第23話 ―― セレナの提案と、廃墟の交易路
2本目~~!
商会店舗の奥部屋。
セレナは古い地図を広げ、
ルシフェリアとリリを前にして切り出した。
「フェリ……ヴェルディアの使者は一旦置いといて、
今日は別の話よ。
屋敷の修繕費、魔王城の修繕費……
今の隠れ店舗の売上だけじゃ、追いつかないわ」
ルシフェリアは少し身を乗り出し、
「新しい資金調達の手段……
ってことですか?」
セレナは地図を指差した。
「ルミナスとヴェルディアの国境近くに、『廃墟の交易路』があるの。
前魔王時代は魔物と人間の交易で賑わってた街道よ。
戦争で途絶えて、今は盗賊や野生の魔物が跋扈してる危険地帯。
でも、基盤はまだしっかりしてる。
お守りを活用すれば、安全な交易路として復活できるわ」
リリが目を丸くした。
「交易路……それで資金を稼げるってこと?」
セレナは頷き、
「そう。商会が裏ルートで通行権を確保して、
フェリ側が『癒しの護衛隊』を組織。
お守りで疲労回復、怪我軽減、士気維持。
ルミナス側の特産品(工芸品・食料)と
ヴェルディア側の特産品(鉱石・薬草)を交換すれば、
月間銅貨5000枚は固い。
屋敷の修繕費、魔王城の修繕費、領地拡大の資金……全部賄えるわ」
ルシフェリアは地図を覗き込み、
「でも……盗賊や魔物の襲撃はどうするの?
お守りだけじゃ、護衛隊が持たないかも」
セレナは自信たっぷりに笑った。
「だからこそ、ミリアスくんの知識が必要なの。
彼がいれば、安全ルートを再設計できる。
フェリ、あなたが『調和』を掲げてるなら、
この交易路は、人間と魔物の橋渡しになるわよ」
ルシフェリアは少し考え、
「ミリアスさん……軍師として、
この交易路の護衛計画を任せられないかな?
あなたなら、安全ルートを考えてくれそう」
セレナは地図の要所を指差しながら、
「この街道には3つの危険区間があるわ。
1つ目は崩落トンネル、2つ目は盗賊の巣窟、3つ目は野生魔物の群れが頻出する森。
ミリアスくん、どう凌ぐ?」
ミリアスは地図をじっと見つめ、
すぐに指で線を引いた。
「まず、崩落トンネル。このまま通ると、
いつ崩れるかわからない。迂回ルートAは距離が2倍になるけど、
安定してる。ネックは補給だ。水と食料が途中で尽きる可能性が高い」
ルシフェリアは頷き、
「補給をどうする?中継拠点を置くのは?」
ミリアスは即答した。
「それが現実的。中継拠点Bを森の入り口に設置。
事前に食料と水を隠しておく。
でも、隠し場所がバレたら盗賊に奪われる。
だから、隠し場所は3箇所に分散して、
本物は1つだけにする。これでリスクを分散できる」
セレナが地図に印を付けながら、
「いいわね。次、危険区間2の盗賊巣窟。
ここは人数が多い。お守りの暗示効果で誘導できる?」
ミリアスは首を振った。
「暗示は効くが、全員に効く保証はない。
戦闘になったら、護衛隊の損耗が大きい。
俺の提案は、『囮部隊』だ。
護衛隊の半分を囮にして、本隊は裏道から抜ける。
囮は月桂香で士気を保てば、逃げ切れる可能性が高い」
リリが不安げに、
「囮部隊……危なくない?誰が行くの?」
ミリアスは淡々と、
「俺が囮の指揮を取る。戦闘経験はないが、
父の戦術を応用すれば、逃げ切れる。本隊はフェリが率いる。
お守りの効果を最大限に活かせば、森の魔物も突破できる」
ルシフェリアは少し緊張しながら、
「ミリアスさん……本当に大丈夫?
あなたが囮なんて、危険すぎるよ」
ミリアスは静かに、
「俺がやる。父の遺志を活かすためだ。
……それに、ここが『次期の主』の場所なら、
俺は命を賭けてもいい」
セレナが最後に言った。
「じゃあ、危険区間3の森は、
月桂香を試す価値はあるわね。
戦闘になっても、恐怖を軽減すれば勝率が上がる。
護衛隊の募集は商会経由で出すわ。
高額依頼として、冒険者ギルドに『国境交易護衛』って出す。
これで、ギルドも黙認してくれるはず」
ルシフェリアはみんなの顔を見て、
深呼吸した。
「懸念点は全部洗い出したね。
一つずつ潰していく。
ミリアスさん……ありがとう。
あなたがいてくれて、本当に心強いよ」
ミリアスは小さく頷き、
「任せろ。父の知識を、ここで活かしてみせる」
……廃墟の交易路の復活は、
新たな試練の始まりだった。




