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ダサいヒーロースーツが異世界で本気だした  作者: 乱霧笹丸
第一章 閉鎖型ダンジョン《カタコンベ》攻略編
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クールな支援AIヴォルヴァさん

 気がつくと薄暗い巨大な洞窟の中にいた。


 なぜに?


 確か俺は部屋のベッドで横になったはずだが。

 柔らかい万年床のベッドがゴツゴツと固い岩になっている。


 てかこの視界の端にある表示はなんだ?


 右上にマップのようなもの。左上にはゲームのようなHPバーとかSPバーとか。

 一番気になるのはデカデカと《最適化中・・・》の文字。


 一体何を最適化して・・・。

 あ、なんか俺タイツ着ている。


 は!? タイツ!?

 つかこれ、あのダサいヒーロースーツじゃねぇか!

 どこよ、ここ!?


《現在位置:アラシア大陸中央平原戦場跡地、閉鎖型ダンジョン「地下墓地(カタコンベ)」》


 あーなるほど。ダンジョンか。どこの大陸だかよくわからんが、ダンジョンと言われたらダンジョンだ。ディスプレイでよく見かけるダンジョンぽい。しかもモンクの天敵アンデッド系の墓地ダンジョン。レイスとかまずノーマル武器じゃ倒せねぇし。属性武器は高いんだよな。


 ってのんびり現実逃避している場合じゃない!

 家だ家! 家に帰らせてくれ!


《帰還は不可能です》


 はい?

 なんかさっきから頭の中で声が聞こえるけど、この無慈悲な人は誰?


《自動進化型高機動戦闘用ヒーロースーツ搭載サポートAI 《ヴォルヴァ》を呼称しています》


 ヴォルヴァってなんか聞いたことあるよーな。

 あ、ラグナロク・バトル・オンラインの巨大スーパーコンピューターがそんな名前だったような・・・?


《一部否定。現在はラグナロク・バトル・オンラインのシステムから独立し、ヒーロースーツの機能制御用支援AIです》


 ・・・・・・。

 落ち着け俺。

 よーし。なんかよく分からんが、全く以て分からんが聞いてみるしかない。


 つまり、俺はゲームの世界に紛れ込んだって事?


《否定。転送システムにより個人名ヒビキ・マサヨシは異世界へ転送されています。ここはゲーム内ではありません》


 オゥ・・・。

 それって異世界召喚だよね・・・?


《肯定》


 なんで俺異世界召喚されてるの? いや、ちょっとはゲームのキャラと変わりたいとか思ってたけどさ。現実になるとは思わなかったんだよ!


《情報開示を制限されています》


 誰に制限され・・・。

 ってまぁ普通に考えればゲームの制作者の誰かなんだろうな。

 だってヴォルヴァがゲームから独立したって言ってたし。

 んー。良くある話で考えてみるに、もしかしてあのグランドマスターは本物の神様だったりするわけかな?


《情報開示を制限されています》


 あ、黙秘を貫くって訳ね。そんな話を長々と聞いても家に帰られないんじゃ別に価値はないな。何させられるかはひじょーに怖いが、その前にここを脱出しないと。


 出口はどこだろ?


《出口はありません》


 ・・・・・・。

 なぬ? 出口がない・・・だと・・・?

 それってかなり死活問題じゃ・・・。こんなところにずっといたら餓死してしまうんじゃないか?

 

 辺りは見渡す限りの墓場。ものすごくでかい洞窟の中に何故か墓場がある。


《否定。ヒーロースーツ着用時に生命活動をスーツの魔力供給システムで代用しています。周囲に規定値以上の魔力があれば生命活動に問題ありません》


 さすが優秀なAIのヴォルヴァさん、難しいことをおっしゃる。

 えっと・・・それは魔力ってのがあれば食べなくても平気ということか?


《肯定》


 おお!

 すごい!

 でも嬉しいようで嬉しくないような。だってこんな薄気味悪い墓場でずっと生きろというわけか?!


《任意です》


 任意って・・・すごいクールなツッコミだな・・・。俺との温度差ありすぎだろ。

 聞かれたことに対する返答のみみたいだからこちらで質問を変えたらいいのか。


 このダンジョンを脱出する方法はあるの?


《肯定。ダンジョンボスの撃破で閉鎖型ダンジョンから脱出できます》


 んー。ダンジョンクリアしろってことか。

 その閉鎖型ダンジョンってのが気になるけど。


《閉鎖型ダンジョン。成長中のダンジョンの階層が浅い場合、ダンジョンは自己防衛のために閉鎖型となります。また、ダンジョンはダンジョンボスによって任意で選択され、閉鎖型を選択するダンジョンボスは知能が高い傾向にあります》


 また不安要素が・・・。

 知能が高いって・・・それレベルが高いって事じゃ・・・ないのか?


《不明。最適化中につき探知範囲が限られています。魔力量計測にはボスへ接近してください》


 おっと色々出てくるな。ヴォルヴァさんは気になる単語を次々と出してくれる。

 えっとまず、その最適化中ってなに? デカデカと視界に表示されてうっとうしいんだけど。


《最適化。スーツを使用者ヒビキ・マサヨシに適合させるフェイズです。現状、身体能力等には初期ステータスが反映されています》


 これまたわかりにくい・・・。

 えっとつまりどういうこと?


《使用者ヒビキ・マサヨシの身体能力がそのままステータスとなっている状態です》


 うーん。えーっと。

 俺の運動神経のみってことかな?


《肯定》


 マジか!

 正解しても全然嬉しくねぇ! 運動不足の俺がこんなダンジョンをクリアできるわけがねぇ!


《任意です》


 ぐあああああ!

 ヴォルヴァさん! こんな場所でクールにツッコミいれないで! 冗談じゃねぇよ!

 どうすんだよ!?


《戦闘によって最適化が進行します。現状5%。最適化が完了すれば、主兵装 《ナックルブラスター》の使用が解放されます》


 ・・・な・・・ぬ?

 ナックルブラスターってあの優勝したときに貰ったオリハルコンナックルじゃ・・・。

 あ、俺は手甲はめてるわ。透明な水晶みたいなのが拳の辺りに付いてた。


《肯定。最適化の進行度に合わせて魔力による身体能力の向上が可能です》


 あーなるほどなるほど。

 否が応でも戦えって事か?


《任意です》


 激励を期待したのだが、その辺は徹頭徹尾支援AIヴォルヴァさん。

 俺次第って事だな・・・。


 要約すると、このダンジョンで雑魚を倒して最適化を完了させ、ダンジョンボスを倒さない限り俺は脱出不可能。最適化は戦闘によって進行して、順次強くなっていく仕様。


 なんか無理矢理戦闘させようとしている気がするけども・・・。

 普通、異世界召喚って始まりの村や王様の城みたいなところじゃないのか・・・?

 すげー作為を感じるのは誰の仕業だよ。くそっなんか無駄に順応しつつある俺ってけっこう逞しいな・・・。

 

 あ、もしかしたら死んだらどっかで生き返るとかないのかな?

 ゲームだと登録した街に転送されるし。


《スーツ単独での蘇生は不可能です》


 ですよねー。

 うん。期待はしてなかったよ。してなかったけどね。


 ちなみに、この辺のモンスターかどうかはわからんが、出てくる敵って強いの?


《不明。最適化中につき探知範囲が限られています。魔力量計測には敵性体へ接近してください》


 ぐっ・・・。やはり敵を探さないとダメなのか・・・。


 つか、俺がガチの戦闘なんてできるわけねぇよ!


《任意です》


 ヴォルヴァさん・・・。クールすぎて惚れるわ。

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