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最弱職のイレギュラー  作者: 華藤丸也近
第2章 俺以外の“転生者”
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第28話 お嬢様には躊躇も容赦もありません

 必死の叫びも空しく、俺の抵抗など一ミリも伝わっていないモニカに着ている衣装を引き剥がされ、また新しい衣装を着せられた。

 暴れでもすれば良いんだろうけど……さすがに使用人に囲まれている状況だし、モニカにケガを負わせるわけにはいかない。それこそ、どんな顔して次に会ったら良いか分かんないしな。

 我慢だ……我慢しないと。


「いやぁぁ! これも可愛い! ね? 可愛いですよね!」


 モニカは満面の笑みを浮かべながら着せ替え人形と化した俺を抱きかかえる。そのまま俺を周りの使用人達に見せつけた。


「そ、そうですね……」


 若い使用人のメイドがモニカにバレないように俺から目を逸らして引きつった笑みを浮かべていた。

 本当……心中お察ししますよ。モニカのセンスがここまで酷いものだったなんて。マガリイノシシを着飾ったところで元のビジュアルがアレなんだから……これがアレか、豚に真珠って事なのか!? 


「おーい、モニカ。ジジィが呼んでるぞーって……何だ? 揃いも揃って」


 モニカが次の衣装を着せようと衣装選びを始めたところで、モニカの部屋の扉が開かれる。

 気怠げな声を上げて部屋に入ってきたのはデッキブラシを手に持ったライムだった。

 ライムは部屋に入るなり、集まっている使用人達を見て怪訝そうな表情をする。

 そんな姿見て数人の使用人がホッと肩を下ろしたのは見逃さなかったが、何も言わないでおこう。

 

「あっ! ライムじゃない! ねぇねぇ、この子可愛いでしょ?」

「あん?」


 ライムの登場でさらに機嫌を良くしたモニカは俺を再び抱きかかえてライムに見せつける。

 怪訝な表情をしながら俺に顔を近付けたライムは眉を顰め、呆れたように溜息を吐いた。


「モニカさ、もうちょい自分のセンス磨いた方が良いと思うぞ。どうしたらコレが可愛いんだよ」

「えぇ!? ここの鼻のところとか愛くるしいじゃないですか! つぶらな瞳も!」


 はぁ!? 鼻とか目が可愛いって言うなら俺にこんな衣装着せた理由は何!?

 こんなの着せておいて可愛いポイントはそこかよ! 


「全然分かんねぇ。ていうか、ジジィから聞いたぞ。この魔物、ペットなんだろ? 人様のペットをオモチャにしてんじゃねぇよ」

「し、仕方ないじゃない。服を着ないと湯冷めしちゃうかと思って色々と着せていたら止まらなくなったんだもの」


 ライムに注意されて不満げに口をへの字に曲げるモニカ。ライムから目を逸らしてブツブツと言い訳を呟いている。

 いやいや、割と最初からノリノリだったじゃん!


「だからって人様のペットをオモチャにして良い理由にはならねぇだろ。それにな、モニカ」


 ライムは俺の姿をまじまじと見ながら、ニヤッと意味深な笑みを浮かべてモニカに視線を移した。


「こいつ、オスだぞ」

「…………え!?」


 一瞬の間の後で驚いたような声を上げるモニカ。

 やっぱり気付いていなかったのかよ。風呂にまで入ったのに、そこに気付かないなんて……まあ、これで収まるのならそれでいいや。


「う、嘘!? そ、そんなはずは!?」


 いやいや、それが本当も本当。オスなん――ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 何やってんのこの子!!

 俺がオスだと認めないモニカは片手で俺の体を支えながら、あろうことかもう一方の腕を後ろ足の間に突っ込んだ。

 そのまま何の躊躇もなく、アレがないか弄られる。


「……あっ。これは」

「ちょっ!? それは!! い……いぎぃぃぃぃぃぃぃ!! あああああ! 痛い痛い痛い痛い!! 潰れる! 潰れるって!!!」


 子孫の詰まった大事なアレを指で容赦なく強い力でつままれ、俺は脳天を貫くような感覚とともにこの世の終わりのような激しい痛みを局部に感じた。

 声を荒げて叫ぶが、周りにいる人達に俺の声が届くはずもない。多分、マガリイノシシが断末魔を上げている鳴き声が聞こえているんだろう。

 とにかくその痛みから逃れたくて俺は必死に足をバタつかせて暴れる。

 も、モニカって何なんだ!? 何でそんな躊躇なく触れるんだよ!? 

 て、ていうか……ヤバい。目茶苦茶痛い……じっとしてられない!


「ああ! そんなに暴れないでください!」

「……おいおい。さすがの私もそれは引くぞ」


 俺はモニカの腕から逃れ、痛みを少しでも感じないように部屋中を転げまわる。

 だが、それも体力の限界が出来てとうとうできなくなり、俺はその場に倒れて脚をバタつかせる事しか出来なかった。

 周りにいた男性の使用人達はその痛みが十分分かるようで、俺から必死に目を逸らしていた。

 

「え!? だってライムが教えてくれたじゃない! オスにはそういうのが付ているって」

「だからって……本当、モニカは極端だよなぁ」


 おいコラ、テメェの仕業かよ!

 おかしいと思ったんだよ、モニカがそんな躊躇なく触れるはずがないって。

 この痴女メイド、モニカを一体どういうキャラにしたいんだ!?


『そんな事言っておきながら、心の奥底ではまんざらでもなさそうだが?』


 う、うるせぇ。 

 頭の中に響く悪魔の声にツッコミを入れながら俺はゆっくりと立ち上がる。

 まだアレが擦れるたびに耐えがたい痛みを感じるけど……立てないほどじゃない。

 

「まあ、こいつは私が見ておくからモニカはジジィのところに行きな」

「分かったよ。行ってくる」


 モニカは分かりやすく項垂れると、渋々部屋を出ていった。

 それに合わせるように集まっていた使用人達もライムに一礼した後に部屋を出ていく。

 その後、ライムは外の様子を確認した後でモニカのベッドに腰を下ろし、目を閉じて足を組んだ。

 部屋に二人取り残され、お互いの間に沈黙が訪れる。


「さて……」


 数分ほど沈黙が続いたのち、口を開いたのはライムだった。

 ライムは組んだ足を元に戻し両膝に肘を付いて両手の指を絡め、やや前のめりになると目の前にいる俺へ目を向ける。

 な、何だ? おいおい、まさか。本当は可愛いなんて言い出さないよな? ……いいや、あり得ないよな。そんなキャラじゃなさそうだし。


「お嬢様に股間弄られた気分はどうだったよ? セイジさん?」


 そう言ってライムは悪戯な笑みを浮かべて、俺をじっと見つめていた。

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