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少女の秘密

 人間と亜人の違いは数多存在するが、国の概念も大きく違う。


 人間の国は大まかに言えば10年前に北の帝国に滅ぼされた西の大国を含め、大陸東側の土地に東西南北それぞれに力を持つ大国が存在し、それを中心として多数の小国が存在している。

 因みに北の帝国によって滅ぼされた西のヴァンデンバーグ王国こそ、ブラドやカイン達の故郷であった。


 話を戻すが亜人達にとっての国というものは、大陸西側の広大な土地の中で中央国それのみである。

 亜人には人間と違い多種多様な種族が存在し、そのどれもが生活環境などが異なる。

 その為亜人は基本的に種族間で大小様々な集落を作り、その集落間でやりとりをして暮らす。


 そんな亜人が年に一度、各集落の代表が集まって会議を行う場所が中央国と言われている。


 この中央国は一説によれば、フィルシー大迷宮都市よりも昔から存在すると言われるほどに歴史ある国だ。

 年に一度の会議で様々な亜人が集まる事を除けば、この国にはある種族とそれを守る他種族の選び抜かれた者しか暮らしていない。


 神が始めに造られた5人の「始まりの人」。

 その内の1人が亜人の祖であり、現在存在する亜人の先祖達はその人物をベースに神が作り出したとされる。


 その中でも亜人の祖の特性を特に受け継いだ種族が「ハイエルフ」、亜人達の主君であり中央国で暮らす種族である。

 祖の現し身とも呼ばれるハイエルフを亜人達は種族関係なく特別視する。

 ある種、盲目的な信仰の対象と言って良いほどに。


 ここ千年、人間と亜人の間で大きな戦いこそ無かったものの、その関係は決して良いものでは無い。  フィルシー大迷宮都市の様に人間と亜人が共存している土地が寧ろ異質なのだ。

 本来であれば人間が亜人の土地に入り込む事自体好まない傾向にある。


 ましてや亜人達が特別視するハイエルフの暮らす中央国となると、亜人達全体に喧嘩を売る行為と変わらない。

 十年間寝たきりで世間に疎いカインですら知っている事実であった。


「ブラド正気か? カルカンと戦った時に頭打ったんじゃねえか、てめえ!」


 3人の老人達の中唯一の亜人であるヨウムが、あからさまに敵意を剥き出しにしてブラドを睨み付けた。

 何時もの飄々とした雰囲気は無く、まるで敵を見るかの如き視線をブラドに送っている。

 横にいる二人の老人はそれが当然とばかりに一切動揺せずに見守っていた。


「別に頭がおかしくなったわけじゃ無い。まあそう思われても仕方ないがな」


 その視線を受け流しつつブラドは続けた。


「だが実際問題それ以外に何か手があるとでも言うのか、ヨウム?」

「そんなもんこの都市で守りゃあ良いだろうが?」

「どれだけ魔神がいるかも分からないのにか? 」


 ブラドの問いにヨウムが口ごもる。


「確かにここには腕利きの探索者が沢山いるが、帝国軍と魔神を相手にネイを守り切れるかと言ったら少々不安だ。何よりここにいるって事がバレてるのは致命的だろ」

「しかしまず中央国に行けると思ってんのか? 万が一行けたとしてもネイちゃんの事情を話す事になるぞ。そうなったら……」

「まあ戦争だろうな。しかし魔神と組んでるって時点で遅かれ早かれ、それは避けられんだろ?」


 ヨウムが完全に黙る。

 そこでカインが口を開いた。


「すいません、あのー。話について行けないんですが、それがどう中央国に行くって理由になるんですか?」

「そう言えば今度話すって行ってたか。出来ればお前にも手伝って貰いたいから話そうか。因みにこの事はこの場にいる奴しか教えてない事だから口にするなよ」


 ブラドの真剣な口調にカインは頭を縦に振った。


「前に話してただろ、亜人の姫が消えたって話とネイが帝国と根深い関係にあるって」

「はい。それが一体?」

「多分気付いてはいると思うが、ネイはハーフだ。攫われたハイエルフの姫と帝国の皇帝ガイウス・サリートスとの間に出来たな」


 ヨウムの歯ぎしりがハッキリと聞こえる。

 理解出来ていない顔をするカインを放っておいて、ブラドの話が続く。


「ネイに初めて出会ったのは12年前だ。俺は当時出掛けててその場に立ち会ってはいないが、俺の育て親であるババアがある女性から託されたと聞いている。ちょうど帝国が龍王の一体に襲撃されてバタバタしてた頃だ。その女性が死ぬ間際言ってたそうだよ、自分が攫われた姫だと。」

「で、でもそれはその女性の嘘かもしれないでしょう? 何か確証があるんですか?」


 ブラドが少し押し黙り、また会話を続けた。


「ババアの話じゃ女を見つけた時は長い距離を走ってきたのか見た目も衣服もボロボロで死にかけ、それでも一目で高貴な存在と分かったと言っていた。しかし確かにお前の言う事ももっともだ、何も間違っちゃいない。ただな、ネイに付いている精霊が問題だ」

「精霊ですか? それはあの時のネイちゃんの力と関係があるって考えて良いんですよね?」

「その通りだ。ところでカイン、お前ハーフについては知ってるか?」


 少し考えてからカインが口を開いた。


「えっと人間と亜人の間に生まれた子供ですよね? 確か迫害されてるって聞きましたが……」

「まあそうだ。因みに迫害される理由って知ってるか?」

「すいません、知らないです」

「まあ予想はしてたから気にするな。理由を言うと一つは人間と亜人の関係故だ。この都市は特殊だが一般的には仲が良くない。これはまあどっちも自分達の方が優秀だとか、神によって創られた順番だとか色々訳があるんだがな。ハーフの人々はそう言った連中から汚れた血だと言われるわけだ」


 一旦話すのを止め、間を開けてブラドが続ける。


「ネイの場合はもう一つの方と関係がある。ハーフには希にとんでもなく強い奴が生まれると言われている、確率は低いがな。人間と亜人、その両方の良いところを受け継いだ奴の事だ。迫害の対象となっている存在が自分達より遥かに強い力を持つんだ、怖くてより迫害が酷くなるって寸法だ」

「それとネイちゃんに何の関係が?」

「カイン、流石に聞くのは野暮かもしれんが歴史上人間と亜種を纏め上げた存在を知ってるか?」

「確か『尊きの君』でしたっけ?」


 ブラドが安堵のため息をつく。


「流石に知ってたか。その通り、尊きの君と呼ばれたサティー・サイルパラームだけが歴史上、唯一人間と亜人を纏め上げたと言われている。で、重要なのは尊きの君もハーフと言われているんだ」


 カインが段々と混乱していくのを尻目に、話は続く。


「尊きの君が生まれた時代は、今より更に人間と亜人の諍いは激しかったという。それこそ絶え間なく戦争が続くほどにな。それを止めるために生まれたのが尊きの君と言われている。和平のために人間と亜人、双方から祖の血を引く者が選ばれ、そして結ばれて子を産み、その子を和平の象徴とするために」


 ブラドが一つため息を吐く。


「尊きの君は祖の血を引く人間と亜人2人の優れた特徴を継承した。人間の成長する魂、それに亜人の類い希なる肉体。そんな最上級とも言える彼女に目を付けた精霊がいた」


 カインは何も言わずブラドの話を聞いている。


「残念な事にその精霊について情報は殆ど残ってはいない。非常に強力な精霊だったという事と、多少の特徴を除いては」


 少し押し黙ってからブラドが話を再開する。


「でだ、その多少の特徴ってのがネイの力とよく似てるって訳だ」




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