そんなつもりは…
最近…相沢さんはよく、忘れ物をするようになった。
この間なんて、シャーペンを忘れたから貸して欲しいといわれ、一日中僕のシャーペンを使っていたりもした。
そして、休み時間もそのシャーペンを持ち歩くのだ。
「え、シャーペン…今ポケットにしまわなかった?」
慌てて相沢さんに質問した。
すると、相沢さんは涼しい顔で
「うん、蓮奈のところで書きものするからさ。大丈夫だよ?無くさないから」
と、相沢さんは行ってしまった。
…
蓮奈は…
相沢さんが僕のシャーペンを使っていることを知ったら…どう思うだろう?
僕は、かなりのマニアックだから…相沢さんがそんなシャーペン使っていたら、必ずそのシャーペンなに?って、いうだろう…。
ただでさえ、僕は蓮奈にキモがられているのに…
蓮奈の友達にまで近づいて、わたしの周りをうめていくつもりなの?って…思われないだろうか…。
僕は…外堀を埋めるつもりは、もちろんない。
でも、あのワークの答えのハートマーク囲いといい、蓮奈のお友達とも親しい感じにみえつつあり…
相当、僕は…蓮奈の中では、消えて欲しいランキング一位なのじゃないだろうか。
そんなことで、蓮奈の一番には…なりたくなかったな。
でも、仕方ない。
一番にのぼり出てしまったのだから…
休み時間が終わると、相沢さんが戻ってきた。
「シャーペン、ちゃんと無くさなかったよ」
と、シャーペンをフリフリしながらみせてきた。
「あぁ…うん」
「でさ、このシャーペンクセ強すぎって蓮奈に笑われたー」
って、笑いながらシャーペンを眺める相沢さん…。
…
僕は、笑えませんけど…
僕のことをあんまり蓮奈に話さないでもらいたい。
僕は、毎日静かな安定した日常を過ごしたんだ。
そっと…だれとも一日中話さなくてもいいんだ。
ただ、その場にいてだれにも迷惑をかけないで静かに…
ただ生かされているだけ。
ここにいるのが義務だから…
だから仕方なくそこにいるだけなのだから。
…
「ねえ、長谷部くんは好きな人いる?」
⁉︎
いきなり…なんてことを…
…
「いない」
「へぇー、そっかぁ」
…
そんなこと聞いてどうするんだ…
相沢さん…
でも、ほんとうは…いるよ?好きな人。
相沢さんは、ほんとは知っているのかもしれないな。
だから、ワークの答えにあんな落書きをしたのだろう。
これは…からかわれているんだろうな。
でも、僕は気にしない。
今までも、色んな人にそういうこばかにされてきたし、慣れっこになったんだ。
ふわっクシュっ‼︎
僕の横でいきなり相沢さんがくしゃみをした。
「大丈夫?はい、ティッシュ」
「うわ、わたしより女子力…」
そう言いながら、相沢さんはティッシュを受け取った。
僕は、いろんなものを常備している。
例えば、絆創膏とかミニ裁縫道具とかね。
なんなら、保健室に行かなくてもいいように、頭痛薬とか風邪薬なんかも持っている。
これは、基本自分用なんだけど困った人がいたら、すぐに差し出したりしている。
友達は、いない。
でも、よく頼られるのだ。
あ、だから?
だから、蓮奈も僕に答え借りにきたのかな?
頼みやすいってのは、僕はいいことだと思っている。
悪いことをするよりも、いいことした方が心地よい。
そうやって、僕は生きている。
毎日が普通。
ほんとうは、そうじゃないし心の波もある。
だけど、学校ではなんでもありません風を装って生きるのだ。
目立たない、当たり前にある壁のように。
そんな僕は、一応運動部に以前は所属していた。
テニス部のレギュラーじゃないけど、出席率はよかったやつだ。
レギュラーよりも、毎日部活に行っていたような気もする。
なんで…毎日コツコツ頑張ってきたのに、こんなにも弱いのだろう?って、思う時もあった。
でも、運動能力は生まれ持っての部分もあるのだろう。
諦めも大事だ。
いや、筋トレとか自主的に鍛えたらいいじゃないって、思いますよね?
それは、やなんだ。
業務外的な感じで。
部活は、部活。
休日は、休息なのだ。
そんな僕が、今日体育で注目を浴びてしまった。
体育種目は、テニス。
もう、すっかり引退したのにからだがなぜか調子よくて、レギュラー陣のボールをポンポンと、返すことができてちょっと驚いた。
「おぉ、すげーじゃん」
って、どこからともなく聞こえた。
でも、体育が終わるといつも通りの日常…じゃなかった。
なぜか、相沢さんが僕に
「すごかったね!テニス上手いね‼︎」
って、褒めまくってくれたのだ。
そしてさらには、今度テニス教えてよって危うく、遊びに誘われるところでした。
あれはまぐれだから、いつもはレギュラーだった人の方が上手だよ、だからレギュラーだった人に教えてもらった方が絶対いいよと、うまく逃げた。
だって、僕はまぐれなんだから。
それに、女の子と遊びに行くなんてどうしていいか、わからないもん。
続く。




