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最初の街と、馬鹿にされる職業

第2話です。

前回は黒板とチョークを手に異世界へ転移した直哉。

今回は、最初の街で“教師”という職業がどう扱われているのかが描かれます。

 石畳の道を歩くたびに、靴の裏から硬い音が響いた。

 草原を抜けた先にあった街は、思ったよりも活気がある。

 露店の香辛料の匂い、商人の声、鎧の金属音。

 まるで中世の市場をそのまま切り取ったような光景だった。


 俺は黒板を抱えたまま、街の門をくぐる。

 門番の男が、怪訝そうな目でこちらを見た。


「そこの兄ちゃん、何を運んでるんだ?」


「……黒板です」


「……は?」


 門番の眉がピクリと動く。

 俺はチョークの粉がついた手を見せ、正直に答えた。


「教師をしています」


 一瞬の沈黙のあと、男は吹き出した。


「教師? この国じゃ一番のハズレ職だぞ。

 まさか冒険者ギルドに登録する気じゃないだろうな?」


 笑い声が近くの兵士にも伝わり、数人がこちらを見てニヤニヤしている。

 どうやらこの世界では、“教師”という職業の評判は最悪らしい。


「なぜ教師がハズレなんですか?」


「決まってるだろ。戦えねえからだよ。

 授業なんかで魔物が倒せるか?」


 確かに、戦闘職の多いこの世界では力がすべてなのだろう。

 だが俺は、胸の中で静かに反論した。


(教えることは、命を育てる力だ)


 口には出さず、黒板を背負い直す。

 笑われてもいい。

 俺には“授業の力”がある。


 街の中心には冒険者ギルドの看板が見えた。

 重厚な扉を押し開けると、中は酒場のように賑わっている。

 カウンターの奥に座る女性が、俺を見るなり声を上げた。


「職業登録ですか? 職種は?」


「教師です」


 再び、空気が止まる。

 数秒の沈黙のあと、周囲の冒険者たちが一斉に笑い出した。


「教師ぃ? ははっ! モンスターに算数でも教えるのかよ!」

「黒板で魔法を防ぐのか? いい盾だな!」


 笑い声の中で、俺は一言だけ返した。


「教えることが、世界を変えるんです」


 その瞬間、空気が変わった。

 誰も、何も言わなかった。

 笑い声が消え、視線だけが突き刺さる。


 ギルド職員の女性が、真剣な顔で頷いた。


「……変わった人ですね。登録しておきます、“教師”として。」


 手渡されたプレートには、職業欄に確かにこう刻まれていた。


《職業:教師》


 俺はそれを握りしめ、黒板を背に歩き出す。


 この世界で、授業を始めるために。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

笑われても諦めない、直哉の“教師としての第一歩”でした。

次回は孤児院の子どもたちとの出会い。物語が少しずつ動き出します。

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