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時空の風 -竜の章-  作者: 穂積
■本編
71/112

黄金の竜

キラキラと、眩しいくらいに光を反射しながら、それはまるで太陽のように輝いていた。

初め、本当に太陽と見間違えたリュウキは、しかしそれが少しずつ大きくなることで太陽とは違うものだということを理解する。

それと同時に、輝きがこちらに向かってくることに気付き、僅かに眉を顰めた。


「シロ、何か来る。」


先ほどのダメージが残っているのか、僅かに霞む目を険しく細めながら、リュウキが震える身体を叱咤して両腕を駆使し、上体を起こす。

もし敵ならば、己は今の状態で戦えるのだろうか。否、無理でも、手にした情報と謎を解く鍵になる子供だけは、何とか城へ届けなければならない。

ぐっと唇を噛み締め、僅かに残った魔力を体内で構成し始めたとき、シロがのろりと首をもたげた。


「リュウキ、あれ、竜だ。」

「竜?…金の、竜?」


シロの言葉に、まさかと言わんばかりにリュウキが目を見開く。

金の竜は、このヒリュウに一頭しかいない。


「まさか…シン!?」


訝しげな目で見上げた空には、悠然と翼を上下させる黄金の竜が見えた。











「何で王自ら出てくるんだ!?」


黄金の竜の背から、シンがひらりと飛び降りたとき、前方からかけられたのは少し掠れた非難の声だった。

その言葉にむっと眉を顰めながら、声の方へ向いたシンがリュウキの姿を見て更に眉間の皺を深める。


「そんななりで何を言う。」


視線の先のリュウキは、所々衣服が擦り切れむき出しの肌には白い部分を探す方が難しいくらいの痣ができていた。特に首の痣には、細く赤い線が幾筋も入り、所々に血が滲んでいる。

少し苛立ったように駆け寄ってきたシンを見上げながら、リュウキは焦ったように僅かに身を反らせた。

シンはそれに構わず、リュウキの傍らに膝をつく。


「何だこの怪我は。シロまで動けないのか?」


足元には真珠色の獣が、むっつりと口を閉じたまま顔を背けてとぐろを巻いていた。

リュウキはリュウキでシンの剣幕に怒られると思ったのか、ゆらゆらと視線を彷徨わせながら、唇を尖らせている。

その様子に大きな溜息を吐いたシンは、ふとリュウキの影に横たわっている小さな子供に気がついた。


「その子供はどうした?」


この場に似つかわしくない無防備な姿を晒す子供は、外套を巻き付けただけの姿で肌の色もすこぶる悪い。


「夢の子供だ。山で見つけた。」

「山脈まで行ったのか!?」


藪をつついて蛇を出してしまったらしい。

どうやら山脈に入ったことまで気付かれていなかったようだ。


「…リュウキ。いつもいつも言っていることだが、無茶をするなと何度言えば解る?」


低く唸るような声がかけられる。大きな声ではなかったが、それは確かな威圧を持ってリュウキの耳に届いた。

更にシンは続けようと口を開くも、すぐに思い直したように唇を噛み締めて小さく溜息を零す。

そのまま彼は何も言わずシロに手を伸ばすと、両手で壊れ物を扱うように抱えてリュウキの膝の上に乗せた。


「掴まる力は残っているか?」

「…そのくらいなら。」


意図を察してばつが悪そうに呟くリュウキにシンはしっかりと頷くと、リュウキの腕を取り己の首に回させて、そのまま彼女の背中と膝裏に腕を回して抱え上げた。


「ゴウ!」


軽々と彼女を抱えたシンが、背後に佇んでいた竜を振り向きつつ声をかける。

ゴウと呼ばれた黄金の竜は、シンの声に応えるようにのそりと身を起こしゆっくりと近づいてきた。

シンも腕の中のリュウキに振動を与えないように、ゆっくりと竜に歩み寄る。

主が目の前に来たのを確認した竜が、ゆっくりと身を沈めて伏せると、シンは竜の背に取り付けてある輿に、リュウキをそっと乗せた。

そのまま一度輿を離れると、同じように子供を抱えて今度はそのまま輿に飛び乗る。

輿の支柱に背を預け、座り込んでいるリュウキの隣に子供を下ろすと、シンはゆっくりと前方を見据えた。


「帰ったらコウリの説教が待っているからな。」

「はっ!?…えー…。」


心底不満げに唸るリュウキに、シンがニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。

それを見たリュウキが、嫌そうに眉を顰める。


「諦めろ。無茶をしたお前が悪い。」

「…まぁ、今回は自覚は…ある。」

「そうか、それはよかった。報告は帰ってから聞くが、お前はしばらく謹慎だ。」

「んな!?」

「当たり前だろう。ゴウ!」


納得いかないとばかりに声を上げるリュウキを横目に、シンが大きく声を上げた。

それと同時に、金色の竜がゆったりと翼をもたげる。金に煌くそれを大きく上下させると、竜の巨体がふわりと浮き上がった。


「…シン!」

「何だ?」


一瞬で空に舞い上がる竜に目を向けていたシンが、ちらりとリュウキを振り返る。

そこには、様々な感情に表情を崩したリュウキが百面相をしていた。が、最終的には、眉を下げてばつが悪そうな、申し訳なさそうな顔でシンを見上げる。


「…助かった。ありがとう。」


ぼそりと呟かれた言葉に、シンが目を瞬かせたあと盛大に声を上げて笑った。


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