第2話 ―― 街に着いた魔王、「フェリア・ノクス」として生きる
書き溜め分です、初心者なんで見逃してください。
ルミナス街の正門をくぐった瞬間、
ルシフェリアはマントをぎゅっと握りしめた。
「……人が多すぎる……」
石畳の道に馬車が行き交い、
人間も獣人も魔族も普通に肩を並べて歩いている。
花の香りとパンの匂いが混じって、なんだか懐かしいような、
でも完全に異世界の空気。
心臓がバクバク鳴っていた。
(私、日本から来たって絶対にバレちゃダメ……!
スマホとかコンビニとかリモートワークとか、絶対口に出さない……!
バレたら「この子、何言ってるの?」って思われて、街にいられなくなる……
最悪、捕まって実験とか……怖い……怖いよ……)
額の小さな角をマントのフードで隠し、赤い瞳を伏せて歩く。
黒と赤の露出の高いドレスが風に煽られるたび、
太ももが見えそうになって顔が熱くなった。
(この服、恥ずかしすぎる……
社会人として、こんな格好で街を歩くなんて絶対無理だったのに……!
魔王なのに、なんで転職初日からこんな……)
隣を歩くリリが尻尾をぴょこぴょこさせながら小声で言った。
「ルシフェリア様、まずは服を買いましょう!
私、魔晶石の欠片を持っていますから、少しお金になりますよ!」
「……うん、ありがとう。
リリ、私、この街では本名を全部言うのはやめよう。
『フェリア・ノクス』って名乗る。
ルシフェリアのルシを取ったの。
『フェリ』って呼んでもらえれば、普通の町娘っぽいでしょ?魔王だってバレないように……」
リリが目を輝かせた。
「フェリちゃん、ですね♪
私、2人きりのときはルシフェリア様って呼びますけど、
外ではちゃんとフェリちゃんって呼びます!」
質屋で魔晶石の欠片を換金すると、銀貨18枚しか出なかった。
ルシフェリアは小さくため息をつきながら、
すぐ近くの安い服屋に入った。
店主のおばさんに震える声で説明する。
「こ、こんにちは……田舎から出てきたばかりの魔族です……
地味な服、ありますか……?」
おばさんは角を見てにこにこしながら、
灰色のロングワンピースと丈の長いコートを出してくれた。
試着室で着替えて鏡を見た瞬間、ルシフェリアは小さく悲鳴を上げた。
「……まだ胸元が開いてる……でも、さっきよりはマシ……はず……」
コートを前でしっかり閉じて外に出ると、少しだけ肩の力が抜けた。
次は仕事探し。
求人板の貼ってある酒場へ行った。
「店員募集・経験者優遇・魔族も歓迎」
「すみません……応募したいんですけど……」
店主のおじさんが彼女を見て笑った。
「魔族のお嬢ちゃんか。角可愛いな。名前は?」
ルシフェリアは慌てて答えた。
「フェリア・ノクスです! みんな、フェリって呼んでください!」
店主は「へえ、いい名前だな」と頷き、簡単な試験で注文を取らせた。
……失敗した。
「ハイボール二つと……えっと、モスコミュール?」
「モスコミュール? 何だそりゃ」
(やばっ! 現代のカクテル言っちゃった……!)
ルシフェリアの顔が一瞬で真っ赤になった。
耳まで熱い。
「ご、ごめんなさい! 私の故郷の……変わった呼び方で……!
普通のジントニックでお願いします……!」
店主は大笑いしながらも、
「面白い子だけど、経験が浅そうだし今日は無理だわ」と丁寧に断られた。
次は雑貨屋。
「店番募集・笑顔が明るい人歓迎」
ここも面接っぽい話をして好印象だったのに、在庫確認でつい口が滑った。
「この商品、バーコード……じゃなくて、値札の管理どうしてますか?」
店主のおばさんが「???」という顔で固まる。
ルシフェリアは耳まで真っ赤になって必死に訂正した。
「ご、ごめんなさい! 田舎の……独特の呼び方なんです……!」
結局ここも「もう少し経験ある子がいい」と言われて断られた。
夕方近く、銀貨もほとんど残っていない。
ルシフェリアは路地裏のベンチに座り込み、小さく震えていた。
(バレてる……絶対バレてる…… 転生者だって思われてる……
このままじゃ街にいられないかも……どうしよう……怖い……)
リリが心配そうに尻尾を垂らして寄り添う。
「フェリちゃん……今日はもう宿を取って、明日また頑張りましょう……」
「うん……そうだね……」
二人が安宿を探して細い路地を歩いていると、
突然、後ろから酔っ払った冒険者三人組が声をかけてきた。
「おいおい、そこの魔族の娘……その真っ赤な目と立派な角……
まさか魔王の血筋じゃねえよな?
しかも後ろにサキュバスっぽいメイドまでくっついてるし……
なんか上品すぎるんだよ、お前ら」
ルシフェリアはびくっと全身を硬直させた。
(やばい……! 赤い瞳と角が……!リリが従者みたいに見えてる……!
魔王だってバレる……!)
男の一人がにやりと笑って近づいてくる。
「ちょっと顔見せてみろよ。そんな赤い目、普通の魔族じゃねえだろ?
お前、実は魔王の関係者じゃねえの?」
ルシフェリアの声は小さく震えていた。
「……放っておいてください」
男たちは笑いながらさらに距離を詰めてくる。
その瞬間――。




