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初恋リア充  作者: 執事
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章子~怒り~

木絵このえ、待って」

帰ろうとしている木絵に私(章子、しょうこ)は声をかけた。教室の後ろから木絵の席まで遠いから声が大きくなってしまう。

「チッ」

隣で舌打ちをする音が聞こえた。私は、隣の席の大和やまとに、

「うるさくてすみませんね」

と、思いっっ切り嫌みをこめて言った。

「自覚があるならやめてくれる?あぁ、人の話を聞かない人に言っても無駄か」

うわー、ホンットにむかつく。

「別に故意に聞かなかったわけじゃないよ。大和さんの挨拶が面白いっていうか不思議?だったから章子に聞いてただけだよ。別に聞きたくなかったらずっと話してたよ」

木絵が私のところへ来ながら言った。

「面白い?不思議?どこが」

大和が少し怒ったかんじの声で木絵に話しかけた。

「“初めてお目にかかります”、“お目にかかれて光栄でございます”。こんなに丁寧な挨拶する人初めて見たから章子に、何であんなに丁寧な挨拶をするのかって、聞いただけだよ。人の話の途中で声かけるのは悪いって分かってたけど気になってしょうがなかったから」

何か少し違うような…木絵が聞いてきたのって、言葉の意味だよね?まぁ、似てるからいいのかな…

「章子!」

「わっ!」

私は急に大声で呼ばれて驚きのあまり大きな声を出してしまった。

「ずっと呼んでたのに。集中すると周りの音聞こえなくなるヤツ、治したほうがいいよ」

「そう言われても…好きでこうなったわけじゃ無いし」

「で、何考えてたの。どうせ、大和さんに説明した言葉と聞いてきた言葉が違うって思ってたんでしょ」

あはは、バレてる。

私は、正直に小さく頷いた。

「やっぱりね。まぁ、いいけど。それより帰るよ。夏休みの宿題のテストがあるから勉強しないと」

あーイヤなこと思い出しちゃった。テストかー。

「ふーん、君って“しょうこ”って名前なんだ。どういう字?」

へ?何でそんなこと聞くの?

「えっと、それって絶対答えないとダメ?」

大和は大きく頷く。

「文章の“章”に子供の“子”」

「章子の隣にいる子は?」

「木絵。大木の“木”に絵描きの“絵”で木絵」

私は大和に説明しながら木絵を見た。何でこんなこと聞くの?と、木絵に目で聞くつもりだったからだ。すると、木絵も私が言いたいことが分かったようで、首をかしげた。

「名字は?章子は“藤原ふじわら”でしょ?木絵は?」

いきなり呼び捨てかよって思ったけど、口には出さなかった。特に不快な思いをしているわけでは無かったからだ。

たいら

木絵は不機嫌そうに答えた。

さっきまで私たちをバカにしてたのに急に何言ってんの、って顔だ。木絵は感情が顔に出やすいタイプだからすぐに分かる。

「ふーん。じゃあ、あそこで俺を睨んでる男子は?」

大和は教室の前の扉を指差した。確かに男子が1人こちらを睨んでいる。

「あの子は1年の“源倭王(みなもとの(呼ぶときは、みなもとって、呼ぶよ)やまと)”サッカー部でレギュラー。この学校じゃ有名人だよ」

「有名人?」

木絵の説明に大和が首をかしげた。

「そう、有名人。運動良いし、何よりチームのことを考えてるんだよ。チームメートのプレー中の癖とかでパスを変えてるんだって。それに頭も良い。学年だと結構いいところにいるみたいだよ。優しいし、ルックスも良いしで女子から大人気」

私たちの学校はテストの順位発表が無いから噂で大体の順位を予想するんだ。

「倭王は私たちと同じ地区だから結構仲が良いんだよ」

「ふーん」

木絵の説明を興味無さそうに聞いている大和。木絵はそれほど不快に思っていないらしく、

「章子、速く帰ろ」

と、言ってきた。私は頷いてかばんを背負った。


校門の前で源さんが待っていた。何となく大和と雰囲気が似てるなぁ。で、その隣には何故か大和が立っていた。

「木絵…センパイ、章子センパイ、一緒に帰ってもいいですか?」

まだ変声期まえの高い声。これがとっても可愛いんですよ。

「もちろん。それより…なんで徳川さんがここに居るの?教室に居たでしょ?」

「俺の靴箱まだ無くってさ。だから先生の使う玄関から出たんだ」

しっかし、速いなぁ。

「お前ら足遅いな。というより、歩くの遅いな」

あー、そーですか。そーですとも。私たちは歩くのが遅いですよ。

「それはそれは。遅くてすみませんねぇ。木絵、源さん帰るよ」

私はそう言って先に校門を出て、右に曲がった。

「章子センパイ。俺のことは倭王で結構です。木絵…センパイもそう呼んでるんで」

「あ、うん。ごめんね、倭王。倭王も私たちのことはいつも通りでいいよ。ね、木絵」

「そうだね。それに私たちだけだし」

「何が?」

大和が話しに入ってきた。

「地区で中学生は私たちだけなの」

私は投げやりに答えた。

「じゃあその仲に俺も入ってるな。俺も章子たちと同じ地区だから」

うわっ。最悪。

「じゃあ、私たちここだから」

私は一棟のマンションを指差した。

「俺もここだよ。ここの5階」

はぁ!ななな何で!

私はその場に座り込んでというかのめり込むくらいの勢いで落ち込んだ。


505号室。そこが私の家。木絵は302号室、倭王は303号室。

そして、大和は506号室。しかもうちの親は地区で当たった旅行券片手に1週間のペア旅行に行ってしまっている。つまり、愚痴を聞いてくれる相手が木絵しか居ないということ。これは由々しき事態であるといえる。

大和のお母さんは私にいつもおかずをおすそ分けしてくれるし、お父さんは勉強を教えてくれる(もちろん大和の家に上がってます)。


大和が転入してきて1ヵ月がたった。お父さんとお母さんは帰ってきた。でもまた今度は国内旅行に行ってしまった。

私は今お勉強中。

ピーンポーン

「誰?こんな時間に」

といっても、まだ8時。まぁ、訪問するには遅いけどまだほとんどの人が起きてる時間帯だ。

「こんばんは」

大和の声だー。最っ悪。

「何か御用ですか?」

「用が無かったら来ないだろ。入っていいか?」

私はカチンときたが、心を広く持って大和を中に入れた。


それが私の“初めて”を奪われるとは知らずに………

~怒り~とはちょっと(いやかなり)ちがいます。

ご了承ください。

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