第7話 ―― アリアの糸と、隠された可能性
1日3エピソードくらい更新したいなと思ってます
安宿の狭い部屋。
ルシフェリア、リリ、アリアの3人は、
粗末な卓を囲んで夕食の残りを片付けていた。
ルシフェリアはアリアの蜘蛛の下半身を、
まだ少しだけ意識しながらも、努めて自然に話しかけた。
「アリア、今日はありがとう。
薬草の高いところから糸で取ってくれたおかげで、10束全部揃ったよ」
アリアは蜘蛛の脚を小さく折りたたみ、恥ずかしそうに頭を下げた。
「……いえいえ、フェリさん。
私、糸しかできないので……せめて役に立ちたくて」
リリが優しく微笑んで、アリアの肩に手を置いた。
「アリアちゃんの糸、すごく強くて綺麗だよ。
私、ちょっと触ってみてもいい?」
アリアは少しびっくりしたが、頷いた。
リリがそっと蜘蛛の脚に触れると、細くて丈夫な糸が指に絡まった。
触り心地は意外に柔らかく、温かかった。
ルシフェリアは心の中でステータスを確認した。
【名前:ルシフェリア・ノクス】
【種族:魔王(新生)】
【レベル:3】
【称号:底辺魔王、元社会人ゲーマー、現代知識の持ち主】
【固有スキル】
・現実の交渉術(Lv.5)
・ゲーム脳(Lv.7)
・根性だけは一級品(Lv.10)
・友達力(Lv.6)
・マーケティングの嗅覚(Lv.4)
・魔王の支配契り(Lv.1) ← 新スキル
【特殊状態:魔力枯渇中/封印多数/魔王城崩壊寸前】
(支配契り……これ、アリアと結んだから発動したんだ。
住民の能力を強化できるってことは……
アリアの糸も、もっと強くできるかも?)
ルシフェリアはリリに目配せし、アリアに聞こえないよう小声で囁いた。
「リリ……前魔王の時代、アラクネの部下っていた?」
リリは声を潜めて、首を横に振った。
「……いえ、アラクネの部下はほとんどいませんでした。
前魔王はアラクネを『糸の牢獄』として使おうとしたけど、
戦役前にほとんどが逃げたり、殺されたりして……
生き残ったアラクネは、どこかで隠れて生きてるかも……
アリアちゃんみたいな子が、生き残ってたなんて……奇跡です」
ルシフェリアは少し暗い顔になった。
「……前魔王は、魔物種族を道具みたいに扱ってたんだね。
だからアリアも、こんなに自分を大事にしない……」
リリが優しく言った。
「でも、フェリちゃんは違う。
アリアちゃんの糸を、もっと活かせる場所を作りたいですよね?」
ルシフェリアは頷いた。
「うん。癒しの露店で、糸を使ったグッズを作ったらどうかな。
例えば……糸で編んだハンカチやお守り。
リリの香りを染み込ませて、『癒しの糸お守り』として売る。
糸は丈夫だから、壊れにくいし……アリアのスキルで大量生産できるかも」
リリが目を輝かせた。
「それ、いいです!アリアちゃんの糸、魔力が少し入ればもっと強度が出るはず。
でも……今の私たちの魔力じゃ、強化は難しいかも……」
ルシフェリアはアリアのステータスを、
魔王としてだけ見えるウィンドウで確認した。
【名前:アリア】
【種族:アラクネ(下級魔物)】
【レベル:8】
【スキル】
・蜘蛛糸生成(Lv.6)
・糸操り(Lv.5)
・隠遁糸(Lv.4) ← 糸で体を隠す・擬態する
・毒牙(Lv.3)
【特殊状態:魔力極度低下/差別トラウマ/飢餓状態】
(隠遁糸……!
これ、糸で体を隠して擬態できるスキルだ。
露店で使うと、目立たない場所で商品を作ったり、
危険なとき逃げたりできる……
でも、魔力が極度低下してるから、今はほとんど使えないんだ……)
アリアが突然、恥ずかしそうに口を開いた。
「……フェリさん、私……実は、もう一つスキルがあるんです。
『隠遁糸』って言って……糸で体を覆って、隠れたり擬態したりできるんです。
でも、魔力がほとんどないから……今は使えなくて……」
ルシフェリアは内心で驚いたが、平静を装って笑った。
「すごい! それ、すごく便利だよ。
魔力が回復したら、露店で使えそう!
アリアの糸で作ったお守り、きっと人気出るよ」
アリアは蜘蛛の脚を少し動かし、嬉しそうに頷いた。
「……はい、フェリさん。
私、糸ならたくさん作れます。恩、返します……」
ルシフェリアは心の中で呟いた。
(アリアから隠遁糸を開示された……
これで、露店を隠れて運営したり、危険から逃げたりできる。
でも、まだ魔力が足りない……
まずは、もっと貢がれ相手を増やして、リリの魔力を回復させよう)
――底辺魔王の露店計画は、
新しい住民のスキルとともに、動き始めた。




