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message 3 バーサス・メテオーラ(後)

 一台のメテオーラマシン積載運搬車輛、ドックビークル。

 テラシーレイド入隊志願者が少ないと思われている現代。それもそのはず、山賊がメテオーラを売るのに、志願者の持ち運ぶハンドメイドを狙ってるから、志願者は減る一方だ。

 山賊の一派、マダントライブは、メテオーラシーフグループ協会では優位に置く存在。組織内のチンピラ風情は下の下だが、レギュラー陣は優秀揃いである。

 ここの年配の婦女もその秀逸な人材だ。

 ゼワル・ルシルックは、トライブの一人目の入隊者で、トップである。その愛弟子扱いにされているのが、エナム・レアースだった。


 リンクシーたちは、一ヶ所に固まらず、分散して山賊駆除に徹底した。

 ハンドブローを片手に一人の女スパイを捕捉したリンクシー。


「そこまでだ。大人しく、ゆっくり手を挙げて振り向け‼」


 ハンドブローの発弾ホルダーが解除する音がカチカチと鳴った。


 振り向き様、エナム少女の華奢な細足がまっすぐ伸び、片足蹴りをお見舞いした。


「てやっ‼」


「おおっと。これじゃ、男はやれないな。おたくさ、パンツ丸見えだよ」


 すかさず回避したリンクシー。エナムの行動の一つひとつが読み取れるほど甘くはない。

 ハンドブローの銃口が彼女の頭部に接触した。


「チェックメイトだ。大人しく武装を解いて一昨日来な」


 物陰でエナムの行動を見遣ったゼワル。


「無様だな、なあ、エナム。そいつの首なんか斬っとけ。どうせ棄てるためのコマだからな」


 ゼワルは計画のためには手段を選ばない。エナムを見棄てて姿を現したのだ。


「お前が親玉……か?」


 リンクシーの指先に引き金はかかっていないことを確認したエナム。ゼワルに気を捕らえている隙を狙って青年の足を蹴っ飛ばした。


「悪いけど、やぁっ‼」


 体勢を崩したリンクシー。引き金にかかった指が的以外の箇所を誤発砲した。


「上達したね、小娘がー」


「うるさいよ、初代の先輩」


「一芝居はそちらが上だったが、勝つのはわたしだよ。これがあればだがな‼」


 懐から出した自動起動リモコンでゼワル専用のメテオーラが出撃してきた。


「ふふふ……このマシンで対戦しようかい? ぼうや‼」


「なっ……にい!? マシン出すとは……卑怯千万だろう」


 ボーッと立ち尽くしたエナムの華奢な全身を羽交い締めしたセルトだった。


「へん、こっちも人質取ったぜ」


「馬鹿っ……変なとこ触るな、スケベ‼」


「るせえよ、山賊‼ ホラよ、リンクシー。メリアウスのリモコンだ」


 起動リモコンを受け取ったリンクシーは、早速ドックコンテナに急いだ。


 コンテナセットクロークが機体背面を持ち上げた。リモコン操作でパイロットの全身を機体の手で掬い上げてコックピットまで運んでいった。

 シートに着いたリンクシーは、コックピットショックカバーを閉じて、メテオーラ・メリアウスを立ち上げた。


「動けよ、メテオーラ。んなろー‼」


 コンテナから降りたメテオーラ、ゼワル専用機との対峙は緊迫した。


「そう来ないとね、ぼうや‼」


「腕ためしに投げ技で挑む‼ 行けっ、メリアウス‼」


 ボクシングのファイティングポーズを構えたメリアウス、シャドウボクシングみたいにトレーニングをしはじめた。


「ふん……格好だけでは性能は……引き出せないのよ、ぼうやのメテオーラはぁ‼」


「おたく……ごちゃごちゃうるさいね。んなろー‼」


 見せかけのパンチの振りで攻めて、メリアウスの片脚をゼワル専用機に引っ掻けたのだった。

 体勢崩したその機体は持ち上げることが出来ない。


「しまった。あたしの専用機……スプリングワイヤーが緩んでたわ。形勢不利ってヤツか。一昨日来てやる。覚悟しな‼」


 ゼワルはコックピットから降りてきて、アジトのあるルートを通って撤退していった。


「いつまで、羽交い締めしてんのよ、スケベ‼」


 エナムは、セルトのムスコ目掛けて股間に踵落としみたいに打ち砕いた。


「あへ~‼」


「変なとこ蹴った? あはは」


 気絶のセルトをそのまま見送り、逃げたゼワルを追いかけていった、エナム。


「いつでも襲ってくるからね。首洗って待ってなよ!」


 少女の捨てゼリフが聞こえたのか、リンクシーは彼女に受け答えた。


「君……名前は? 僕はリンクシー・グゼス」


 早足の華奢な少女が一旦立ち止まる。振り返り、


「あたしは……エナム・レアース」


 ふたたび早足で逃げ去って行く小さな影。


 二人の青年たちは、ただ……そう、ただ盗賊を見送ってしまったのだった。



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