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彼女の過去


 ・・・・・・


 レイは血だらけのまま、両親に抱きつき直し、「わかってたわよ…」と妖し悲しい笑みで呟くと、両親の身体が血に弾けた。

 一気に息絶え、ばた、ごと、と床に倒れ込み、もう起き上がってくることはなかった。

 レイは、両親のそばに力なく座り込み、泣き始める…。その意識は過去に遡っていた…



 或る男は大量殺人犯、或る女は水妖族随一の腕を持つ暗殺者。

 ふたりは出会い、恋に落ちた。そのまま結ばれ、異常なところに惹かれ合ったふたり、その仕事を、行為を、辞めるはずはなかった。

 ふたりが歩いた島は必ず沈むとまで云われ、現に次々と島は滅ぼされ続けていた。

 そんな最中(さなか)に生まれたのがレイだった。

 産まれたときから全てを理解でき、赤子であったにも関らず、魔力、フィジカル面どちらに於いても、両親を超える力量を秘めていた。

 そんな彼女は親にいいように使われた。理解できたと言っても親の魂胆に気付けるほど 素直な子供思考を抜け出すには、いささかの時を要した。

 しかし時が経ち、彼女が反発する兆候を見て取った母は、言葉と魔力で娘の思考を操り、彼女のまともな心を消し、善悪の判断さえ思考に上らないようにしてしまった。

 父も力を貸し、しばらくその効果は続いた。時にして13年。その間も両親は人殺しを趣味のように続け、一つの島の島民が皆殺しにされた後、魔力で沈められるのだが、元々数百あった島は、今は十ほどになっている。(ここまで人を殺すことに取り憑かれる理由は何か?他人を殺すほど、自分の寿命が延びるという、死神のような理屈が、彼らにはあるからだ。このメカニズムはまだ解明されていない。)

 しかしさらに時を経、ついにレイに、両親のマインドコントロールを、自らの強大な本能的魔力によって振り解く瞬間が、意図せずに訪れた。娘の思考を常に魔力で縛っていた両親は、敏感に察知し、前々から打ち合わせていた通り、彼女の脳の生命維持組織を除く、五感や思考能力を司る脳組織を、魔力と水で、うまく破壊した。

 廃人になった彼女を、血管から養分を送り続け、自分たちが滅ぼす島に連れて行っては殺人を面白く飾るため、娘の未だ日々強大になり続ける魔力を奪い、大いに活用し、ふたりは自らの狂気に陶酔するのであった。

 しかしそれも終わりを告げる。

 その日も、眠り続ける彼女を連れ、両親は未踏の島へ。もちろんこの2人(3人)の対処として、魔力の強力な集団が住民を護るため、気配を察知し駆け付けるのだが、やはり、彼らも、そうでないあまり強くない一般島民たちも、2人にかかればみな同じ。全て彼らの娯楽道具と化され、残虐の限りが尽くされた。

 例えを挙げれば、母に一番幼い我が子を絞殺させたり、正義感のある青年に、目の前で若い女性を何時間も拷問させたり、護衛の者に島民を襲わせ、殺し終えると彼ら同士殺し合わせる、など。酷いものでは、妻(母)を夫(父)に生きているまま噛み食い殺させ、感情をいいように操られ激昂してしまったその子どもに父親を殺させる。死体になった両親の体内の水を操り、またゾンビのように復活させ、子どもを殺す。虫の息になった子の目の前に、もう一度両親の死体を、死んだと解るように横たえて見せつけ、子が泣きはらした目で睨んでくるのを楽しみながら両親を爆発させる。子が絶望の色を浮かべたら、両親の肉片を手づかみや蹴り上げで子の口に突っ込み、もともと死にかけの息の根を止める。そんなことも彼らは軽々と楽しむのだ。


 この日も、島には悲鳴と泣き声と咆哮がいくつもこだましていた…。


 そこで、レイが目醒めた。見えなくとも、どんどん消えゆく生命体の気配や悲鳴は、レイの潜在意識を締め付けていた。それがここで、脳機能停止状態を振り切るが如く、堪え切る限界を、ぷつりと越えた。


 閉じ込めていた氷の柩がバシャコ!と弾き破られ、まだ白眼を剥いたままの彼女が、宙に浮遊しながら起き上がる。辺りに強い旋風が巻き起こり、そこらじゅうから水や土の粒子を集めくる。強力すぎる魔力が、目に見える淡い光となって彼女を包み、両親が何をしようと、届かない。近付くことさえかなわない。

 彼女は一度、瞼を閉じ、また開くと、綺麗に澄んだ海色の瞳が、眼前の光景をとらえた。

 彼女が見た世界全てが生命力に溢れだした。傷を負った者はみな回復し、島の壊された大部分が元通りになっていく。植物さえ躍るように生長しだす。

 両親は、彼女の視界からもこの島からも離れていた。彼らはこの眼の効果を知っていた。たまたま彼女が助けたい者しか周りにいなかったが、使用者が敵意を持つ者には、抹殺の魔力で働く。状況的に自分たちが殺されることは当然、対策を立てるためにも一旦別の島へ。

