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時空の風 -竜の章-  作者: 穂積
■本編
53/112

調査 6

大地の焔


海原の風


巡る、廻る、黒い星




謳えよ謳え、命の奏で


叫べよ叫べ、魂の声




願いを集め、眠る子供と


非情な神の子守唄


白い闇が守るのは


永久とわの誓いと業苦の徒





選べ、選べ、運命さだめの環


全てはお前の身の内に


お前の全ては他が為に









白い世界で孤独な子供が歌う。

感情の無いその歌は、聴く者にどこか薄ら寒さを感じさせ、リュウキは小さく身震いした。

それと共に、この不気味な歌を過去にどこかで聞いたような気がして、彼女は更に不快げに眉を寄せる。


例の如く近づくことの出来ない黒髪の子供は、真っ白な空間の中央にぽつんと背を向けて佇んでいた。そして、歌が終わると同時に、子供がゆっくりとリュウキを振り返る。

以前見た夢と違ったのは、そこで夢から覚めなかったこと。

ゆっくりと振り返った子供の顔は、確かにリュウキの知る日本人の子供のようだった。この世界の人種はどちらかというと欧米風の顔形をしているので、東洋の顔立ちは珍しい。

長い髪をベールのように引き摺りながら、黒い子供が一歩こちらへ近づいた。




―――――…。



「え?」



―――――…。



「何?何がいいたい?」


子供がゆるりと首を傾げながら、真っ黒な瞳で真っ直ぐにリュウキを見つめ何かを告げている。その声らしき音は聞こえていたが、肝心の何を言っているかが解らなかった。



――――…る。


――な、契約の時が来る。



「契約の時?」


リュウキの声が届いているのだろうか、彼女の問いに子供がゆっくりと頷いた。

その瞬間、曖昧だった子供の声が、意味を成してリュウキの耳に届く。



――古の契りがほどけ、新たな契約の時が来る。


――青い星の愛し子たち、やさしいやさしい業苦の子よ、


――選べ、時は近い…



「何を言っている?」



――白い檻に我はある。



「それは何処だ?」



――白い檻、全ての集う場所。



「判らない。」



――四つの中心、そらへの扉。



その言葉を残し、子供はゆっくりと目を閉じる。


「おい!待て!!」


子供の瞼に合わせ、リュウキの視界も真っ白に霞んでいった。

リュウキは咄嗟に手を伸ばしたが、夢はそこで途切れた。


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