第4話 ―― 魅了の香りで、最初の「貢がれ相手」を探す
洞窟の外は、ようやく朝日が差し込んできた。
ルシフェリアはコートをしっかり閉めて立ち上がり、リリの手を取った。
「よし、決めた。
まずは街に戻って、リリの魔力を少しでも回復させる相手を探そう。
殺さずに、魅了で……『貢がれ相手』みたいな感じで。
リリが香りを少しだけ使って、男の人を軽く夢中にさせて……
『このお姉さんたちに、何か貢ぎたい』って思わせるんだ。
それで銅貨をもらったり、食べ物を分けてもらったり……
魔力も少し回復できたら一石二鳥!」
リリは頰を赤らめながらも、目を輝かせた。
「フェリちゃん……それ、いいです。
私、【魅惑の薔薇香】の残り香だけでも、少しなら使えます。
男の人を……完全に下僕にしちゃうくらい強くしなくても、
『この子たち可愛いから、何かあげたい』って思わせるくらいなら……」
ルシフェリアは耳まで赤くなりながらも、頷いた。
「うん!それでいこう。
最初は路地裏とか、疲れた冒険者が休んでる場所で。
私も一緒にいて、危なくなったら止めるから」
二人は森を抜け、ルミナス街の裏門からそっと入った。
朝の街はまだ人通りが少なく、市場の準備をしている人たちがちらほら。
まずは安全そうな路地を選んで座り込んだ。
リリが膝を寄せて座り、軽く息を吐く。
甘い薔薇の香りが、ほんのり周囲に広がった。
「これくらいなら……魔力、ほとんど使わないです」
ルシフェリアはリリの隣に座って、緊張しながら周りを見回した。
(ドキドキする……
これで本当にうまくいくかな……
転生者だってバレないように、普通の町娘っぽくしなきゃ……)
しばらくすると、通りかかったのは30代くらいの商人風の男。
荷物を抱えて疲れた様子で、路地で一休みしようと近づいてきた。
男の目が、リリに止まった。
「……おいおい、可愛い子たちがこんなところで休んでるのか?
魔族の姉妹か? なんかいい匂いがするな……」
リリの香りが効き始めている。
男は自然と二人の前に座り込み、にこにこと笑った。
「疲れてるのか? 俺、市場で果物売ってるんだけど……
これ、食えよ。新鮮だぜ」
男は荷物からリンゴを二つ取り出して、差し出した。
ルシフェリアはびっくりしながら受け取った。
「え……ありがとうございます!」
男はさらに財布から銅貨を5枚出して、リリの手にそっと置いた。
「なんか……お前たちに何かあげたくてさ。また会えたらいいな」
男は満足げに立ち去っていった。
リリが小さく息を吐いて、目を細めた。
「……少し、魔力が回復しました。精気が……ほんの少しだけ、吸えました」
ルシフェリアは目を輝かせた。
「やった! これだよ!リンゴも銅貨ももらえた……
これを繰り返せば、毎日少しずつお金が貯まる!
リリの魔力も回復して、香りが強くなったら……
もっと貢がれ相手が増えるかも!」
二人は顔を見合わせて、くすくす笑った。
その日、路地で休む冒険者や商人、旅人が次々と寄ってきて、
果物、パン、銅貨を「なんとなくあげたくて」と置いていった。
リリの香りはまだ弱いけど、
「可愛い魔族の姉妹が疲れてる」ってだけで、みんな優しくしてくれる。
夕方近くになると、銅貨が30枚近く貯まり、
リリの尻尾も元気にピコピコ動いていた。
ルシフェリアは満足げに笑った。
「これで今日の宿代と明日の食料は確保!リリ、魔力はどう?」
「まだ少しですけど……これなら明日、もっと強い香りが使えそうです」
ルシフェリアは空を見上げて、心の中で呟いた。
(ゲーム脳、効いてる……!
殺さずに、みんなを味方につけながら……
少しずつ、レベルアップしてる気がする)
ステータスウィンドウをそっと呼び出すと、
経験値がほんの少しだけ上がっていた。
新しいスキルはまだ目覚めていないけど、確実に、前進している。
――魔王の成り上がりは、こんな「貢がれ相手」から始まる。




