親友
親友の彼は、今のところ何もできずで離れている。
渦中の彼、サザンも親友にそう言おうとしていたのでひと安心。センユはセンユで弱けれど何かしらひとにない力を持っている。サザンも最初から弱いだけの彼なら協力約束されても非協力の約束をさせ返すところだが、この状況に生憎として微妙に役立ちそう(?)な彼は、約束通り(使える範囲狭すぎだが)使い所を待たせるほかない。
彼は表面上父をすき(好き)、暮らしていたが内心はもちろん大嫌い。内心で付けた五人のあだ名;転がし玉、バカ信仰、物掛け鼻、落ち着け、迷信芸。
手からワラビを放ってそのまま無数の槍状炎を放ってくる迷信芸。サザンは余裕でかわし、ドドドド、と地面に突き刺さる、が、それが地面の中から大爆発、黒点は一応炎なので中からは熱しかでてこない。軽く水爆なみの爆発が幾つも発生、炎に炎で視界がくらんだ瞬間、ほか4人が一斉に接近。彼が自らの炎で周りのを吹き飛ばすと同時、5人に囲まれる。
ヤバッ!ととりま一番肉体的に実力低い(彼調べ)転がし玉を、他へ攻撃!と見せかけ足裏からジェット噴射で後ろへ猛ジャンプ&体をひねり足蹴り!転がし玉が転がる転がる!空いた空間から一旦包囲は抜ける。とすでにトラップしてあった 地面から衝撃発動炎(魔力のようなもので炎を制御している彼ら。これは魔力で炎を封じ込めた地雷)が発動し灼熱炎が地面から竜の昇天の如く太く、ドリルのように回転しながら幾筋も立ち昇る、が地雷っぽいのはさっきもあったので予測済み、上空に舞い上がり竜をかわす。転がし玉は緩やかに転がるため地雷は反応しないという彼が転がし玉を最初に狙うこと計算内な作戦…ということは案の定囲まれたと思っていた内2体は炎で作った陽炎の偽者、本物は上空で待ち伏せだ。バカ信仰と落ち着けに両側から挟まれ二人の手からそれぞれ白と黒の閃光が広範囲に照射。これは彼に避けられお互いが攻撃をこうむるのを防ぐためお互いへは害なし、2つが混ざる境界あたりが一番二人に関係ないヤツに効く攻撃。
魔力も体力の内。あまり使いたくないがやむを得ず二人のより強い光線を放ちながら抜ける。
しかしこの2人はあとの3人から引き離せている。彼は自分の演技には自信あり、まだ父らは嘗めてるだろうが、本気でいったらどんな顔をするだろうか。ひとりふたり相手なら失敗しても致命傷はないだろと踏んだ彼は、初めて本気を試した。
と本気の出し方がわからないのでとりあえず最速でバカ信仰に体当たり!してみたら炎の海に一直線突っ込むと、二度と戻って来ませんでしたとさ。
落ち着けの顔から血の気が退くと、敏速に身を引き、他の3人と顔を見合せる…と、次に息子に臨む顔からは余裕や経験者の自信はまったくとして消え失せ、彼らも本気になったことが見て取れた。
一分の隙さえない…。センユは息を呑む。
ピリリと張り詰めた空気…
何やら落ち着けが両の掌を天へ向けると力を込め始める…
この緊張の空気を破ったのは天から大きな大きな燃える音が落ちてくるというものだった…!
それは文字通り炎の蓋のようなものがここいら一帯を覆い被せるように空から降ってくるのだった…!
彼は驚き逃げ場もないと覚るとセンユのいた場所へ目をやる。いない!バリア炎を飛ばすか自ら行って守ろうと考えたのだが…とそこへ一瞬センユの姿が「目の前」に。次の瞬間彼はかなり高い上空と思われるある場所にいた。となりには自分の左腕をつかむ親友。
そして真下にはなだらかな凸状の蓋形をした物凄い広さというかデカさをした炎の塊が地上へ向かい降り(おり とも ふり とも言える)注ぐ最中であった。つまりこの攻撃の真上に来たことになる。
親友の能力は、瞬間移動だった。(体が炎の凝縮体の彼ら。彼は弱いため(?)自らの炎を消して別の熱い場所で再点火することで瞬間移動したように見せる技を持っている)
親友は言う。
「ごめん、調子乗ったね…邪魔でしかないや僕。でも一緒にいたい。できることなら助けたい…!それに…」
「…死ぬなら一緒だってか?泣かすなよ!死にゃしねーよ。今だってマジ万事休すかもしんねかったのに助けてくれたじゃねーか。…てか、いてくれ。頼む」
親友には見えた。いつかぶつかるとはわかっていてもいざ本番となると、嫌っていても親。沁みるような寂しさで、そして何もかも失うかもしれない怖さで、震えている手が。普段素直じゃない彼が「いてくれ。頼む」とまで言ったのだ。どれだけの悲痛を抱えてきたのだ、という想いで彼を見つめる…。
「うん、大丈夫。僕はいるし、君なら克てる。絶対に。」
最後のお別れかもしれないやりとりだが、二人の眼差しは力強いものに変わっていた。彼はうなずくと、また下を見た。炎の大蓋は地面に着き、灼々と光る火焔の猛乱吹となり、地上をただでさえの燃える上から焼き舐めさせている。
すでに父たちはどうやってか上空に出て、息子を見つけている。
サザンにとってセンユは隠し玉であってほしく、それをセンユもわかっているので、すでにどっかへ消えている親友。
難なくかわした息子を(特に落ち着けは)驚異とさらなる警戒の目で視る父親たち。彼は、親友の言葉で寂しさが、完全ではないが吹っ切れていた。
もう父たちへの畏怖は感じず、勝てる。と思った。
彼は父たちに別れを言った。
「俺は失敗作だったろ?でも楽しいこともあったよ。感謝してる」
父たちはあまり聞いていないように思われる。どう捉えてくれただろうか、とはサザンは考えなかった。でも倒すことは決定なので、最後は親子らしく、
「けどやっぱりオヤジたちは間違ってる。俺に学んでこれからはみんなの扱いは変えた方がいいと思うよ」
と。子に説教されて癪に障らない父親はいない。
両者、「決着だ…!」との思いを固め、神経をとがらせた…。