File No.32 終わった
「すみませーん、すみませーん!」
三人は人混みを掻き分け、何とかエレベーター乗り場にたどり着いた。
しかし、そこに掲げられていた看板には、こう書かれていた。
ーエレベーター運転停止ー
「…階段しかないな」
加江田がそう言うと、三人は再び人混みを掻き分け、階段の方へ向かった。
だが、階段は一階よりもさらに混雑しており、掻き分けて進むことすらできない状況だった。
すると、加江田が言った。
「手すりに登ろう」
「え!? ちょ、待っ…」
宇佐美は戸惑ったが、加江田はすでに手すりに登り、そのまま歩き始めていた。
「ったく、こういうカエルは…行きますよ、高杉君!」
宇佐美はそう言うと、高杉とともに手すりに登り、加江田の後を追った。
三人は必死になって最上階までたどり着き、自動ドアをこじ開けるようにして屋上へ飛び出した。
そこにいたのは、背が高く坊主頭で、この上なく冷酷な表情を浮かべた男、ロペスピエールだった。
彼は機動隊に囲まれていたが、どこか余裕を感じさせる表情をしていた。
「お前らが襲いかかってきたら、このボタンを押す。そうなれば東京は終わり、つまり、日本は終わりということだ」
ロペスピエールは冷酷に脅した。
「さあ、どうする。井中夫妻の息子、加江田?」
挑発するように、ロペスピエールは言った。
その瞬間、加江田は勇気を振り絞り、真っ向からロペスピエールに向かって走り出した。
「ふん、バカな奴め」
そう言うと、ロペスピエールは片手で思いきり加江田を殴りつけた。
すると、宇佐美がロペスピエールの起動装置を持つ手に飛びつき、必死に引き離そうとした。
同時に、加江田は殴られた側の腕を押さえつけた。
その瞬間、ロペスピエールは警察官と機動隊に完全に取り囲まれた。
だが次の瞬間、ロペスピエールは、起動装置を屋上の外へ投げ落とした。
ー終わった…ー
誰もが、そう思った瞬間だった。
すると、加江田は外に飛び降りて、起動装置を捕まえた。
しかし、彼はそのまま真っ逆さまに落ちた。
ーああ、これでもう僕の人生が終わるんだー
加江田はそう確信した。
ーありがとう、みんな…ー
加江田は最後にそう思って、目を瞑ったのだった。




