第13話 ―― 試験の成果と、新たな目覚め
今日の3本目~
1週間が経った。
納屋の朝は静かだった。
ルシフェリアは子供たちを連れて老魔物の洞窟へ向かった。
洞窟に着くと、
老魔物は入り口で杖を突いて待っていた。
「期限だ、フェリ。今日が最後だ。
街の真ん中まで歩きながら、暴発を抑えろ。
できなかったら……俺はもう関わらん」
子供たちは緊張しながら頷いた。
ルシフェリアも一緒に並び、
「みんな……一緒に頑張ろう」
老魔物は杖を地面に叩きつけ、「出ろ!」
一行は洞窟を出て、街外れから中心へ向かった。
廃墟の道を抜け、路地を進み、市場の端へ。
冒険者や商人たちが行き交う中、
子供たちの感情が少しずつ高ぶった。
ガルが拳を握りしめそうになるたび、
「親父は……守るためじゃなかった!」と小声で吐き出し、
魔力を足元へ循環させて抑えた。
レイラは翼を広げそうになるたび、
「お母さんの翼……奪われた!」と息を吐き、
風圧を指先で閉じ込めた。
ザクは膨張しかけるたび、
「僕だけ生き残った……」と呟き、膨張を最小限に。
ミナは炎が噴き出しそうになるたび、
「私の炎で……家族を……」と自責を吐き、炎を掌に閉じた。
ルシフェリアも歩きながら、
「みんなを守りたいのに……まだ弱い!」と心の中で叫び、
自分の魔力を循環させて抑えた。
街の真ん中まで、何事もなく到達した。
老魔物は杖を突き、
「ふん……よくやったな、フェリ。
小娘どもも……少しはマシになった」
ルシフェリアは息を吐いて、笑顔になった。
「ありがとうございます……先生」
老魔物は子供たちを一瞥した後、
ルシフェリアにだけ近づき、
低い声で、こそっと耳打ちした。
「フェリ……お前さんが魔力を暴発させたら、町中が大変なことになる。
この町にはいられなくなるぞ」
ルシフェリアはびくりと体を震わせた。
老魔物は赤黒い目を細め、
「赤い目……高貴な血筋の小娘。
お前の中の魔力、俺の教え子たちよりずっとヤバい。
抑えきれなくなったら……誰も助けられん。
わかってるな?」
ルシフェリアは喉を鳴らして頷いた。
「……はい。絶対に……抑えられるようにします」
老魔物は低く笑った。
「ふん……生き延びろよ、フェリ」
老魔物は洞窟へ戻り、姿を消した。
ルシフェリアは子供たちを抱きしめた。
「みんな……よく頑張ったね。
これで、少しは安心して暮らせるよ」
その瞬間、ルシフェリアのステータスに変化が起きた。
【レベル:5 に上昇】
【魔王の支配契り(Lv.2)】(レベル維持)
効果強化:住民の能力を少し強化。
住民の魔力制御を一時的に共有可能。
住民が危機に陥ったとき、フェリの魔力が自動的に援護する。
さらに、子供たち一人ひとりのステータスにも変化が起きた。
【ガル(子オーク)】
新スキル目覚め:守護の咆哮(Lv.1)
効果:怒りを力に変換し、仲間を守るバリアを張る。
【レイラ(子ワイバーン)】
新スキル目覚め:風の翼(Lv.1)
効果:風圧を制御して飛行速度を上げ、仲間を運ぶ。【
ザク(子トロル)】
新スキル目覚め:再生の盾(Lv.1)
効果:膨張を抑えて再生力を集中、仲間を盾にする。
【ミナ(子サラマンダー)】
新スキル目覚め:炎の制御(Lv.1)
効果:炎を掌に閉じ込め、仲間を暖める。
ルシフェリアはステータスを見て、目を丸くした。
(みんな……新スキルが目覚めた!
私の力が、みんなに届いたんだ……)
子供たちも自分の変化に気づき、驚いた顔をした。
ガルが拳を握って言った。
「僕……今、なんか力が湧いてきた!
これで……守れるかも」
レイラは翼を軽く広げ、
「飛べる……! もっと高く、もっと速く!」
ザクは体を少し膨張させて、
「これなら……みんなを守れる」
ミナは掌に小さな炎を灯し、
「炎……怖くない……暖かい」
ルシフェリアはみんなを見て、笑顔になった。
「みんな……すごいよ。
これで、もっと強くなれるね」
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納屋に戻ると、リリとアリアが待っていた。
リリが深刻な顔で言った。
「フェリちゃん……今日、ギルドの人がまた来たの。
『許可がないなら撤去する』って……
もう、今日中に申請しないと、明日には店を壊されるかも」
ルシフェリアは拳を握った。
「……わかった。
申請したら身元調査でバレる。
撤去される前に、自分たちで一旦引こう」
アリアが蜘蛛の脚を震わせた。
「フェリさん……私の糸、まだ弱いけど……
商品を隠して、こっそり売ることはできます。
少しだけ……」
ルシフェリアは頷いた。
「うん。露店は一旦撤退する。
でも、ハンカチが有用だってバレ始めた今がチャンス。
店がなくなったのに、噂が広がってる……
隠れて、こっそり売る方法を考えよう。
『噂の癒しのお守り』って感じで、需要を溜め込んで……
いつか、堂々と出せるようにする」
リリが微笑んだ。
「フェリちゃんの作戦……好きです。
私、もっと精気を吸って魔力を回復します。
アリアちゃんの糸も、もっと強くできるように……」
子供たちは少し不安げだったが、
ガルが拳を握って言った。
「僕……守るよ。
フェリさんが守ってくれたみたいに……」
ルシフェリアはみんなを見て、決意した。
「ありがとう。みんなで、一緒に」
――露店は戦略的に撤退した。
しかし、ハンカチの有用性がバレ始め、
店がないのに噂だけが広がっていた。
底辺魔王の成り上がりは、影に潜りながら、次の手を考え始めた。




