第29話 ―― 交易路の本格運用と、覇王の視線
何本上げられるか…
護衛隊の初任務成功から1週間。
廃墟の交易路は、
ミリアスの計画とセレナの裏工作で、
本格的に動き始めた。
ルシフェリアは屋敷の会議室で、
地図を広げて隊員たちに言った。
「今日から、本格的な交易開始です。
ルナさん、ルートの中継拠点で補給管理をお願い。
ガルドさん、シルヴィアさん、前衛と後衛の指揮を。
剣の亡霊さん……あなたには、
最重要区間の護衛を任せたい」
剣の亡霊は無言で頷いた。
赤い目だけが、鎧の隙間から静かに光っていた。
ミリアスが地図に指を這わせ、
「ルートAは安定。崩落トンネルは迂回、
盗賊巣窟は囮で回避、森は月桂香を最小限に。
補給は中継拠点Bで事前配置。
失敗リスクは5%未満だ」
ルナは帽子を押さえながら、
「補給係、私に任せてください!
風の魔法で運搬も早めます!
……寝坊しないようにします!」
ルシフェリアは微笑み、
「ルナさん……頼りにしてるよ。
みんなで、安全第一で」
セレナが最後に言った。
「商会は裏から全力サポートするわ。
最初の3往復はテスト。
成功すれば、月間銅貨5000枚は確実。
失敗すれば……商会ごと狙われるかもね」
隊員たちは一斉に頷いた。
「任せろ!」「行くぜ!」「絶対に成功させる!」
交易路の本格運用が始まった。
最初の往復は順調だった。
中継拠点Bで補給を確保し、盗賊巣窟を囮で回避。
森の魔物も、剣の亡霊の剣とルナの火の玉で一掃した。
2往復目も、3往復目も、大きなトラブルなく終了。
ルシフェリアは屋敷に戻った隊員たちを迎え、
「みんな、無事でよかった……ありがとう」
ガルドが斧を下ろし、
「これくらい、楽勝だぜ!
お守りなしでも、俺たちでやれた!」
ルナは帽子を飛ばし、
「私、役に立てた!また呼んでくださいね!」
剣の亡霊は無言で剣を収め、
ルシフェリアのほうを一瞬見た。
その夜、ルシフェリアはセレナから新たな連絡を受けた。
「フェリ……ヴェルディアから、
また使者が来たわ。
今度は、アルトじゃなくて、もっと高い地位の者よ。
『覇王が、フェリに直接会いたい』って」
ルシフェリアは息を飲んだ。
「覇王が……直接……」
セレナは静かに、
「覇王は、あなたの『調和』に興味を持ったわ。
交易路の成功を見て、『力による統一』に、
少し揺らいでるのかもしれない。
……どうする?」
ルシフェリアは深呼吸して、
「会います。直接、覇王様に、私の道を伝えます」
セレナは小さく頷き、
「わかった。商会経由で、安全な場所を用意するわ。
気をつけてね、フェリ」
ルシフェリアは窓から、遠くの国境を見つめた。
(……覇王様……あなたは、私の道を、受け入れてくれる?それとも……)
――交易路の本格運用が始まり、
覇王の視線が、ルシフェリアに注がれていた。
底辺魔王の成り上がりは、新たな道と、大きな選択の前に立っていた。




