第1話 ―― ログアウト不能、魔王転職完了
初めて書いているので、多めに見てください
「……は?」
画面が真っ暗になった瞬間、
いつもなら「接続エラー」の表示が出るはずだった。
なのに、出たのは真っ赤な文字。
【警告:アカウントが管理者権限を強制剥奪されました】
【魔王継承プロトコル発動。転送開始】
「え、待って待って! 何これバグ!? 運営!?」
叫んだ声が、自分の喉から出た音として響いた瞬間
――世界が反転した。
視界がぐるぐる回って、胃が浮くような浮遊感。
次に感じたのは、冷たい石の床と、古い石窟の匂い。
「……ここ、どこ?」
体を起こそうとして、違和感。胸が……重い。
髪が長く指に絡まる。
爪は長くて尖ってる。
肌は妙に白くて、指先が少し赤黒い。
慌てて立ち上がって自分の体を見下ろす。
黒と赤を基調にした、露出度の高いドレス。
肩から長いマントが垂れ、裾は床を引きずる。
額に冷たい金属の感触――小さな角?「角……生えてる……!?」
同時に、頭の中に直接響く声。
【ようこそ、新たな魔王様】
【この世界「エテルノス」へ。おめでとうございます。
あなたは今、魔王「ルシフェリア・ノクス」として転職しました】
「転職!? 私、ただの社会人ゲーマーなのに!?」
【前魔王が最後の力で召喚した「適性者」です。
あなたはゲーム内で魔王アカウントを所有していましたね】
「いや、あれはただのネタ枠で……メインじゃないし!」
【関係ありません。システムは「魔王の座」を引き継ぐ者を自動選択します。
そしてあなたが選ばれました】
ステータスウィンドウが浮かぶ。
【名前:ルシフェリア・ノクス】
【種族:魔王(新生)】
【レベル:1】
【称号:底辺魔王、元社会人ゲーマー、現代知識の持ち主】
【固有スキル】
・現実の交渉術(Lv.5)
・ゲーム脳(Lv.7)
・根性だけは一級品(Lv.10)
・友達力(Lv.6)
・マーケティングの嗅覚(Lv.4)
【特殊状態:魔力枯渇中/封印多数/魔王城崩壊寸前】
「……最悪じゃん」
周りを見回すと、そこは確かに魔王城の大広間。
壁にひび、天井から水滴、床は埃と蜘蛛の巣だらけ。
隅に古い宝箱があるけど、中は空っぽ。外から声が聞こえてきた。
「魔王様ぁ〜! 生きてましたぁ〜!?」
扉がバーンと開いて、小柄な女の子が飛び込んでくる。
角と尻尾、サキュバスっぽい。
「生きてるって……当たり前じゃん。てか誰?」
「私、リリ! リリィス! 魔王城のメイド長です! ……今は私一人だけど!」
リリは泣きそうな顔で駆け寄る。
「前魔王様が倒れてから、もう3ヶ月……誰も来なくて、魔物も逃げて、
貢納も入らなくて、城の修繕費も払えなくて……!」
「待って。貢納? 税金みたいなの?」
「はいぃ……領地の魔物や下級魔族から集めてるんですけど、
もう誰も払ってくれなくて……」
ルシフェリア(るすのくす)はため息をついた。
「……つまり、私、今マジで貧乏魔王ってこと?」
リリがコクコク頷く。
「はい……今日の昼飯も干し肉の残りと水だけです……」
「最悪すぎる」でも、なぜか少し笑えた。チートなし。
スキルは全部「現実で頑張った結果」みたいな地味なもの。
城はボロボロ。
部下はメイド1人。
魔王なのにレベル1。
それなのに、心のどこかでワクワクしてる自分がいた。
「ま、いっか」ルシフェリアはマントを翻して立ち上がった。
「とりあえず、飯食おう。腹減った。
そのあと……この転職先、どうにかするしかないよね」
リリが目を丸くする。
「どうにか……って?」
「世界統一、しよっか」
一瞬、沈黙。リリがぽかんと口を開けた。
「……魔王様、今何て?」
「世界統一。
だって、このままじゃ私とメイド長で干し肉齧って終わりじゃん?
そんな転職先、嫌じゃん?」
ルシフェリアはニッと笑った。
楽観的な、でもどこか暗い影のある笑み。
「だから、まずは金稼ごう。街に出て、アルバイトから始めようか。
……魔王なのに、イベントコンパニオンとか、できるかな?」
リリは呆然としながらも、なぜか頬を赤らめた。
「……魔王様、なんかカッコいいです」
「でしょ?さ、行こっか。まずはこのボロ城から脱出して、街に出よう」
そう言って、ルシフェリアは崩れかけた扉の方へ歩き出した。
――底辺魔王の、転職生活が、今、始まる。




