2.追手
どうやら私が突然目の前に現れ止まれずそのまま突っ込んでしまったらしい。
「すまない。どう考えても私の方に非があるな」
腰を折って謝ると少女は慌てて手を勢いよく振った。
「いえ、森の中を走っていた私の悪いですし…」
私はふと気になったことがあった。
「そういえば、どうして森の中を急いで走っていたんだ」
「それは…」
少女が何かを言いかけようとしたその時だった。
「いたぞ!こっちだ!!」
それは幸たちが立っている場所から数百キロも先にいる男から発せられた。その声は低く怒気が混じった声であった。
男は仲間と思われるもう一人の男を呼びこちらへと走って来る。
(この世界に来たばかりだから私のことを言っているのではないのだろう)
幸はこの場にいるもう一人の方へと顔を向けた。すると少女の顔色をみるみる青くなり今にでも倒れそうなくらい青くなった。
その間にも声と男たちの足音がこちらへとどんどん近づいてくる。
幸は地面に落ちている自分の荷物の一つである黒い袋を引っ張り出し中から幸の背丈の半分くらいの棒を出し、それを走って来る男たちの方へ向けた。
男たちは手に持っていた銀色に光っているものをちらつかせながら走って来る。
銀色に光っていたのは太陽の光で反射していた剣だった。
(本物なのかあれは)
幸は疑問に思ったがすぐにその考えを心の奥底にしまった。今は目の前の奴らに集中しなくては。
一度深呼吸をし心を落ち着かせた。
(考えることなら後からでも出来る)
男たちの方へ眼を向けると数百キロ先まで迫っていた。
幸は慌てることなくそれを構えなおし男たちの方へ一歩踏み出した。