 そこにいたのが、ミドルェ(オッサン)だった。レイの双親は、強さにこだわる彼を甘言で釣り、娘を封印する取引をしたのだ。

 水妖族は、この惑星で太陽光をあまり受けない側から溢れる水(当たる側はすぐに蒸発してしまう)に生まれた生命が、七転八倒(自転するとまた陽が当たり、渇きで生命危機に。工夫や運で死ななかった種族のひとつだった)しながら進化を辿り、最終的に水を操れる生物に進化を遂げた歴史がある。

 水妖族という種族までに進化した彼らは、集団魔力で協力して、陽の当たらない側に、「ずっと海を置いておく」ことをし始めた。サザンが見た、丸い惑星の上に三日月形の(正確にはパラボラアンテナの椀形の部分のような)海が載っかっているようとは、このことである。もちろん自転するこの惑星に合わせ、陽の当たらない方当たらない方へと、海を移動させている。そこまで魔力を持っているのだから、海に島を浮かすことも容易。島は自然に浮かし、あとは海を形を保たせ、等速スライドさせているだけで、一見すれば地球上の海の光景と何ら変わらない。

 その大きな海を動かす魔力は、先祖が作った魔力を溜め込み 自動で海を制御しながら動かす魔法の箱に、魔力を送り込む作業を ある年齢以上の水妖族の民全員の義務として課し、集めている。のだが、すでに両親が盗んだその箱(海箱と呼ぶ。海賊映画に出てきそうな宝箱の、氷版。鍵があり、開けられるが、近くにいるだけで、琵琶湖ほどの容積の水なら自在に操れるほどの魔力が一時手に入る。が、相当強いの者すなわち大量の魔力を持っていても平気な者でなければ、魔力に呑み込まれ、すぐ死んでしまうので、盗める者はほぼいない。魔力を集める作業は、決まった日時、場所に集まってもらい、悪いやつでない方の最強と言って差し支えない水妖族男性が、一旦自分を通して魔力を箱に送り込む。管理もそいつがしている。代々そういう家計なのだ。箱師と呼ばれる。レイの両親は、これまた魔力を借り、殺人を華々しく飾るためだけに遊びで盗んだのだった。娘だけでは飽き足らなかったらしい。今回はたまたま持って来ていた)を、オッサンにとりあえずどんな物か見せ、『箱師の真似をして、娘から魔力を奪い取ってほしい。もちろん私たちも協力する。うまくいけばこの箱はくれてやる』と言ったのだ。人間で言う、納税のように、取られる魔力は、その水妖族個人個人の強さに応じ、一年一度ちょっとだけの者もいれば、年がら年中大量に遠隔で取られ続ける契約を了承する人もいて、両親が言った「箱師の真似」とはこの後者、永遠に娘から大量の魔力が奪われるようにしてくれと頼んだのだ。オッサンは一応魔力は海箱に常時払っている者であり、箱師がどんな魔力を使い、どう魔力を取っているのか、逆計算のように考えて理解できる。技を逆計算して盗むことは魔法能力上級者なら誰もが普通にできることだ。彼は二人の話を聞き、この二人は死神的システムでも歴史上もう伸ばせない寿命と云われる年が近い、いわば老いぼれであり(まだ30にも届いていないが平均寿命は19)、が、レイという娘は、いつか自分の前に立ちはだかるだろうと、いまこの箱の力を借り、芽を摘んでおいたほうがいいと、決心した。

 娘であるレイは、レイで、決心していた。両親を、いますぐ殺すこと。これ以上は、許せない。両親が更正・改心することは、まずない。なら、今すぐ殺さなければ。いまこの瞬間も、彼らが生きているだけで死んでいく者がいる。逃げようが反撃してこようがなんとしてでも殺すことが、自分のやらなければならないことだと思った。幼い頃の小さな幸せの思い出は、自分の魔力を利用するためだけに生かしておいたのだと考えると、それでも親だという意識は押さえ込めた。まずこの惑星に、母と父らしき水のシルエットや流れ、魔力の強い気配を持つ者を、探してみる。水妖族の身体は人間と同じくほとんど水でできているから、水妖族の強い者なら、水の気配を感じ取り、この惑星のどの位置にどんな水があるか―仲間のあいつか植物か、水たまりか地下水脈か―把握でき、いる位置がわかった敵を、ピンポイントで攻撃することもできる。

 レイや彼女の両親クラスになると、この惑星全体の水の位置把握など容易、どれを操ろうかなという感じだ。しかし強い者はいつそれで寝首を掻かれるかわからないため、常に(寝ているときも)自分の身体にある程度の、操られないための魔力を流している。

 レイは即座に両親を見つけたが、やはり強い者(両親)は、相手に探されていることも感じ取れるので、もう完全魔力防御しているだろうからこれは魔力の無駄だと遠隔攻撃は諦め、直接対決のため、両親のもとへ行くべく、飛び立つ。

