message 1旅立つメテオーラ
第9人工遊星、サーラフ。
サーラフ人のリンクシー・グゼス。彼は、姉が姿を酷似するサイバネティックスハート端末で動いてるサイハートドールではないのかと疑問に抱いていた。
行方不明の実姉のアーサフェイ・イレイサを探すための仲間を連れ込み、銀河系責任者のテラシーデラセルとの接触を試みることに計画を立てたのだ。
サイハート(サイバネティックスハート端末の略称)の詳細の唯一の知識者、テラシーデラセル。サイハートの名は銀河系じゅうにばら蒔かれているというのにも関わらず、その詳細は知らされていない。
だから、アーサフェイの行方を知る手立てに、リンクシー・グゼスはテラシーデラセルを訪ねるための近道で、テラシーレイドという戦隊に加わることを決心したというのだ。
リンクシーは祖母の姓を、アーサフェイは父系の姓を利用していた。
第3次メテオーラ戦時に巻き込まれて戦災死した両親のためにも、テラシーレイド入隊志願は変わらない。
とにもかくにも……だ。リンクシーの一本気の意志はテラシーデラセルを目指しているのは間違いないのだ。
リンクシーの仲間、ローケアダ・セルト。セルトは、彼専用ハンドメイドのグラップルマシン・メテオーラのメリアウスを搭載した車輛『ドックビークル』を運転している。
メリアウス試験操縦済みのリンクシーは、2回以上はコックピットには入ったことはない。
テラシーレイド・サーラフ支部入隊試験会場の道程は、まだまだ遠いが、そのルートコース沿いを塞ぐ輩が突如、現れてきた。恐らくは、新型ハンドメイドのメテオーラ狙いの『競売品狩り』 の連中と見受けられる。
「競売品積んでるのは判ってるんだ。さっさと停まらないと撃つぞ‼」
連中の雑魚一人がしゃしゃり出てきたのだ。
「俺が造ったハンドメイドを競売にかけるチンピラめ、とっちめてやる。このセルト様がメリアウス駆って追い出してやるぜ」
「待ちなよ、僕が行く」
「ドックビークルを頼むぞ」
「運転は自動切替にセッティングした。僕と代わるんだ、セルト‼」
「しかしな……」
「技術と性能は僕の方がセンスは合っている。きっとメリアウスは僕を認めているさ」
「なら……おたくが責任持ちな。俺は知らねえぞ」
「メリアウスの試験発砲、試してみせるさ」
山賊の狩人の仲間一人が、ラウンドレーザーフレアーで爆撃かけた。
幸いドックビークルを掠めただけで、その時の粉塵の煙が消えると、一体のメテオーラマシンが地上に立ち上がったのだった。
「なっ‼ 軍隊に売りつけると思われる機体を動かしたぞ‼ おいらは知らねえぞ‼ キズついたマシンは値がつかねえと聞くぞ。罰当たりが!?」
しかし、粉塵の中でもマシンは無傷だった。全身青のオフホワイトで諸処強甲パーツがエメラルドグリーンのメテオーラは、躊躇なくテスト放射を執行してみせた。
威嚇してみせたが、その一波は発弾砲身にヒットしたのだ。
「ひいいいっ‼ 勘弁して~‼」
手ぶらの丸腰で山賊の仲間は撤退していった。
まだマシンの乗り手は息が荒くなった。初乗りもその次のチューンアップの時も息が詰まるほどに興奮したものだ。
リンクシーにはマシンは荷が重かったに違いない。
「はぁ……はぁはぁ……ああ、ああ~‼ 又か。 メリアウス。君とは、相性が悪いのかも知れない。乗れば乗るほど、反吐が出てくる。……ホント、情けないな、僕は」
リンクシー青年はコックピットを降りて、外の空気を思いきり吸ったり吐いたりして気分を解消させた。