第27話 ―― 訓練の炎と、剣の亡霊の視線
本日1本目~!
屋敷の裏庭は、朝から護衛隊の訓練で活気づいていた。
ミリアスが隊員たちを前に立ち、淡々と指示を出した。
「今日はお守りなしでやる。純粋な実力と連携を試す。
戦闘時は、俺の合図で動け。
まずは盗賊巣窟の再現から始める」
ガルド(オーク戦士)が斧を肩に担ぎ、
「よし!お守りなしでも、
俺の斧でぶっ飛ばしてやるぜ!」
シルヴィア(エルフ弓使い)が弓を構え、
「後方から援護します。お守りなしなら、
より正確な射撃が必要ですね」
ルナ(魔導士)は帽子を押さえながら、
「火の玉連射、準備OKです!
風の壁も張れます!
……寝坊しないように頑張ります!」
剣の亡霊は無言で剣を抜き、
赤い目だけが鎧の隙間から光っていた。
ルシフェリアはリリとセレナの横から見守り、
「ミリアスさん……みんなを頼みます」
ミリアスは頷き、
「任せろ。お守りなしだからこそ、
本当の連携が見える」
訓練は過酷だった。
囮部隊(ガルド+ルナ+剣の亡霊)がダミー盗賊を引きつけ、
本隊(シルヴィア+他隊員)が裏道から抜ける。
お守りがない分、隊員たちの息がすぐに上がった。
ミリアスは冷静に、
「囮部隊、撤退速度が遅い。ルナ、風の壁で援護しろ。
ガルド、前進を止めるな!」
ルナが風の壁を張り、
ガルドが斧を振り回してダミーを薙ぎ払う。
剣の亡霊は一瞬でダミーを斬り裂き、
囮部隊の撤退をカバーした。
訓練終了後、ミリアスは隊員たちに言った。
「初回にしては上出来だ。
だが、実戦ではお守りなしの時間も長い。
明日から、夜間訓練を追加する」
隊員たちは頷き、散っていった。
ルシフェリアは剣の亡霊が去る背中を見て、
セレナに小声で言った。
「剣の亡霊……訓練中も、
ほとんど言葉を発しないですね。
赤い目……私と同じなのに、
何を考えてるのかわからない……」
セレナは静かに、
「彼は帝国の特務隊として、
ルミナス国境の監視任務も兼ねてるわ。
本当の目的は……フェリの動きを見張ってる可能性が高い」
ルシフェリアは拳を握り、
「見張り……なら、
ここで味方にできれば……一番いいけど……」
セレナはくすりと笑い、
「面白いわね。彼が本物の魔物だったら、
どうする?転生者じゃなく、
古い魔物種族の生き残り……という噂もあるわ」
ルシフェリアは息を飲んだ。
「魔物……?それなら、私と同じ……
仲間になれるかも……」
その夜、リリは作業部屋で一人、
新たな香りの試作に取りかかっていた。
「フェリちゃんが
『闘争用だけど、癒し寄りにしたい』って言ってたから……
月桂香を、少し優しく調整してみよう」
リリはヴェルディアから送られてきた本を参照しながら、
月桂の葉をすり潰し、自分の魔力を混ぜ始めた。
「闘争本能を高めるけど、
痛みを感じづらくなる効果も加えられたら……
戦うみんなの負担が少し減るかも」
リリは魔力を集中させ、葉を丁寧に練り続けた。
やがて、淡い緑の光がリリの周りに広がった。
その瞬間、リリのステータスに変化が起きた。
【リリィス(サキュバス)】
【スキル:月桂香(試作) → Lv.1】
効果:月桂樹をモチーフにした香り。
対象者の闘争本能・アドレナリンを刺激し、
戦う前に纏うと集中力・決断力が向上。
レベルアップにより、
痛みを感じづらくなる効果が追加される。
持続時間と範囲はレベルに応じて拡大。
リリは額の汗を拭い、
少し疲れた笑顔で呟いた。
「できた……これなら、護衛隊のみんなが、
少しでも安全に戦えるかも。
でも、闘争用って……やっぱりちょっと複雑な気持ちだな」
ルシフェリアが部屋に入ってきて、
リリを抱きしめた。
「リリ……ありがとう。本当に助かるよ。
これで、みんなを少しでも守れるね」
リリは照れくさそうに、
「フェリちゃん……これからも、
一緒にがんばろうね」
――護衛隊の訓練が始まり、
リリの月桂香が完成した。
底辺魔王の成り上がりは、
新たな仲間と、未知の敵に囲まれながら、
次の試練に挑もうとしていた。