 ある島の上を飛び続け、深い森のなか。両親の気配を辿ってきたが、なぜかデカいオッサンが、立ちはだかる。

 オッサンはこのときすでにかなり強く、知名度もあって、レイにはこいつはミドルェだとわかり、警戒するが、問うてみる。



「あなたはなぜここに?」


「嬢ちゃん、あんたを殺すためさ。」


 言い終わるか否か、オッサンは地面を強く踏んだ。レイの踏む土の下から、厚く高い氷の板二枚が彼女を挟み潰さんが如く現れた。レイは後ろに飛びずさり、逃れると同時、板は2枚がぶつかり、ばちこん!と音が響く。


「何のつもりよ!」


「殺すっつっても半分だけどな」


 レイの言うことなど全く聞かず、自分の言いたいことだけ言ってくるオッサン。

 オッサンから膨大な魔力のオーラが顕れ、レイも本気で魔力を纏う。

 と、オッサンがさっきと同様足をどん!と踏み出し、掌をレイの方へばっ!と突き出すと、どこから飛んできたのか、直径80cmほどの水球が凄い勢いでレイにドバババシャン!!と何発もぶつかり、レイは血まみれになり、約1km後方まで飛ばされる。警戒していても見えなかったようだ。超大な魔力量を秘めていても実戦経験が少なすぎる彼女には相手が悪かった。ぐったりするが無理矢理にでも立ち上がろうとし、意識が飛ばないようにする。回復魔法を使おうとした瞬間、首の後ろに父の手刀を食らい、気絶するレイ。オッサンはすぐに彼女のもとへ来るが、気絶している彼女に拍子抜けする。



「なんだ…チョロいじゃねぇか」


「こいつには俺たち以外初めての戦いだったからな。」


「あ、マジか。それであんたにやられるまで気絶しなかったのか…経験積ませたら末恐ろしいな」


「つべこべ言ってないで、早くこの子の力を閉じ込めちゃって。じゃなきゃ使えないわ」


 母親が、言いながら海箱をどすんとその場に下ろす。


「あいよ」


 (相当腐った親だねどーも)とは思いながらも、自分にもメリットがあるので、箱師の魔力の流れを真似て、この子なら毎秒こんだけ取られたらまあ植物人間レベルだろう(水妖族の魔力は人間で言う体脂肪のように、少しはないと死んでしまうため、なくなると作り出そうとする意識が働く。オッサンは常に彼女の魔力がマイナスになるようにするつもり。常に魔力を作り出す意識に意識を大半取られてしまうと、目を覚ます気力や体力、思考へのエネルギーまで奪ってしまえるからだ)と、それを意識しながら彼女の魔力と箱の中の魔力の流れを自らの魔力を介してリンクさせる。見た目では、オッサンが彼女の頭と箱の上に指を置いている、ただそれだけだが。彼女から、箱のなかの魔力へ、一気に魔力の流れが形成されるのを感じると、そのままオッサンがポンプ役となり、流れ込む量を調節する。微調整までできたら、もうポンプ役がいなくとも彼女の魔力が箱へどんどん勝手に流れ込んでいき、それは彼ら3人なら簡単に感じ取れるので、安心し、行為完了を見届ける。一連の作業は5分程度で終わった。


 が、単純なミスがあった。近くにいるだけでアテられる箱の魔力にアテられないよう、魔力遮断の魔力を、両親とオッサン3人ともが働かせていたわけだが、レイは何もしていなかった。つまり箱とはさほど離れていなかった彼女は、一時だけだが、わりかし容量の大きな魔力を得てしまっていたのだ。

 作業が終わり、彼女のぴくりとも動かない(フリ)のを見て安堵し切っていた彼らを他所に、彼女は全員の目が自分から外れるのを待ち、不意に3人の身体中の水をめちゃくちゃに操り、一瞬で瀕死まで追い込み、形成逆転。海箱を持って全速力で逃げた。


やっと書けたぁあ〜ーー!!あーマジ掛かった。時間。もー、不器用やからこればっか書いとったら現実世界が生きられん!困る!ってことになってたからなああーー…ちょっとずつちょっとずつ忘れずに書き進めてましたよ。もう、いつ投稿できるやら!って感じでした。ほんとはも少し書きたかったけど…一旦誰かに見てもらわなきゃ書く気力が続きませんからね。今話タイトル通り彼女の過去はすべて書いちゃいたかったけれど、たぶん次の話も彼女の過去2って感じになるね。てかなんで頭んなかで考えてるだけじゃスムーズにやっかいなことすっ飛ばして進むのに、いざ文章にするとこんなに長くなるのか。不思議やわー。でも頭だけじゃ矛盾点も色々出てくるのよね。書くと、矛盾点を埋めるように、しかも頭で描いた展開になるように進めなきゃいかんから、かなり、頭使って、書き終わった後、かなり纏まってるなぁ〜って自分の文章に感激する。空想するだけと、著すってことは、ここまで違うんだと実感。うん、何の話だって感じだよね。

ではまた次はひと月後かふた月後か、はたまたもう諦めてしまうかはわかりませんが、また会う日まで!!読んで下さった方ありがとうございました!!

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