ヌヴェル39 兎も七日
智史は、転校を繰り返していた。
いつも、いじめが原因だ。
智史は、いじめられやすいのかもしれない。
仲のよい友だちもできるのだが、彼がいじめられるようになると、みんな避けるようになり、逃げていった。
気づいてくれる先生もいた。
でも、そんな先生は、智史に転校を勧めるのだ。
何故、いじめられている者が逃げていかなければならないのか。
被害者じゃないか。
加害者である者が、何食わぬ顔で暮らせるというのは可笑しいのではないか。
智史は、いつも怒りがふつふつと沸いてくるのだ。
この学校でも、智史の堪忍袋の緒が切れようとしていた。
いじめグループにクラスから連れ出され、体育館の裏手にきていた。
その頃、智史の家では・・・
「美佐江さん、これ、智史持っていくの忘れよったんとちがうか?」
祖父の茂が、智史の母親・美佐江に見せたのは、智史の空手着の入った袋だ。
今日学校の帰りに道場に寄る予定だった。
「明日、空手の昇段試験じゃろう?もう何段になるんかのう?」
「次上がれば、五段ですわ」
「すごいのう。そや、この空手着わしが学校まで持って行ってやろか?」
「お父さん、そうしていただけると助かります」
いじめグループは、ご推察のとおり智史によってボコボコに打ちのめされました。
“兎も七日なぶれば噛みつく”ということわざがあります。
おとなしくかわいい兎も、毎日のようになぶっていれば、噛みついてくる。それと同じように、どんなに優しい人でも長期間にわたっていじめられたり、辱めを受けると怒り出すということです。
クラスへ戻る途中、智史は考えた。
「また転校かな?空手の昇段試験受けられるかな?・・・どこに行っても何なんだろう?これって・・・」
いじめは、いじめる側といじめられる側だけでなく、はやし立てる「観衆」や、見て見ぬふりをする「傍観者」が存在することでも悪化する。
いじめをなくすには、学校や家庭、地域社会などの周りの大人が連携して、早期発見と未然防止に注力することが重要であり、それは鋭意取り組まれていると信じたい。
この学校も、いじめ問題に本腰を入れることになる。
どうやら、智史の祖父である茂が結構、切れたみたいだ。
参考 文部科学省 学校におけるいじめ問題に関する基本的認識と取組のポイント




