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In the UFO



 今度はぱっと目が覚めた。

 もう怖くはなかった。


「あ…、気がついた…?」


 碧姉は僕を膝枕してくれていた。男といえどまだ子供、具合悪いフリしてずっと頭をもたせかけておくなどしない。お礼を言いながらすぐに上体を起こす。(気持ち良くないと言えば嘘になるけど)

 碧姉は、大丈夫…?と気にかけてくれるが、これからのことで頭は一杯、痛みなど気にならない。

 ゆうたは思い起こす。彼女とのさっき(いつぐらいさっきか知らんけど)の会話を。


「えー…と…碧姉の住んでる星?…星ってわく星のことだよね?そこに住んでほしいって……

…どーゆーこと…!?」


「順を追うね…?ゆうくんは宇宙人を見つける才能がある。私は宇宙人だから。。。私に明かした理由が あなたの一番知りたいところでしょう?当たってる?」


 ここでようやく、認識できるのは宇宙人で、ちからはまやかしじゃなかったと確信。


「うん…。おれ、だれのためでもいいから このちからを役に立たせたかったんだ…。もし宇宙人のぬけがらがあったら、見つけられるのはおれだけかもしれないし、へきが(壁画)が残されてて そこにえがかれてるヤツにそっくりなしゅるいのヤツをおれが見たことあったら、何か新発見の手がかりになるかもしれないし、においもちがい分かるから、残されたそれでも同じことができるかも…それでうちゅう人がまいおりたらしい色んなとこ調べて、何しにきたのかとか調べる人になることも考えたんだ…。でも苦労して調べたことが、碧姉にきけばジョーシキのように知ってることかもしれないし、人間に化けれるうちゅう人だもん、文化のレベルは全ぜんちがうはず…だったらどの星にどのうちゅう人が来て、どんなエイキョウを与えたかまで記されたシリョウ(≒文献)だって持ってるかもしれないじゃん。…それにうちゅう人たちにも良いこと(メリット)があるこのちからの使い道を考えたら、おれ、うちゅう人たちと協力してみんなの役に立つこと考えた方が100倍早いと思ったんだ。―だから碧姉には、碧姉がなんでいま地球にいるのかをききたくて…」


 要約すれば、たとえ宇宙人の遺跡研究家になろうと、現存宇宙人の知識を借りれば全て徒労だった となり兼ねない。ヒトとして出来ること探しには、宇宙人の協力が必要だということ。碧の質問への答えは、「この星にいる目的」を知ること。となる。彼女の予想通り。


「…それでちからのことも話さなきゃ…ってことね。でもそこまで考えてくれてたなんて ありがとう。ちょっと長かったけどね(笑)」


 たまにこういう指摘が入る。「always優しい」のなか突如なので、いつも不意打ち食らいである。

 彼女が言葉を続けるので 急いで気を取りなおす…。


「ゆうくん私が宇宙人だと知るだけならいいんだけど、あなたはどんな宇宙人でも一瞬で見抜いてしまう。

 だから私以外でも知り合いを作って、そのあなたの知りたいトコ(目的)を、隠れて、色んな角度から探ることもできちゃうでしょ?」


僕はうなずく。


「その“目的”ね…私の仲間以外、誰にも漏らしちゃいけないコトなの。」


少なくとも、地球に目的があって、いることはわかった。


「ゆうくんのことは信頼してる。ゆうくんは仲間といっても私が素直でいられる仲間。

 今話したのは、“種族としての私”が持つ意志を共有する、いわば仕事仲間。」


*客観視点にちょっと戻る


 嘘ならクサすぎるセリフだが、彼は微塵も疑わないし、彼女も本心で言っている。


*彼視点 再開


「だからこの措置は私も含めた仲間みんなの結論。

 何も教えず私の住んでた惑星に連れて来ること。そして…言うのは辛いけど…そこで一生を過ごさせること…。」


 つまり、その目的を知れて 地球人の誰かに伝えられる(団結され、阻止されるかもしれない)という環境を奪い、自分たちの監視下に置く、ということだろう。…が、そのお仲間さんから、殺処分、終身監禁などの案が絶対に出たはずが、拘束力は不明にしろ、「生きろ」といわれたのだ。(終身監禁も生きてるが、「過ごす」の言葉からはそんなイメージは汲み取れない)何も教えず?もう命さえあれば、良すぎるくらいだ。窺えるのは碧姉の努力…あ、感謝で碧姉に抱きつくの忘れてた(というよりし損ねた)。


