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56:神の世界

 転移から三ヶ月。世界は未だに混乱していた。

 そして、その様子を違った場所から見つめる者たちがいた。


「――だから、私は反対だったのです。こんなことをして何の得があるのかと……」


 十二単をまとった黒髪の美女が眉を寄せながら呟く。


「相変わらず君は生真面目だねぇ。君が守護している国のようだ」


 守護神にやっぱり似るのかな、と美女の隣にいる美青年が皮肉るように笑う。


「そういう貴方は相変わらずお気楽のようで…いいのですか?守護地が攻撃を受けているようですけれど」

「いいも何も。僕達が手を出す意味はないだろう?僕達の役目はただ下の者の行動を見守るだけさ」


 青年の言葉にこの場にいた他の者達が同意するように頷く。

 彼らは地球に存在する神格――つまりは神だった。

 神々は数千年に渡って地上にたいして一切の干渉をせずに、日々見守り続けていた…はずであった。なぜ、地球の国々が異世界へ転移したのか。それは地上に干渉しなかった神々によるものだ。

 それこそ「神業」などと一部の人間達が言っていた事態が数ヶ月前に起きたのだ。もっとも、すべての神がそれに賛同していたわけではない。中には「そんなことする必要はない」と反対した神もいた。

 十二単をまとった美女――天照――はその一柱であった。

 一方で、彼女の隣にいる美青年――ヘリオス――はこの計画に賛同していた神の一柱だ。というよりも地球の神域にいる神々の大半がこの計画に賛同していた。

 なぜ、数千年に渡って地上に一切の干渉をしなかった神々がこのような行動に走ったのか。その理由は単純だった。


「まだ納得していないようだが…創世神様の決定を変えることができないのは君も理解しているだろう?」

「もちろん理解はしていますよ…なぜ、創世神様がこのようなことをお認めになったのかは理解しかねますが」


 彼らよりも更に上位の存在――地球という世界を作り上げた創世神「アース」が今回の世界統合を決めたため、多くの神々はその決定に従ったのだ。


「創世神様には創世神様なりの考えがあるんだろう。それは僕達が知るべきことではないよ」


 天照もヘリオスもともに太陽神であり、地球においては「上級神」の立場にある。ただ、神の世界において階級でみれば彼らは一種の中間管理職のような存在でしかなかった。

 ヘリオスはギリシャやイタリアなどのヨーロッパ地域の一部を担当し、一方の天照は日本を中心とした東アジアを担当している。ちょうど、各地に伝わる神話に沿うように神々の管轄というのはわけられており、それらの神々の頂点にたつのが世界を一人で作り上げた「創世神」なのであった。

 これは、地球だけではなく「テラス」など他の世界でも同様だった。



 神の世界の最上部――創造神以外立ち入ることができない区画によく似た容姿をした三柱の女神がいた。彼女たちこそ、今回の複数世界を巻き込んだ「世界融合」を実施した創造神だ。

 よく似た容姿をしているが、それはこの三柱が「姉妹」関係にあるからだ。

 創造した世界も隣り合っており、だからこそ一つの世界へ融合することも可能であった。これが、遠くに離れた世界だった場合はいくら万物を創生したと言われる創造神であっても簡単に世界を融合させることはできなかっただろう。隣り合ったよく似た世界だからこそ、3つの世界は一つに融合することができたのだ。


『――本当にこれでよかったのでしょうか』


 地上で起きている混乱を確認していた地球の創造神――アース――は自分自身の選択が正しかったのか、と疑問に思った。

 それに対して――。


『アースは心配性ね。仮に統合していなくても結果はなにも変わらなかったわ。このままなら歪みは更に拡大し、最終的に世界は滅びの道へ進むことになった。それは、私たちの世界でも同じ。だからこそ、あるべき姿に戻すことを決めたのでしょう?」

『テラお姉様の言う通りです。それに、もう融合を行ってしまった時点でもとに戻ることはできません』


 アースと髪型以外瓜二つの容姿をしたテラスの創造神――テラ――が少し呆れたような口調で返し、他の二柱よりも幼い外見をしているユーリスの創造神――テリア――も同意するように言葉を続けた。

 元々地球やテラスは一つの世界として作られる予定であった。

 しかし、様々な要因が重なって3つの世界にわけられた。それでも、これまで問題なく世界は成熟していったのだが、徐々にであるが世界に歪みが蓄積されそれが限界に近づき始めたのだ。

 近年、地球などで起きている一連の気候変動もまたその歪みによって生じたものであった。

 現在はまだ小さい綻びだが、それが拡大すればやがて世界全体に取り返しのつかない現象をうむ。それは、地上にとっては数百年後や数千年後のことであるが神々の時間感覚からすれば「すぐ先の未来」でもあった。

 だからこそ、条件が整った時に世界融合をすることを創造神たちは決めたのだ。最後まで融合に乗り気ではなかったアースであったが、他の二柱の説得で渋々ながら融合を承諾したのだが、融合後におきた地上の混乱を見て自分の選択は間違っているのでは――と思ったようだ。


『…たしかにそうですね。少し取り乱したようです』


 創造以後。一切地上のことに干渉はしていないがそれでも彼女なりに地上の行く末は気にかけていた。融合によって地球に悪い影響が出るならばテラたちを振り切って地球だけ再度、分離することまで考えていたほどだ。


『貴女が自分の世界に強い愛着を持っているのは理解しているわ。でも、前も説明したとおり。これが私たちの世界のあるべき姿なのよ。今は混乱しているけれどやがて落ち着いていくわ。それは、私たちにとってはすぐのことよ』

『どちらにせよ。もうわたしたちは地上に大きく干渉することはできません。今は見守って部下たちに任せましょう』


 未成熟の世界ならともかく、成熟しきった世界では神は地上へ直接干渉することは許されていない。仮に神々が直接地上に干渉すればそれだけで世界は維持できなくなってしまう。

 実際に、神の干渉によって崩壊した世界というのは多くあった。



『…そうですね。見守ることにしましょう』


 最終的にアースはすべてを飲み込むことにした。

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