File No.13 着岸の手前
「分かった。俺がやる」
加江田はそう言って操縦室へ向かい、舵を握った。
しかし、見慣れないボタンや装置を目にした途端、彼は明らかに狼狽えた。
「いいですか? 私もよく分かりませんけど、ここの説明書によると、右に回すと右に曲がって、左に回すと左に曲がるそうです。それで、着岸するときはスピードを落として、斜めから入ってください」
宇佐美は必死に説明した。
「分かった。やってみる」
そう言うと、加江田は面舵をいっぱいに回し始めた。
「あーーー!!何してるんですか!?」
宇佐美は思わず叫んだ。
「え?だって右に回すと右に曲がるって……」
加江田は平然と答えた。
「いや、回しすぎで…あっ!」
宇佐美が言い終わる前に、船は勢いよく右へ旋回した。
「きゃーーー!!」
「うわーーー!!」
宇佐美と高杉は、体を持っていかれそうになり、悲鳴を上げた。
「ごめんごめん。え、あれ? あ……」
加江田がそう言いかけた瞬間、今度は船が思いきり左へ曲がった。
「きゃーーー!!」
「うわーーー!!」
今度は、宇佐美と高杉は反対側へ倒れそうになった。
「カエルさん、操縦下手すぎです!」
壁の凹凸に必死にしがみつきながら、宇佐美は叫んだ。
「これでも頑張ってる方なんだよ!」
加江田も必死に舵を握り、声を荒げた。
気絶している大勢の船員の中には、嘔吐している者もいた。
そのとき、宇佐美は窓の外を見上げ、はっと目を見開いた。
「あ!港が見えてきたわ!!」
船はふらつきながらも、港へと近づいていったのだった。




