わたしは何故か猫に好かれる
私は普通の高校生、刈谷彩凪。
少し変わってるとこと言えば、猫にかなり好かれるというところか、ええ――もう異常に好かれる。
前世がまたたびだったんじゃない? とか思うくらい、もう病的に。
この間なんかちょっと路地裏を通っただけなのに、十数匹の猫がじゃれついてきた。猫は可愛いから好きだけど、遅刻しそうな時とか、ちょっとウザったい。
「はぁ……。せめて猫とお話できればいいのに、そしたら『今はゴメン』とか出来るのに」
「その願い、叶えましょうか?」
「誰っ!?」と思わず大きな声を出してしまった。
そこには占い師のような格好をした少年がいた。
「迷子……?」
「まっ……! 失礼な、僕はこう見えても大人なんです!」
どうみても中学生くらいの男性は、私に変なメガネをくれた。
「これをかけると猫の言葉が分かりますよ」
「え~……信じられない」
「試してみて下さいよ」
私はそのメガネをかけてみた。あれ? フレームにダイヤルが付いてる。
「ああっ!そのダイヤル動かさないで下さいよ!」
私は丁度寄ってきた猫の事を見てみた。
「猫ちゃ~ん」
(このお姉さん……何だか惹きつけられる、よ~し目一杯甘えちゃうぞ)
「にゃぉ~ん……」
灰色の可愛い猫は、私の腕の中でニャアニャアないていた。へ~……、私って猫を惹きつける何かがあるんだ――。
「どうでした?」
「凄い! メガネだけで私の言葉も通じるのね」
「特殊な周波数で猫にも言葉が分かるようになってるんですよ」
「凄いわ……ねぇ、これいくら?」
私は財布を出そうとしたが、顔を上げるともうその人はいなかった。
「……ま、いっか」
次の日、私はメガネをかけ学校に行くことにした。この方が優等生っぽいからね
「このダイヤル、いじるなって言ってたけど」
いじるとどうなるんだろう。
ダメと言われると、試してみたくなるのが人間の性。
「カチカチカチ……」
少しくらいなら良いよね。
私はわざと路地裏を通って学校に行くことにした。
「猫ちゃんいないかな~っと……ん?」
へいの上に寝そべってるのは……人? へいの上に猫耳としっぽをつけた女の子が寝ている。
「落ちたら危ないよ~……」
私がその猫に手をかけた瞬間。
(かかった~!)
女の子が突然私に飛びかかってきた。
(ヤバい……超可愛い、え?人間だよね……? このお姉さん……凄く可愛い……)
え? え? え? ――何この子。メガネを通して聞こえてるから――この子、猫!?
私はさっきメガネのダイヤルをいじった事を思い出した。まさかそれで――?
(あっ……ずる~い)
(ミー子のやつ、またお姉さんに飛びかかってる……)
(よ~し、わたしも~!)
屋根の上の猫が三匹ゆっくりと降りてきた。えっと……逃げた方が
良いのかな?
――少しの間の後、私は思いっきり走って逃げた。
(あっ……! 逃げた)
(待て~!)
(逃がさないわよ!)
全員メス猫らしいけど――走っても走っても追いかけてくる。
無我夢中で走ったせいで学校とは別の道に入っちゃった。
「げ!
行き止まり……」
こんな漫画みたいなシュチュエーション求めて無いよ~……。
(とうとう追い詰めたわ……)
(はぁ……。わたし、もう我慢できない……)
(このお姉さんに……もみくちゃに可愛がられたいぃぃ!)
メス猫なのに中身おじさんか!
(にゃぉぉぉ~ん!)
三匹の猫が一斉に飛びかかってきた。
「きゃぁぁぁあ!?」
(ああ……いい匂い……)
(マタタビなんかとは比べ物にならないわ……)
(それに……、何て可愛らしい顔)
三匹の猫――(私から見ると美少女三人組に見えるけど)に私は色々された。手を舐められたり、スカートの中に顔を突っ込まれたり、胸に乗っかられたり――。
「ちょっと……止めっ……」
「こ~ら、三匹とも……!」
声のした方を見ると、私と同じようなメガネをかけた女の人がキャットフードの袋を持って立っていた。
「ほら、おいで」
(どうする……?)
(でも……こっちのお姉さんのほうが……)
(ペロペロペロ……♡)
女の人は突然怖い顔になり、
「ツベコベ言ってっとやんねーぞ!」
(にゃぉぉ~ん!)
三匹の猫たちは無我夢中で女の人の方へ駆け出していった。
「大丈夫だった?」
「は……はい!」
大学生かな……? 綺麗でちょっと格好良い女性だった。
「ねぇ……あなた、お名前は?」
「へ……? 刈谷彩凪ですけど……」
彼女は私に近づいてきた。何だろう、さっきよりちょっと色っぽいような。
「可愛いわ、彩凪ちゃん……」
え……えぇぇぇぇ!?
「何かしら……こう、抱きしめてると凄く落ち着くの……。ねぇ、私と一緒に来ない……?」
この人、もしかして――。
私を触る手つきが何か性的な意味を成す触り方になってきた。
「すみません! 今から学校なんで」
私は彼女を振りほどき必死に走った。何で私に寄ってくる人って女の人ばっかりなの~!