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再会?

 カインは睨まれているにも関わらず、その少女に見惚れていた。


 息をのむほどの美少女とまでは言えないが、それでも誰が見ても美少女と口を揃えるほどには整った顔をしている。

 腰より少し上まで伸びた艶やかな黒髪は後ろで無造作に結ばれているにも関わらず、日の光を浴びて美しく煌めいている。


 そして何よりその瞳にカインは惹かれていた。

 黒い宝石の如く輝く瞳はカインを睨んでいてなお、その美しさを損なってはいなかった。


 ただ初めて会ったはずなのにも関わらず、どこかで会った事がある様な気がしていた。

 その不思議な感覚にカインが悩んでいると、無視されていると思ったのか少女は苛立ったかのように口を開く。


「ねえちょっと。あまり言いたくないけどその大きい図体で狭い路地を防がれてちゃ、あたし通れないのよ」


 そう少女に言われて慌てて端の方へ寄り小さくなって下を向くカイン。残念な事に元が大きいので余り小さくなってない。

 すると少女がより一層不機嫌な声でカインに話しかけた。


「あんた喧嘩売ってんの? 何してんのって聞いてんの、馬鹿みたいに縮こまれなんて一言も言ってないわよ」


 その見た目に似合わず少々口が悪い様だ。

 そんなことを思いながらカインは何とか口を開く。


「えっと、あの。初めてこの都市に来たんですけど、ち、ちょっとハプニングで道が分からなくなっちゃって……」


 そう言ってカインは下を向きながら、こんな状況で変なことを考えていた。

 カインは他人とまともに話せないが、異性相手となるとより一層話せなくなるのに目の前の少女と意外とまともに話せたことに驚いていた。

 すると呆れたような少女の声が返ってくる。


「何あんた、道が分からなくなったってだけで丸まってたの? バッカじゃ無い」


 言い方は悪いもののその通りなので何も言い返せないカイン。すると女の子のため息が聞こえてきてより一層身体を縮こませる。


「で、どこに行きたいのよあんたは?」

「え……?」


 意外な言葉にカインの口からは間抜けな声が出た。


「え? じゃなくてどこに行きたいかって言ってんの。それと何時までも小さくなってないでしゃきっとしなさい。人と話すときは相手の顔を見ろって親に教わらなかったの?」


 キツい言い方ではあるが、どうやら意外と優しいのでは無いかとカインは思った。

 逆らうと余計に機嫌を損ないそうに感じたカインは慌てて少女の言うとおり立ち上がった。


 カインと少女の身長差は30センチはあるだろうか。彼女は上を見上げ、その意志の強そうな瞳で少し睨みながら口を開いた。


「ほら、さっさと行きたい場所言いなさいよ。どうにかしてあげるから」


 そこまで言われてカインは気づいた、自分が追われている可能性があることを。

 教えてもらいたい、でも捕まる可能性がある、でも何か言わなくちゃ目の前の少女に怒られそう……。そんなことを考えているとカインはどう話せば良いか分からなくなってしまった。


