相沢さん
僕は、まだ夕方だというのに寝落ちしていた。
コンコンと、ドアのノックで目が覚めた。
母さんだろう。
キムチ全部食べちゃって、しかも片付けなかったから…
「はい」
と、返事をするとゆっくりとドアがひらいた。
「お、おじゃま…」
⁉︎
えっ⁉︎
れっ、蓮奈⁉︎
「ど、どう…して…」
「携帯みてない?」
ばっと慌てて、携帯をみると…
ワークの答えかしてって、きていた。
なんでわざわざ僕に?
友達に写真送ってもらえばいいのに…
寝ぼけながらも、ワークをバッグからゴソゴソと探しだして、蓮奈に渡した。
「はい」
「あ、あり…がとう。」
「うん」
…
薄暗い静かな部屋で、蓮奈は無言で…僕も無言。
…
このよくわからない白っぽい時間は、なんなのだろう。
…
蓮奈がフッと我にかえったかのように、
「ありがとう。じゃあ、帰る。今日は、ごめん」
と、ワークを持って部屋を出ていった。
…
なんだったのだろう…今の時間は…
⁉︎
僕は、ハッとして慌てて口をおさえた。
キムチ…
さっき、キムチをドカ食いしたから…僕もこの部屋も臭かったんじゃないだろうか…。
…
久々に蓮奈が僕の部屋に来てくれたというのに…
なんてタイミングの悪いことを…
まさか僕の部屋にくるなんて…
知っていたら、こんなにキムチを…
…
あーあ。
せっかくのチャンスだったのになー
…
チャンスでもないか。
僕は、死ぬほど蓮奈から嫌われているんだし。
僕は、僕は…
そうだ…
蓮奈から…
…
絵文字もない、ただただ業務的な蓮奈からの連絡を閉じては、またみて閉じた。
あっ‼︎
ヤバっ‼︎
ワークの答え…
あー…
やってしまった。
…
この間、隣の席の相沢さんにワークかしたら、とんでもない落書きされたんだった…
僕と蓮奈の名前をハートで囲まれて…そのままチャイムが鳴ったから、消すの忘れて教科書に挟んで、そのままにしていたんだった…
終わったわ。
完全にキモいやつじゃん。
なんでだよ…
なんで最近、相沢さんは…僕に絡んでくるのさ…。
昼間だって、学校で蓮奈にあんなこと聞いてさ…
僕になんの恨みがあるっていうのさ…。
早く席替えしたいな。
先生にお願いしてみようかな。
でも、先生に話しかけるなんて僕には大冒険すぎる…よ。
ましてや、席替えなんてそんな大それたこと…。
諦めよう。
落書きも席替えも…。
そう決めた次の日、クラスの人気者男子が、
「先生ー、席替えしようぜー」
と、突如朝から提案した。
その言葉に、クラスのほとんどの人が湧いた。
しかし先生は、
「この前したばかりじゃないの」
と、ピシャリと生徒たちの陽気な心を一気に静めた。
…
あぁ、よかったー…。
僕が提案していたら、一日中落ち込んでまた、キムチ一気食いするところだった。
ありがとう、陽キャ男子。
僕の犠牲になってくれて。
ホッとしていると、隣の席の相沢さんが僕に向かってニッコリしながら、
「よかったね」
って言いながら、自分の前髪を整えだした。
なんで、よかったの?
ふと、外をみると一年生がジャージを着て外にワラワラと出てきた。
そこで気づいた。
…あー、窓際だからか。
と。
窓際は、人気がある。
日当たり良好人気物件だ。
僕が今、不動産屋と手を組めばこの席の物件は、高く売れるかもしれない。
まぁ、学生だから何百円の世界かもしれないが。
そんなこと、現実にしたらそりゃ…ダメだろうけどね。
日向で、ポカポカしながら授業を受けられるのは、ありがたいことだ。
廊下のみなさん、寒いなかの授業お疲れ様です。
日向から、廊下族に憐れみつつ一時間目の準備をした。
「あー、教科書忘れた。ねぇ、長谷部くんみせて♡」
…
「別に構わないけど、でも落書き禁止ね」
僕の言葉に少し不満そうな表情をみせてきた相沢さんは、僕の机に自分の机をくっつけてきた。
そして、
「よろしく〜」
と、自分の教科書かのようにペラペラとページをめくった。
…
なんか…懐かれてしまった?のか⁇
続く。




