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最弱職のイレギュラー  作者: 華藤丸也近
第2章 俺以外の“転生者”
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第18話 魔物の技術は侮れない

「これが僕達の住処になります」

「3人が住むにはちと狭いが我慢してくれよ」


 二人に案内された住処は他の住処よりも少しばかり大きめのものだった。

 でも、造りに変わりはないようで、近くで見れば見るほど、その建築技術は魔物とは思えないほどだ。

 遠目ではあまり分からなかったが、その住処の外装にはバナナの葉ように大き目の木の葉が張りつけらている。

 その木の葉は油でも塗っているかのように妙にテカテカとしていて、それが住処を覆い隠すように全体的に張りつけられていた。

 それに、ドーム型を形成しているその住処は泥か何かを固めて造っているようで、内部はドーム型を形成する大元の骨組みが剥き出しになっていた。

 ……凄い、自然のものだけでここまでの建築物を造る事が出来るなんて。初級魔種から一つランクが上がるだけでこんなに違うのか?

 でも、この建築物……雨に降られたら一発で崩れるんじゃないか? 泥で作っていたなら、いくら雨除けで木の葉を敷き詰めたとしても、湿気とかで水分を吸ってしまいそうだけど。


「どうかしました?」


 建物の耐久性に不安を感じていると、カインズが心配そうに声を掛けてきた。

 あんまり人の住処を汁磁路と見るのは良くないよな……第一、一時的に住まわせてもらう立場なんだし。


「いえいえ! 何でもないですよ。これって、カインズとスラングが二人で建てたんですか?」

「まさか、二人では難しいですよ。ここら一帯に住んでいるみんなで造ったんです」

「そうなんですか。それにしても、こんなものが造れるなんて驚きましたよ」

「まあ、人間の建築技術には遠く及ばないですけどね」


 いやいや、自然のものだけでここまでできるのなら十分だと思うけど。

 材料さえあれば木造建築なんて余裕で建設してしまいそうだな。


「ほらほら、そんなところで突っ立ってないで入りなよ」


 住処に着いて早々に中へと入っていたスラングは敷き詰められた木の葉や草の上に座り、石で出来た手作りのナイフで棍棒のようなものを削っているようだった。そのそばには片手で持てるほどの小さな丸太が積まれており、長さはどれも60㎝ほどであった。


「それは何を作ってるんですか?」

「おいおい、他人行儀は止めてくれよ。敬語なんて使われるとなんか落ち着かないじゃないか」

「ご、ごめん。初対面でタメ口だとなんか馴れ馴れしいと思られるんじゃないかって思って……」

「気にすんなよ。そんな事でグチグチ言うほど心の狭い男じゃねぇからな」


 そう言ってスラングは無邪気な笑みを浮かべている。

 なんだか、人と接しているのとあんまり変わりない感じだな……まあ、俺が同じ魔物だから言葉が通じたりして、そう感じているんだろうけど。


「何を作ってんだって話だったな。これはまあ、何の変哲もないただの武器さ」

「やっぱり……棍棒か何かですよね?」

「まあな。今のところ、俺の技術じゃこれくらいが関の山だからよ」

「これでもスラングは武器の製作に関しては群一番なんですよ」

「これでもとか言うなよ」


 でも、確かにスラングはかなり手際が良いみたいで、少しずつ石のナイフで削っては、目の粗い石に擦りつけて無駄な凹凸を削っている。

 迷いなく作業を行っている姿は造り慣れていると言ってもおかしくはないな。作業も適当にやってるようには感じないし。


「ちなみにフェイスは狩りが上手くて、グリブは植物に関しての知識が豊富なんです。食べられるかどうか迷ったらグリブに聞いてみると良いですよ」

「みんな色々と優れたところがあるんですね」


 なんか、この感じ読めたぞ。

 俺、魔物としても地味な立ち位置になるんじゃないか? 別に何か飛びぬけた知識がある訳じゃないし、何かを作れる訳でもないからな……どこ行っても差を感じてしまう。


「そういえば、カインズは何かあるんですか?」

「え? ぼ、僕のは大したことではないですよ? みんなに比べたらそんなに必要な事でもないですから」

「何言ってんだよ。お前が一番優れてるじゃないか」

「い、いや……僕のは単に他より感覚が強いってだけで……」

「その感覚の強さでこいつを見つける事が出来たんだぜ? 謙遜するのは良い事だけど、やり過ぎると逆に嫌味に聞こえちまうぞ?」

「ご、ごめん……」


 スラングはやれやれと言った表情でカインズを諭す。

 感覚が強い? 感覚が強いって何だ? 何か感じやすいって事か?


「僕はその……他よりも耳とか鼻とかが特に利くんです。君を見つけたのも血の匂いを感じ取ったからなんですよ」


 感覚が強いってそういう事だったのか。じゃあ、俺が助けられたのもカインズのおかげでもあるって事か。 

 というか、色々とあって助けてもらったお礼も言えてないな……みんなが集まった時に改めてお礼を言っておかなきゃ。


「そうだったんですか……」

「というか、かなり血の匂いが濃かったんですけど、けがはしていないみたいですね」


 カインズは俺の体をまじまじと見つめて不思議そうに首を傾げている。

 そりゃそうだよな。カインズ達には俺が元々人間で、傷を癒しために仮の姿で今は過ごしているなんて思いもしないだろうし。

 不思議な武器だな。そんな事までできるなんて。魔物をが一撃で倒せたのって、まさかこのためなのか?

 というか、あの武器で魔物を一撃で倒せた理由って、単に吸収していたってだけなのか?


『何を今更……主は今までどういうつもりで我を使ってきたのだ?』

「ひうっ!?」


 急に頭の中に直接声が響いて、俺は驚きのあまり上擦った声が出てしまう。


「どうしたんですか?」

「い、いえいえ! 何でもないです!」


 急に変な声を上げた俺を怪訝に思ったのか、心配そうに声を掛けたカインズ。

 ……急に話しかけてくるなよ。びっくりするじゃないか。


『疑問に答えてやったというのに、その仕打ちがこれか』


 頭に響く声は溜息交じりに言う。かなり呆れているようにも感じた。

 ……話しかける前に名前を呼ぶなり声を掛けてくれよ。


『つまらん事にこだわるのだな。主は』


 つまらなくねぇよ! びっくりするからやめてくれって言ってんの!


『はぁ……仕方あるまい。主の要望通りにしよう』


 頭に響く声は心底面倒臭そうに呟いている。

 なんか、武器にも馬鹿にされてないか!? 

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