第3話 ―― 赤い瞳が目立ち、森の奥で作戦会議
初心者なんで、やさしくしてください。
まとめて書いた分の投稿です(3/5)
路地裏の薄暗がりに、三人の酔っ払った冒険者がじりじりと迫ってきた。
「おいおい、そこの魔族の嬢ちゃん……
その真っ赤な瞳と立派な角、
しかも後ろに可愛いサキュバスっぽいメイドまでくっついてる……
高貴な魔族のお嬢様じゃねえのか?
こんな夜に路地裏をうろついてるなんて……
ちょっと連れてって、高く売れそうだな……」
ルシフェリアは全身を硬直させた。
(やばい……!高貴な魔族……?誘拐される……!
赤い目と角が目立ってる……リリが従者みたいに見えてる……!
魔王だってバレたら終わりなのに……!)
声が出ない。
心の中でパニックが爆発する。
リリが小さく息を吸った。
「フェリちゃん……後ろに下がっててください」
リリはなけなしの魔力をかき集め、両手を胸の前で軽く交差させた。
サキュバス固有の技――
【魅惑の薔薇香】
彼女の体から、甘く濃厚な薔薇のような香りがふわりと広がった。
同時に、瞳が淡いピンクに輝く。
「ねえ……お兄さんたち…… そんな怖い顔、しないで……
今日は三人とも、疲れてるんでしょう?
ちょっとだけ……私に、任せてくれない?」
声がとろけるように甘く響き、香りが男たちの鼻をくすぐる。
三人の目が一瞬で虚ろになった。
「……あ……あぁ……いい匂い……」
「なんか……体が熱い……」
リリはさらに一歩踏み出し、指先で一番近くの男の頰を優しく撫でた。
「そう……いい子ね…… ここで少し、休んでて……
後で、たっぷり遊んであげるから……」
男たちはその場でへたり込み、だらしなく笑いながら動かなくなった。
リリは魔力をほぼ使い切り、ふらふらと膝をついた。
「フェリちゃん……今です……走って……!」
二人は全力で路地を駆け出し、街の外れから森へと逃げ込んだ。
街から少し離れた、木々が密集した隠れ場所(リリが以前に知っていた小さな洞窟)へ急いだ。
魔王城までは森を抜けて丸一日近くかかる距離なので、
今すぐ帰るのは危険すぎる。
洞窟の中に転がり込むと、
ルシフェリアは壁に背中を預けて大きく息を吐いた。
「……はあ……はあ…… リリ、今の技……すごかった……
サキュバスって、そんなことできるんだ……!?」
リリは地面に座り込み、弱々しく笑った。
「はい……【魅惑の薔薇香】っていう、
男の人を一時的に魅了する技です。
でも、魔力がほとんどないので、長くは持ちません……」
ルシフェリアは震える手で自分のステータスウィンドウを呼び出した。
【名前:ルシフェリア・ノクス】
【種族:魔王(新生)】
【レベル:1】
【称号:底辺魔王、元社会人ゲーマー、現代知識の持ち主】
【固有スキル】
・現実の交渉術(Lv.5)
・ゲーム脳(Lv.7)
・根性だけは一級品(Lv.10)
・友達力(Lv.6)
・マーケティングの嗅覚(Lv.4)
【特殊状態:魔力枯渇中/封印多数/魔王城崩壊寸前】
「……やっぱり、私には戦闘スキルとか誘惑スキルとか何もない……
ただの地味スキルばっかり……」
暗い影が彼女の顔を覆う。リリが自分のステータスを小さく表示した。
【名前:リリィス(リリ)】
【種族:上級サキュバス(封印中)】
【レベル:12】
【スキル】
・魅惑の薔薇香(Lv.4)
・夢魔の囁き(Lv.3)
・魔力吸収(Lv.2)
・家事全般(Lv.8)
【特殊状態:主従契約/魔力極度低下】
「私も……ほとんど封印されてて、さっきの技が限界です……
もう少し魔力があれば、もっと強くできたのに……」
ルシフェリアは膝を抱えて小さくなった。
「……作戦会議、しよう。
まずは、私の赤い瞳と角をどうやって隠すか。
リリの魔力を回復させる方法。
それから……本当に信頼できる人を、慎重に探していくこと。
この底辺魔王生活、思ったよりずっと危ないね……」
リリが優しくルシフェリアの肩に寄りかかった。
「でも、フェリちゃん…… 私、ずっと一緒にいますから。
一緒に、なんとかしましょう」
ルシフェリアは小さく頷き、暗い洞窟の中で、
初めて本気で「どう生きるか」を考え始めた。
――魔王とメイドの、森の奥での作戦会議が始まった。