いま抱きつくのはちょっと…

僕は正座して姿勢を正すと、「ありがとう…!碧姉が頑張ってくれたから……」

と頭を下げる。

 彼女は驚いてから、

「恐ろしい想像をさせたわね…」

と 向こうからハグ。。。

 命の恩人に恩返しを決意しているおれは 悪いけどすぐ腕をほどく。甘さと呼べるくらいの優しさは、今のおれは拒絶したかった。

 彼女も察して、少しだけ寂しい表情。


 とりあえず思考を切り替えた。碧姉の処遇だ。


「碧姉はこれからどうなるの?」


「私は地球時間でだいたい1ヶ月の自宅謹慎ね」


「!…ほんとにごめん…」


「すごく軽い方よ?いい仲間を持ったわ。私は大丈夫。

 ゆうくんのこれからの話をするね?ここはまだ地球の上。私達の飛行船の中。オッケー?」


 大体予想通り。こんな金ぴか物質みたことないし。


「オッケー。」


 (もう少し碧姉のことを聞きたかったが、余計な心配をさせたくないのか、おれの話に替えられた。)


「私達の星の環境だけど、それは適応できるように できるから、心配いらない。あなたはある街で暮らしてもらうことになる。ここまでしか、言えないわ…」


「…じゅうぶん わかった」


「もう少し地球(ここ)にいてもいい。牢だけど…。そばにいるわ…」


 おれは断った。

 もうすでに地球に戻って来る気でいた。もちろん逃走ではなく どこにぶちこまれようが、信頼で抜け出すのだ。碧姉に心配掛けないのが償いなら ここまでがそうだろう。その頃まで彼女が地球にいたらだが、恩返しはおれが地球にいなきゃ直接的にはできない。

 “地球に帰る”ことは、出来る出来ないの問題でなく、やる必須項目になっていた。なら、さっさと行ってどんなところか見たい。これが心境だった。これを知られればもっと心配させてしまうので、心は決意だらけだったが、顔は覚悟と不安 半々(覚悟の方ちょい濃いめ)を作って、状況に相応させる。


 彼女は、おれの意思をすぐに汲み取ったようだが、おれの手に自分の両の手を、覆うように重ねると、優しく、強く握りしめ、涙の溜まった目でおれを見つめた。その眼には、自らの罪の意識と、なぜ…?という問いかけが、強く宿っていた。問いかけとは、おれの幼い齢と、対する運命のようなものへのなぜ だった。

 彼女はやがて、あふれた涙が片方の目から頬を伝うと、首をうなだれ、肩を小さく震わせて、泣き始めた…。

 声は押し殺していたが、押さえきれない小さな慟哭は、小さな部屋に響き、こだましては消えた…。


 おれは空いているもう片方の手を、彼女の両手の上に、重ねてあげることしかできなかった…。










 おれたちを載せた飛行船は、ゆったりと宇宙空間を進んでいた。

 あれからしばらくして彼女は落ち着くと、覚悟してくれたのね…という内容のことを、ちょっと不自然なくらい大きな声で言うと(おそらくそれが、この船を操る仲間への合図だったのだろう)、途端に船ががたがたと揺れ始め、一瞬にして重い感覚と、直後それから解き放たれる感覚に襲われると、いつのまにか体が床から浮いていた。

 おれは(くう)を泳ぎ、届かなかった牢の壁上方の小窓へ。地球がぐんぐん離れていくのが見えた。

 地球は、青かった。

 超がつくくらい、的を得た名言だと、しみじみと眺める…。

 彼女が問うてくる。


「こわい…?」


 “これから”と“いま”。二つ解釈できたが、もう暗い話は嫌なので、


 面白い。とおれは答える。のんきなものかもしれないが、初の宇宙体験である。面白い(interesting)以外なにものでもない。ちょっと頭に血が回っ(重力がないせいで起こる症状)て 気分悪くなってきたけど。


 「そっか…。わたしも初めては面白かったわ。でも何度来ても、何度見ても、宇宙って神秘的なの…。地球も綺麗で大好きだけど、任務果たしたら 色んな星を旅してみたいな〜って思う…」


