ごめん
地獄のお時間が終わり、やっとクッキーにありつけます。
ソファに身を委ね、包み込まれる感。
いや、なんなら包み込まれているのか…それとも僕がソファと一体化してしまったのか?と、思ってしまうくらい、ソファ感半端ない。
おっと、ここでソファに溶け込んでいる場合ではありません。
クッキー、クッキー〜。
瓶の蓋をクルクルとまわして、星の型のクッキーをひとつつまんだ。
この安定のかたさは、間違いない!
パクッと口に頬張ると、やっぱり安定の味だ。
あー、今日一日頑張ってよかった〜。
落書き事件なんて、忘れてしまうくらいに美味しさを堪能…
堪能…
ほぼほぼ、堪能という沼に片足突っ込みつつあったのに…
また思い出してしまう絶望の嵐…
ハートに囲まれた僕と蓮奈の名前が…
なかったことに…
まあさ、かいたのは…相沢さんなんだけど…でも、消されるってさ…
そんなキモいの消せ‼︎今すぐ記憶から消せ‼︎感強いっていうかさ…
何も消さなくても…
いや、キモいから消せ‼︎記憶から抹消しろ‼︎感…半端ないです。
わかっておりますが、ヘコむんです…。
まさか、あんたわたしのこと好きなわけ?やめてよ。幼馴染だからって、そんな気持ち持たないで‼︎
とか…思われてる?
蓮奈は…僕のこと…僕と付き合うなら死んだ方がましって言ったんだ。
僕と話すとき…いつもニコニコしているけど、心では…キモいなぁ…なんでこんなやつと会話しなきゃならないんだよ‼︎って、内心思っているのかもしれない…。
蓮奈は、皆から好かれる陽キャだから…だから、こんな僕にも一応普通にしてくれているだけだろう。
集団生活の圧だろう。
ほんとうは、僕に…キモいからわたしが用事あるとき以外話しかけんなって、言いたいのかもしれない。
でも、そんなこと言ってしまったら、蓮奈の今後の学生生活が危うくなってしまう可能性があるから…だから、キモいのを頑張って抑えて、封印して笑顔の仮面を被っているのだろう。
この前部屋に来た時も、くっせー部屋だなぁって、思っていたはずだ。
あ、だからあの気まずい白っぽい時間があったのか…
蓮奈は、昔からそうだった。
言いたいことを言わないで、溜め込むんだ…。
そして、最後に爆発してめっちゃ泣くんだ。
…
いつか…
いつか蓮奈が僕に、爆発する日が訪れるかもしれない…。
僕は、その時…どうしたらいいのだろうか…。
蓮奈の前から消えるのが一番だけど…
でも、どうやって…
…
バリバリボリボリ バリバリボリボリ無心にクッキーを頬張り、水をゴクゴクと流し込んだ。
ふぅっ…
我にかえり、僕は…反省した。
蓮奈の気持ちを勝手に想像して、挙句に苛立ったり、悲しくなったり…僕ってやっぱりキモいなって、改めて思った。
母さんがせっかく作ってくれたクッキー…
もっと味わうべきだった…。
最後の一個を、じっくり噛み締めた。
あぁ…美味しいよ。
母さん…。
いろんな感情が込み上げて、涙目になってしまった。
「真守…?どうしたの⁈涙目でそんなっ!喉にクッキー詰まらせた⁉︎」
…母さん。
いたんだ…
「あ…いや、あんまり美味しくて…」
「ふふ、ならよかった。そんなに感動してくれたなら、明日も作っちゃおうかな!」
…
「お願いします…」
明日は、ゆっくり噛み締めます。
もしかしたら、僕は喜怒哀楽が激しいのかもしれません。
これは、どうしたら治るのかな…
親に相談なんか…できるわけないし…友達だっていないし…いても、蓮奈蓮奈って蓮奈のことばっかり話しても、やっぱりキモいやつでしかないんだよな…。
そもそも、学校で僕と蓮奈は…ほぼ他人状態だし…。
過去の…過去に一緒に遊んだことが今でも忘れられないキモい僕…。
蓮奈は、どんどんキラキラして前に進んでいる。
なのに僕は…全然先に進めないどころか…過去に戻っている…。
過去に戻って、ずっとしゃがみ込んでいる。
そんな状態なのかもしれない。
蓮奈…ごめんなさい。
こんな僕が君の幼馴染で。
続く。