「ああーもう! なんなの、いい年して行きたい場所も言えないのあんたは!」


 少女は不機嫌を通り越して怒り出してしまった。

 どうして良いか分からず、どのみちこのままではどうしようも無い様に思えたカインはややあってから話し出した。


「すいません。えっと、二人の女神亭って所に行きたいんですが場所お知りでしょうか?」

「……」


 ちゃんと話せたことに内心喜ぶカインであったが、どうにも少女の雰囲気がおかしい。

 先ほど怒っていた時とは違い、その気配に敵意の様なものをカインは感じていた。


「あの、どうしたんでしょうか?」

「んんー、場所は知ってるわ。で、あんたそこにどういう理由があって行きたいの?」


 そんな事を聞かれると思っていなかったカインは口ごもる。

 少女の質問が少し気になったものの、道を教えて貰うのだからとカインは正直に、そして言える範囲で答えた。


「人捜しです。祖父の知り合いがそこにいると聞いて尋ねに来たんです」

「祖父の知り合い? …………!」


 少女は少し考える様な表情をした後、驚いた様子でカインに尋ねてきた。


「ねえ、あなた何て名前なの?」


 見ず知らずの少女に名前を教えるのは少々抵抗を感じたカインではあったが、道を教えてもらう為に自身の名を告げた。


「カイン、カイン・ビッグゲートです」


 名を告げた途端、機嫌の悪そうだった少女の顔は笑顔に変わる。


「ホントにホントにカイン君なの!? 私よ。ライラよ、覚えてない? 昔何度か遊んだことがあるけど」

「御免なさい、覚えてないです……」


 どうも自分のことをライラと名乗った少女は、カインの知り合いのようだがカインは覚えていなかった。

 馬鹿正直にカインが覚えていないというと、


「痛い!?」


 少女の鋭い蹴りがカインの脚を襲う。咄嗟のことで何が何だか分からなくなるカインであったが、


「い、いきなり何するんですか?」

「……知らない!」


 カインの問いかけは一蹴された。


※※※※※※


 ズンズンと足音荒くライラが進んでいく。

 そしてカインは怯えたように、ライラの黒く長い髪を追って後ろをついて歩いていた。


 どうも先ほどの会話が終わってからライラが纏っていた敵意のようなものは感じなくなっていたが、それ以上に不機嫌さがビシビシと伝わってくる。

 ご機嫌取りに荷物を持ちましょうかとカインが聞きはしたが、無視された。


 何を間違ったのか分からずに着いていくのはなかなか辛いもので、カインは自身の胃が痛みを発するのを感じた。

 痛みに耐えながら歩いていると、不意にライラが話しかけてきた。


「ねえ、ホントに覚えてないの、あたしのこと? 小さい頃遊んだのに……」


 凄く悲しそうな声だった。何だか悪いことをしたような気持ちになってカインが答える。


「……訳あって小さかった頃の記憶が無いんです。御免なさい、気分を損なわしちゃって」


 だが付け加えて言った。


「でも、今更かと言われそうですがライラさんのことはどこかで見たような気がしてました」


 そう言ってから暫くどちらも話さない時間が続く。

 突然ライラが持っていた荷物をカインに向けた。


「代わりに持ってくれるんでしょ?」

「え。あっ、はい!」


 カインの方を振り向いたライラの顔は嬉しさと少しの罪悪感が混ざったような、とても綺麗な顔だった。

 見惚れて反応が遅れたカインだったが、無事荷物を受け取りまたも両者とも無言で脚を進め始めた。


※※※※※※


 荷物を受け取り歩くこと数分。あれから両者の間に会話は無かった。

 気づけば未だに路地ではあるが、道は先ほどに比べ広くなっている。

 大通りに近いのか人々が発する声や物音がはっきりと聞こえるようになっていた。


「着いたわよ、ここが目的地」


 カインの目の前にはお世辞にも大きいとは言えない木製の建物が建っていた。

 現在は昼を少し過ぎたくらいだが、店内からは酒に酔ったものと思われる笑い声や大声が漏れ出している。


 ライラが扉を開く。

 小さい店内は酔っ払った人間と亜人でごった返していた。


「また昼間から馬鹿騒ぎして」


 ライラの呆れたような声は酔っ払いの大声で殆どの人には聞こえていないようだった。


「荷物置きに行くからあそこの空いている席で座ってて」


 そう言ってライラはカインが持っていた荷物を取って、空いているカウンター席を指さしそのまま店の奥へと小走りで去って行った。

 目的の場所に辿り着けた事で気合いを入れ直すカイン。

 人は多いがどうにかパニックにならずに済んだ様だ。


 とはいえ、どうして良いか分からずとにかくカインはライラに言われた通りに空いている席に腰を下ろした。

 どうにも周りの目線が自分に注がれているような気がして落ち着かないでいた。


「あいつ誰だ? ライラと一緒に入って来たぞ」

「見かけねえ格好だな、それに何か変な感じがする」

「うーん、ライラにも遂に春が来たか?」

「お、俺は認めねえぞ!」


 視線以外にも囁き声がカインの耳に入ってくる。何か変な事を言っている気もするが、気のせいだろうとカインは心を無にしようと努めた。すると、


「おい、お前何もんだ?」


 後ろから機嫌が悪そうに声をかけられカインが振り向くと、そこには大男が額に青筋を立てて仁王立ちしていた。

 カインより大きな身体に赤黒い肌、額から出た2本の角。話に聞いたことがあるオーガ族そのままの男がカインに話しかける。


「てめえ、ライラの何だ? 何か下心があって近づいたって言うなら容赦しねえぞ!」


 そう言って唸るように口を歪ませる。

 自身より大きな、顔の怖い男に睨まれ心の中で悲鳴を上げるカイン。


 いきなりの事に何が何だか分からなくなる。

 分かる事と言えば目の前のオーガ族の男が非常に怒っていることと、何か勘違いしている様だと言うことだけ。


「いいいいいい、いえ。ま、迷子になってるところをた、助けて貰っただけでしゅ」

「迷子~、なんだそりゃ?」


 男はカインを変な目で見てくるが、どうやら馬鹿だと思ったのか雰囲気が少し丸くなる。

 すると、


「あれ? 何かあいつさっき憲兵の奴らが言ってたお尋ね者に似てねえか?」

「そういや似てるな……」

「他人の空似って奴じゃねえのか?」

「でも人間であんなでかい奴そういねえぞ? それに魔力を感じないっておかしな点もそのままだぞ」


 等々、店内から小声が漏れ聞こえてくる。

 そしてその小声が聞こえてくるたびに目の前の大男の表情がとんでもない事になっていく。

 赤黒かった皮膚の色はどす黒く、額に浮かんだ青筋は切れるんじゃ無いかと不安になる程浮き出ていた。


 カインの全身に嫌な汗が堰を切ったかの様に流れ出す。

 そして小声が消えたと思った瞬間、店内全ての視線がカインに集まったのを肌で感じた。



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