調査 6
大地の焔
海原の風
巡る、廻る、黒い星
謳えよ謳え、命の奏で
叫べよ叫べ、魂の声
願いを集め、眠る子供と
非情な神の子守唄
白い闇が守るのは
永久の誓いと業苦の徒
選べ、選べ、運命の環
全てはお前の身の内に
お前の全ては他が為に
白い世界で孤独な子供が歌う。
感情の無いその歌は、聴く者にどこか薄ら寒さを感じさせ、リュウキは小さく身震いした。
それと共に、この不気味な歌を過去にどこかで聞いたような気がして、彼女は更に不快げに眉を寄せる。
例の如く近づくことの出来ない黒髪の子供は、真っ白な空間の中央にぽつんと背を向けて佇んでいた。そして、歌が終わると同時に、子供がゆっくりとリュウキを振り返る。
以前見た夢と違ったのは、そこで夢から覚めなかったこと。
ゆっくりと振り返った子供の顔は、確かにリュウキの知る日本人の子供のようだった。この世界の人種はどちらかというと欧米風の顔形をしているので、東洋の顔立ちは珍しい。
長い髪をベールのように引き摺りながら、黒い子供が一歩こちらへ近づいた。
―――――…。
「え?」
―――――…。
「何?何がいいたい?」
子供がゆるりと首を傾げながら、真っ黒な瞳で真っ直ぐにリュウキを見つめ何かを告げている。その声らしき音は聞こえていたが、肝心の何を言っているかが解らなかった。
――――…る。
――な、契約の時が来る。
「契約の時?」
リュウキの声が届いているのだろうか、彼女の問いに子供がゆっくりと頷いた。
その瞬間、曖昧だった子供の声が、意味を成してリュウキの耳に届く。
――古の契りが解け、新たな契約の時が来る。
――青い星の愛し子たち、やさしいやさしい業苦の子よ、
――選べ、時は近い…
「何を言っている?」
――白い檻に我はある。
「それは何処だ?」
――白い檻、全ての集う場所。
「判らない。」
――四つの中心、天への扉。
その言葉を残し、子供はゆっくりと目を閉じる。
「おい!待て!!」
子供の瞼に合わせ、リュウキの視界も真っ白に霞んでいった。
リュウキは咄嗟に手を伸ばしたが、夢はそこで途切れた。