 彼女はそんなことを言った。ロマンチスト!とますます好きになった反面、無神経にも感じた。いまこんなことができるなら、おれも碧姉の旅に一緒できる、できるならしたいと願ってしまったので、おれはこれから…


「!!ごめん!これから不安な場所に閉じ込められる気持ちのあなたに…バカだわごめんなさい…」


 おれは思い付く。

 ついこぼしてしまうほどなら、かなり夢を馳せてたと思うのだ。


「…碧姉お願いがある…碧姉のな…」

「イヤ。聞かない。」


 !?まだ何も…


 そうか。船の出発合図らしきことしたときわかったはずだった、この会話は彼女の仲間に聞かれている可能性があると。おれが言わんとしたことが、仲間に聞かれて不利になることかもしれないと、碧姉は察したのだろう。現にその通りだった。おれは また言える機会は来るかも知れないと、ここでいうのはやめにした。


 その後彼女は、何も言わずに私の両手を握って と言い、その通りにすると、不思議な現象が起こり出した。2人のまわりが光に包まれ…というより おれら2人から球形状に放出されているような感じだ。

 光に音はないはずだが、何かきらきらと煌めいているような音の気配が遠くから聞こえる。

 光はどんどん強くなり、その間おれは体に何か別のちからが送り込まれているような感覚と、体が何か変えられていっている?ような感覚がするが、それもどんどん強くなり、体じゅうが熱く、燃え上がりそうになり、光もこれまでにないくらいな輝きを発すると…。

 ふたたび静寂とひんやりとした空気のなかにいた。

 碧姉は、

「…これでこっちの星でも地球と同じように感じ、振る舞えるわ。大丈夫だった…?」


 「平気。」


 済んだあとは何もなかったかのようだ…。


 …と…!!いつのまにか重力が戻っている。今のをやっている間に足は床についていたようだ。


「…着いたみたい。」


 着いたのか!もう? 時間にして20分も経っていない。あの速さで地球から遠ざかった場合、ワープでもしなければ行けるところなど知れている。もちろん人類の叡知をもってしてもこんな簡易にこんな距離を移動出来ないことは確かだが、太陽系を知っていれば想像のつく範囲にしか、移動していないように思われた。


 碧姉が牢の格子扉を鍵でひらき、ふたりやっと牢を出る。

 こっちよ、と碧姉がゆくほうについて行こうとして、ふと、牢の中を見やる。 疑問が半分確信に変わる。半分は有り得ないからと可能性を捨て続けるが、有り得ないをあまりに体験し過ぎたいま、これももしかしたら現実なのかもしれない。そう思える。

 牢の中にいたら背丈と角度の問題で、浮いているときしか小窓から外を見ることはできなかった。しかし廊下に出ると、角度の問題が消え、外が見えるようになる。といっても(この惑星の)空だけだが。だとしたらこの場所はいま夜ということになる。藍と黒を混ぜた空に、小さな星たちが輝いている…ただひとつ違うのは、地球上で見る月のように、おそらく恒星の光によって、3分の2が照らされ、3分の1が欠けた、丸くて美しい、青の惑星が、空に浮いていることである……







 それは、まぎれもない「地球」だった。

 月に見る大きさとは段違いに大きい。

 燦然と照り映える大西洋に、砂漠が目立つアフリカ大陸、そしてヨーロッパあたりがよく見える。陽がモロに当たっているのは左側の南アメリカ大陸。今お昼どきだろうか。暗い部分も、インドあたりは電気の光がちこちこと見える。そして明るい部分全体を白い雲が、世界の風の流れをあらわして 渦巻いたり、白い墨汁を染ませた筆を走らせたように、流れている…。

 見違(みたが)うはずがない。あれは地球だ…


 ならここは…?


 ゆう太は太陽系の惑星を思い浮かべた。惑星ならば火星か金星、どちらかしか考えられない。

 地球を発つとき発った後、窓から射す光から太陽がどこにあったか、地球の照っている場所、日本との時差、いまの大体の時刻、地軸と金星火星の公転などの関係を考えてみる…。







 金星…!!?





 金星だ、どう考えても…





 ―おれは「金星」に、なんと文化があり、人類がいる前提で、連れて来られたのだった…

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