急な異動
「…新しいチーム?」
岩山は驚いた様子で聞き返した。
「はい。全国から優秀な捜査官を集めて、新しいテロ対策本部を結成すればいいじゃないですか?」
回藤は真剣な表情でそう提案した。
すると厳花は、呆れたように首を振った。
「そんなこと、できるわけないでしょう…」
「いや、素晴らしい。最高のアイデアだ。ぜひ採用しよう」
岩山は厳花の言葉を遮って言った。
「え? ちょっ、岩山部長!」
厳花は混乱した様子で声を上げる。
「大丈夫だ。集める捜査官には、だいたい目星がついている。きっといいチームになる。
まずは司令班のメンバーを決めよう。部長は僕、回藤は相談役でどうだ?」
岩山はそう言ってから、厳花に視線を向けた。
「そして、厳花には副部長を任せたい。引き受けてくれるか?」
少し間を置いて、厳花は微笑んだ。
「…仕方ないですね。チームの副部長、やりますよ」
「ありがとう。あとは俺が全国から優秀な捜査官を集めよう。名前は、平和の意味を込めて、PEACEで行こう」
岩山は頼もしげにそう言った。
一方、殺人事件の現場となった寝室には、背の高い若い男性、井中蛙介警部が立っていた。
彼はしばらく黙って死体を見つめた後、突然こう口にした。
「ああ、もう分かりました。犯人は、あなたですね。草薙美智子さん」
その場にいた全員が息を呑んだ。
「なぜ、そう言い切れるんだ?」
警視の渡邉大輔が、不思議そうに問いかける。
「犯人は、夜の犯行時に携帯電話を使って明かりを取っていたはずです。
なぜなら、片手でなければ、この角度からナイフを突き立てることはできないからです」
井中は淡々と続けた。
「そして、この家で携帯電話を所持していたのは、ただ一人、美智子さん、あなたしかいない。つまり、犯人はあなたです」
その瞬間、美智子は現行犯逮捕された。
井中蛙介は、数々の難事件を解決してきた、まさに天才警部だった。
「やっぱ井中はすげえな」
「さすが天才だ」
周囲の刑事たちは、皆、彼を尊敬し、憧れていた。
井中は有頂天になっていた。
ー最強の地位を手に入れた。
もう二度と、捜査一課を離れたくないー
そう強く願っていた。
しかし、人生に何が起こるかは分からない。
その予感は、ほどなくして現実となった。
ある日、出勤した井中に、渡邉が声をかける。
「井中、すまないが…明日から公安部に異動してくれ」
井中は、一瞬、言葉の意味を理解できず、呆然と立ち尽くした。
そして次の瞬間、叫んだ。
「ええええっ!?」
彼は、途轍もなく驚いていた。




