魔法を使えるようになるかもしれないし、その時に知らないと苦労するしな。まだ望みは捨ててないからな。


「いいか、魔法ってのはイメージだ。魔法を構成するイメージを掴む事が出来れば、どんな魔法だって習得可能だ。適正に左右されるがな。例えばそうだな……モニカがさっき使った魔法なら」


 そう言ってライムは右手の人差し指をアルさんに向ける。

 アルさんはいつでもライムの迎え撃つ準備を整えていた。


「炎よ集え、蒼き炎玉、その身を以て爆ぜよ! ファイアボール!」


 ライムが唱えたのと同時に人差し指の先に巨大な火球が瞬時に集結し、それはモニカが放ったものとははるかに素早いスピードでアルさんへと襲い掛かった。

 ほぼ消し飛ばす事が出来なかったのか早すぎて反応が遅れたのか分からないが、次の瞬間にはアルさんは燃え上がる火柱の中に包み込まれてしまった。

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