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告白




 ある夜、かた田舎の幼き少年が、空を見上げつぶやいていた。

「こんなに星がいっぱいあるのに、どうして人間はうちゅうにだれもいないなんて思えるんだろう…」

 彼(大和 ゆう(やまと ゆうた)(8))は生まれたときから、普通の人は見えないもの聞こえないものが、視えてしまう 聞こえてしまう不思議なちからを持っていた。そんなちからに戸惑いや拒絶を覚えた頃もあったが、今はばれないよう、なんの障害とも感じることなく過ごすことに慣れてしまい、慣れたことにも不快を感じなくなり、彼自身それを完全に受け入れていた。 視えるのは幽霊などではなく、UFO、宇宙人の類である(と言っても彼はその確認はできないので、他人に見えず自分だけが見える、完全に地球上の動植物ではなさそうな生物、未確認飛行物体をとりあえずそう呼んでいる)。



 宇宙人は彼思ういわく、現代社会にも人間の形、真似をして地上に紛れ込んでいるらしい。彼は父親の職業柄、全国(たまに世界も)を転々としてきた。そこではもちろん色んな人に、累計すれば普通の人とは桁違いな数会ってきたわけだが、たまにあったのだ、人間のかたちに重なって、透けてだが本などでよくみる宇宙人のかたちが見えることが。透けてだがはっきり見えるため、近くの人に問うた、あの人おかしくないか?と。しかし返ってくる答えはいつも自分の変なちからを疑えなくさせられるようなものばかりであった。しかしあるものと思ってしまえば利用することを考えた。それにはまずちからの五感で感じられる範囲を知る必要があった。その考えに至ったのがわりと早く、8歳という年だったので可愛さアピールで人間にかなり近いが間違いなく違う姿が透ける25歳日本人女性と友達になった(透ける姿は姿で別の服を纏っていた)。

*ここからは“彼”視点

 父が引っ越さない限り自分もよく行き、その人もよく来る公共の場所で出会った(これは本当にたまたま)。きっと向こうも幼い子は霊感が強いと承知していて、最初は警戒されたが、全く下らない話から入って、ただ別の声が聞こえるか、あちらの彼女にさわれるか、人間じゃない匂いがしないかなどを確かめられれば良かった。聴覚、触覚、嗅覚、味覚(他人との初間接キスはこの人)での判別は全クリア、つまり視覚以外でも残されたものなど、あらゆる情報で宇宙人がいること いたことを知れると このときわかったのだ。しかし利用方法が幼いなりにもなかなか浮かばなかった。登校中考え、学校で考え、下校中考え、いつもの場所で彼女に会って話しながら考え、宿題しながら考え…たが、答えではなく別の結論に達した。いくら考えようと宇宙人たちがこの地球にわざわざ居る目的を知らなければ、いざこのちからを利用しようにもそれが出来る範疇もわかりかねるし、いまその利用に(もしつかうならの話だが)関わらせられるのはこの年上の女友達だけなわけで、すべてに於いて隠れて且つ(宇宙人と接せられる能力なわけだから)接し続けなければならないと考えると、ほぼ何もできないじゃないか と気付いたのだ。

 つまり彼女に自分が持つちからのことを打ち明けなければならない。

 彼女は馬鹿ではない。話すことで、利用のために近づいたこと、すでに何か自分で実験されているかもしれないことまで気付くだろう。確かに最初の最初はそれだけだったが、話す内に本当に(性的にというほどませてはいない)好きになって、今は親友とも呼べる仲だ。信頼を壊したくはない。しかし他の宇宙人を見つけたとして同じ繰り返しじゃ意味がないし、やはり、自分も苦悩してきたと向こうに気づかせながら話すしか打開案はなさそうだ という考えに至った。




 ある晴れた日の昼下がり。彼はいつもの場所で彼女を待った。告白は告白といっても全く違う告白である。普通のカップルで言えば別れの宣告みたいなもので、関係悪化は必至である。

 しかし話せば2人の間に大きな秘密がひとつ、どちらもから消えるわけだから、これでもってさらに深い関係になれるかも知れないわけだが、その可能性は限りなく低い。

 もしかしたら消されるかもしれない…などと考えていたら、彼女が来た。


 いつもの笑顔で僕に向かって小さく手を振りながら軽快に歩いてくるが(彼女は人間姿と透けて見える姿はほぼ同じなタイプだった)、今日はその笑顔がとても眩しかった。

 僕は話があると言って、その場所(公園)の奥、小高い木々のかげまで彼女を引っぱった。

 彼女も最初は「なになに!?愛の告白?」などと冗談めいた雰囲気だったが、僕のいつもと違う様子に気づき、押し黙った。

 ……

 彼女はかがんで、僕に目線を合わせると、優しく、真剣に、「話してみて?大丈夫。ぜったい笑ったりしない」と言うと、僕の反応をじっと待った。


 彼女が(僕のちからがまやかしじゃないなら)「人間でない」ことを隠すのはごく自然なことだが、僕が彼女で色々自分のちからを試させてもらったのは、同意もない勝手な行為だ。話した後どうなるかも悩んだが、勝手な行為に対する罪悪感が何より強く、決心させた。


「おれ、ずっと碧姉(あおねえ)を騙してたんだ、ごめん!!」


 碧姉の本名は心咲奈碧(みさきな あおい)。(何故か話すとき自分をおれと呼んでしまう癖がある)


「え…??」


「…実はおれ生まれたときからずっと他の人に見えないものが見えたんだ。うちゅう人とかユーフォーとか…。それで人間のフリしてるうちゅう人もときどきいるって気がついた。碧姉もだよ…目をあけてるときはずっと見えるんだ…すけて…そっくりだけど全然ちがう別の碧姉が…」


 碧姉は途中まで、ねぇそれはおかしいよ とでも言いたくて仕方ないようだったし、僕が言い終わるまでに何度か言葉やジェスチャーで制止が掛かったが、無理に最後まで言い切った。そしてそこまで言ったら僕がやったことも大抵察しがついたらしい。

 彼女は「嘘…」とだけつぶやき、屈んでいたのを元のように立ち上がって、お手上げといった風な手振りをしてから空を仰ぐと、片手で額を抑え、次はうつむくとしばし沈黙が降りた。透けている方もとてつもない逡巡を重ねているようにみえる……。

 僕は居たたまれなくなったが、逃げ出すわけにもいかず、色んな覚悟をして彼女の反応を待った。


 ついに彼女が口を開いた。


「ごめんね、ゆうくん…」




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