第32話 ―― ギルドマスターの訪問と、商会の人影
ルシフェリアは屋敷で地図を広げ、
護衛隊の次のルートを調整していた。
「中継拠点Cの設置が終わったら、荷物の種類を増やせるね。
みんなの協力のおかげで、本当に順調だよ」
リリがハーブティーを淹れながら、
「フェリちゃん……
最近、ギルドの視線が強い気がする。
エルドリックさん、何か動いてるのかな?」
ルシフェリアは少し顔を曇らせ、
「うん……私も感じてる。
セレナさんに聞いてみようか」
その頃、黒薔薇商会。
セレナは店のカウンターで帳簿を閉じ、
使いの少女に声をかけた。
「フェリに伝えておいて。今日の売上は銅貨1200枚超えよ。
交易路の効果が出始めてるわ」
使いの少女が頷き、
「はい!すぐに行ってきます!」
しかし、店の扉が開く音がした。
入ってきたのは、黒いコートを羽織った長身の男。
ギルドマスター、エルドリック。
セレナは一瞬目を細め、
すぐに笑顔を作った。
「これは珍しい。ギルドマスターが、
こんな時間に商会へ。ご用件は?」
エルドリックは店内を見回し、
静かに言った。
「フェリに用がある。ここにいるか?」
セレナは肩をすくめ、
「残念ながら、今日は不在よ。
……それとも、ギルドマスターが、わざわざ足を運ぶなんて、
よっぽどの用件?」
エルドリックは目を細め、
「交易路の件だ。商会名義で動いているのは知っている。
だが、裏にフェリがいるのも、ほぼ確信している」
セレナはくすりと笑い、
「確信、ねぇ。証拠はあるの?
ないなら、ただの憶測よ」
エルドリックは一歩近づき、低く言った。
「証拠はこれから集める。
俺は、ルミナスを乱す者を許さない。
フェリが『調和』を望むなら、協力してもいい。
だが、もし支配の意志があるなら……俺が止める」
セレナは微笑んだまま、
「ふふ……ギルドマスターらしいわね。
フェリに伝えておくわ。
『エルドリックさんが、直接会いたがってる』って」
エルドリックは頷き、店を出て行った。
セレナは扉が閉まるのを見届け、
小さく息を吐いた。
「フェリ……ギルドマスターが、
ついに動いたわね。これからが、本当の勝負よ」
ルシフェリアは屋敷でセレナからの連絡を受け、
静かに頷いた。
「エルドリックさん……直接会いに来るなんて。
……会おう。私の道を、ちゃんと伝えたい」
リリが心配そうに、
「フェリちゃん……危なくない?
ギルドマスターだよ?」
ルシフェリアは優しく、
「大丈夫。話せば、わかってくれるはずだよ」
その頃、剣の亡霊は一人、
交易路の森の奥で剣を振っていた。
赤い目が、静かに光る。
(……調和か。俺は、剣を振るうことしか知らない。
だが、あの少女の道は、俺の剣を、少しだけ、違う方向に向けさせる……)
剣の亡霊は剣を収め、
ルシフェリアの屋敷の方向を見た。
(……もう少し、見てみようか。
俺の剣が、お前の道を、守れる日が来るのか……)
――ギルドマスターが動き出し、
剣の亡霊の心が揺れ、交易路が拡大していく中、
ルシフェリアは、新たな局面に立ち向かおうとしていた。




