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女人


 彼女の星の文化は、ちょっと黄土色や、金色のものが目立ったし、もちろん初めてみるものばかりだった(夜といえどけっこう明るく みえた)が、地球で使われる道具が、わずかに形・装飾を変えただけのものであるように思えた。


 要は地球の、蛇口、電灯、車 etc.に当たる道具は、この星ではどの道具になるか、見れば一発でわかるのだ。

 彼女らは人間に限りなく近い姿をしている。としたら、使う道具が人間のものに似るのは必然かもしれない。

 さながらあまりワケ不明な物体や道具も見つからず、しかし乗ってきた宇宙船も考えると、この金星(そうしとく)の文明は、地球よりも進んでいるが、この地域は地球と どっこいどっこい、地球でたとえれば、先進国とそうでない国のようなものに思えた。


 碧姉は、まだ仲間との通信が続いているようで、最初におれに(地球のにそっくりの)手錠をして、それを自分の左手首にも嵌めると、「来て」と言ったきり、黙ったまま、この土地の家々の間の細い複雑な路地を、あっち抜け こっち抜けしている。船の中じゃ喋ってたのにと思うが、何か理由があるのだろう。

 おれはもう、宇宙船を降りて、どう来たのか思い出せなくなっていた。


 それにしても静かだ。ひとっ子ひとりいない。ひっそりと、静まりかえっている。

 …と、ここで碧姉は、とある家(けっこうなボロ家だ)に入る。玄関扉は簡易な引き戸で、施錠もなく難なく開く。手錠で繋がれたおれは、足もとに注意しながらついていく。

 見た感じ、カーテン、壁紙(そうしとく)にかわいらしい趣味が見え、荒れてはいるが、テーブルの四辺やタンス、椅子の背凭れの(ふち)に彫られた模様などを見ると、元住人は女性らしい印象を受けた。


 そして彼女は、ある部屋の隅に立ち止まると、周りを一度見回してから、真ん前のクローゼット(に見える)の、引き扉や、小さな引き出しを、何か順序があるように 上、右、右閉じる、下、左、下閉める、また右開ける…などして、最終的にまた全部閉まった状態に戻すと、クローゼット自体を動かし始める。それは、引き戸を開けるように動く。すると、何かで繋がれてはいないようなのに、床であるはずの部分が ガパッと外れ、大きさ1m四方ほどの、見ため床の隠し扉が、クローゼットの動きに同調するように開いた。


 そこに隠されていたのは、下に掘った空洞と、それを下りる梯子。

 下に下に、暗黒に見えなくなるまで、続いていた。


 碧姉はおれを先に少しだけ梯子を下ろさせると手錠を解き、それからおれを先に(かなり怖かったけど)梯子を降り始めた。もちろん彼女は隠し扉を閉め(また同じようにクローゼットも元に戻るのだろう)、簡易ランプのようなものを取り出し、暗闇を仄かな(あか)りで照らす。照らしたところで空洞の中は無機質な風景なので、おれは気をつけながらもさっさと梯子を下りる。






 かれこれ15分くらい下りただろうか。

 やっと足が地についた。 彼女も追いつき、ふたり狭い空洞のなかに立つ。しかしあっという間に碧姉が出る扉を開いたようで、まばゆい光が突如視界を奪う。普通の光もしばらくぶりなので、あまりの眩しさに目がくらむ。…が、だんだんと慣れはじめる。…と見えた世界は、たくさんの(この星の)人のお出迎えであった。


 というよりは好奇な目で見られているような気がする。

(あまり近寄っては来ない)

 しかし喜んでくれているようでもある。

(なぜか彼らの言語が難なく通じ、おれも喋れる気がする)

 群衆の後ろに家がたくさん建っているのが見える。 これがこれから住む街。大規模な地下街!

 さっき上(地上)で見た街の文明度とは明らかに違う。こちらの方が、はるかに上。

 たぶん地上が何か脅威にさらされていて、大分昔に地下街を造り、移住してきたのだと思われるが、ここまで大規模だと、文明の凄まじさと何か芸術的なものさえ感じる。

 純粋に驚くことはまだまだあったが、一番驚いたのは、男が、いないことである。

(出征でもして、女子供だけ残されたのかもしれないが、何か違う気がする…)

 どこをどう見回しても女しかいない。小さな子から若い子、中年くらいの女性、年寄りもちょこちょこ。住まう全世代の女性が集まったようだ。

 そして目をみはるのは、みながみな美しいことである。



*客観視点へ。


彼自身のこの頃の異性への美意識は微妙だったが、彼女らの美しさは美意識を超えた(表現おかしいが)ところにあった。




 おれは、これならこっち(日本)じゃクラス…いや、学校のマドンナになれるな みんな!!…という思考を越え、ここに集まる女性の3分の2にひとめ惚れしてしまっていた。

 だいたい60人いるので、40人ほどに。。。

 3分の1は見ため40代以降である。しかし彼女らも、母だったら、祖母だったらいいなぁと思える女性ばかりにみえた。

 おれは世界の女性を見てきたが、容姿の良さはなんとなくわかれど、一目惚れなどしたことがなかった。そもそも恋に目覚めていなかった。

 ここで初めてだった。躰に衝撃が走り、彼女らの顔を直視できなくなって心臓がばくばく、頭は真っ白。が、容赦なくおれに視線は注がれるので、おれはうつむいてしまった。


 碧姉は、

「…私たちのこの星はね、 女の性を持つ者しか いないの」


加えて、


「みんな“男”とは、見てないわ。姿のあまり変わらない、初めて見る宇宙人としてあなたを見てる。ごめんね、こんな集まっちゃって…」


と言っているが、ほぼ耳に入っていない。


 動悸をすこしでも和らげるために深呼吸を繰り返す。。。と、碧姉は気づいたようだ…。


「……嘘よね…?たしかに地球とは違った独特さが、この星の種族にはあるけど…」


しかし、


「でも…うん、これでいいのよ きっと…あなたには悪いけど…」


(ここに住むなら、ここの異性を好きになるのはあなたにとって好いことかもしれない)と。


 いつか帰る気 満々だったおれのこころざしが、半ば折れてしまったのはいうまでもない…。



 ハーレム展開はないです。すみません。

 こっから話も主人公も変わります。

 ゆう太は、読者の方に、人間→宇宙人→宇宙と、この物語の世界観に入ってもらうためのお役目でした。

 これなら、次の話からいかなり宇宙人が出てきても大丈夫(?)と思ったので。

 では引き続き読まれる方(感謝。)、どうぞ手柔らかに、お願いします。


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